松沢呉一のビバノン・ライフ

小出恵介を叩くことと須藤凜々花を叩くこと—セックスと言葉 予告編 3 -(松沢呉一) -2,634文字-

 「小出恵介を叩くことと読売新聞に通じるもの—セックスと言葉 予告編 2」の続きです。

 

 

法ではない根拠で謹慎することも立場によってはある

 

vivanon_sentence前々回取り上げた「小出恵介さんの事件について法的に違法でない可能性は十分ある-弁護士が解説」で、福永活也弁護士は自分が書いているのはあくまで法的な判断であり、倫理面は別であることを強調しています。

では、ここでは法律以外の面を見ていきましょう。

未成年のタレントと酒を飲んだだけで処分された菊間千乃というアナウンサーがいましたね。繰り返しますが、これ自体は法に触れてません。

それ自体、法律に触れなく私が弁護士になるまでとも、社会運動においてはどこから突っ込まれるかもしれないので、昨今は未成年を酒の場に呼ばない、あるいは呼んでも酒を飲ませないようにし、また、18歳未満は夜間外出にひっかかからないように早く帰すことが増えている感触があって、私も気をつけてますが、それ以外の場では18歳、19歳が酒を飲んでようと、煙草を吸ってようと、私は注意なんてしないですから、菊間千乃を批判できません。

菊間千乃の場合は、未成年が禁止されている酒を飲んだことでタレント自体が補導され、謹慎しましたから、対プロダクションやファンへのいわば詫び、ケジメとして局側が処分をした事情もおそらくあるのでしょうし、そこに配慮がなかったことについて内部的には批判されることもあるでしょうね。それは局の事情ですから、局の内部で勝手やればいい。

そうじゃなくても、一般に著名人基準は厳しい。社会的影響力があるということなのですが、同時に「期待が裏切られたことの制裁」みたいなものがありそうです。

ナンパしてセックスしたり、ヤリコンしたり、乱交したりしている芸能人はいっぱいいるわけですけど、そういうことをしていないかのような顔をして、テレビやコマーシャルに出て金を得ているのですから、こういうことがあると業界的にも、一般的にも「金返せ」という感覚が生じてしまう。そこは一定理解はできます。

 

 

須藤凜々花を叩くのと小出恵介を叩くのは似ている

 

vivanon_sentenceこの点において、小出恵介を叩くのは、結婚宣言をした須藤凜々花をアイドルヲタクが叩くのと通じています。結婚宣言をした須藤凜々花をアイドルヲタクが叩くことが馬鹿げているのであれば、小出恵介を叩くのも馬鹿げていることに気づくべし。

16歳以上は結婚をするもしないも本人が決定すればいい。同じくセックスをするもしないも本人が決定すればいい。その自己決定をすることを大阪府青少年健全育成条例は否定していない。「しない」の自己決定を妨害するような行為を伴った「淫行」を禁止しているだけです。

小出恵介の場合、自己決定に基づいていてたことはすでに明らかであり、そのもとでの合意がなされたセックスを叩くのは、須藤凜々花の結婚宣言を批判することと等価でしょう。

小出恵介さんの事件について法的に違法でない可能性は十分ある-弁護士が解説」でも丁寧に説明されていたように、淫行条例は、そのタイプによって、それ自体が、自己決定を否定するものと言えて、諸外国に照らしても、18歳まで性の自己決定ができないのは過保護すぎます。

パターナリズムに満ちた社会が生み出した法であり、婚姻年齢に達してもセックスの自己決定ができないのは、一夫一婦を絶対視する社会ならではでしょう。

それでも叩く根拠は約束破りってことだろうと思います。

 

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