なぜセフレは長続きしないのか—セフレは友だち 2-[ビバノン循環湯 297] (松沢呉一) -2,973文字-
「朝の道玄坂にて—セフレは友だち 1」の続きです。
セフレの誤メール
知人からの相談を受けて、私はその内容に興味を抱き、誤メールの内容を詳しく聞いた。
「文面は?」
「僕に送ってくるのと一緒のベタベタなエロメールでした」
「“我慢できなくて、自分でアソコをいじっているの”って」
「そんなカンジです」
「“早くあなたの大きいチンポが欲しいの”って」
「チンポとは書いてないですが」
「“バックから犯して欲しいの”って」
「ああ、バックはたしかに好きですね」
「“あなたのチン汁を搾り取りたいの”って」
「しつこいですね。松沢さんはそういうメールをもらうんですか」
「そこまで書くのはあんまりおらんじゃろ。冗談めかして“もうヌレヌレ”“早く入れてぇ”くらいのことは書くのがいるけど」
「そうですよね。僕自身、そんなカンジです。冗談でそういうことを書くし、相手も書いてくる。だから、名前さえ間違っていなければ、気づかなかったと思う。こっちとは会う予定がないのに、“明日楽しみにしている”とかって書いてあったから、そこも当然違っていましたけど」
編集者からの誤メールでも同じことが起きる
原因は判明した。
「この問題の原因はそこにあるな。オレもその状況だったらムッとすることはありそうだ。誰に送るつもりだったのかに限らない話じゃないか? 嫉妬というより、人に対する失望じゃないかな。まったく違うトーンのメールだったら、さほど気にしなくない? デートの約束だったとしても」
「ああ、そうかも。“明日お会いできることを心からお喜び申し上げます”だったら、“なんだ、あのメール”って笑ってすませられましたね」
「セフレにそんなメールを送るヤツはいないけど、同じような文面だと“おまえは誰でも一緒かよ”と失望する。どこか扱いを変えていて欲しい。変えられないんだったら、間違えて送るなよと。嫉妬と交差するところがあるかもしれないけど、嫉妬とはまた違う人に対する評価の問題じゃないかな」
「編集者からの原稿依頼でも、たまに名前が違っていることがあるんだよね。他の書き手に頼まれて断られて、こっちに来たんだなってバレバレ。そんなん、わりとあることだから、これだけでは失望しないし、どうせ原稿依頼書なんて決まりきったフォーマットに則っているだけだけど、美辞麗句をさんざん並べて、“10年前から松沢さんの原稿を読み続けて、一度お仕事をお願いしたいと思ってました”“松沢さんの他には書ける人はいないと思います”なんてことまで書いている依頼書の宛名が違っている。そこまで書いている依頼書を他の人にも送っていたことがわかったらマヌケじゃん。“なんちゅう嘘くさいヤツだ”って思うし、それをまざまざと見せつけるメールを送ってくるのはマヌケだよね」
「その場合は嫉妬じゃないですもんね」
(残り 1849文字/全文: 3085文字)
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