松沢呉一のビバノン・ライフ

おさらい—いまさらながら金子恵美衆議院議員の公用車問題 1-(松沢呉一) -3,020文字-

金子恵美衆議院議員の公用車問題は「気持ち悪いなあ」「スッキリしないなあ」と思いつつ、「どっちに転んでもたいした問題ではないのでまあいいか」とスルーしていたのですが、韓国・梨花女子大のことを調べている時に、梨花大に留学していたことがわかりました。それとこれとは直接関係がないのですが、改めて取り上げてスッキリしておくことにしました。

 

 

 

事実の確認

 

vivanon_sentence公用車で子どもを保育園に送り迎えをしたことが問題になっている自民党に所属する金子恵美衆議院議員は早稲田大学文学部を卒業したあと、韓国の梨花女子大に留学し、あちらでタレント活動をしていたらしい。知らんかった。政治家になる上で日本の女子大に行く意味はないとしても、梨花大であれば意味がありそう。

日本で書いたことが韓国で問題になったので、行く意味がなかったみたいですが、今の社会では歓迎される思想の持ち主であることをアピールしたことが政治家になる上で有利だったのでしょうかね。問題になった文章の一部がこちらに転載されています。これを読む限り、レベルの低い嫌韓の糞ですね。

ここでは、「こんな人が果たして政治家に相応しいのか否か」といった議論とは切り離して、また、夫婦揃って日本会議所属であるといったことも切り離して、公用車の件を是々非々で考えていきます。

「週刊新潮」の記事でコメントした人が「そんなコメントをしていない」と言い出したことも無視します。つうか、「ジャーナリストはコメントしておいてゲラチェックしないの? エロライターの私はチェックします」という思いもあるのですが、人それぞれってことで。

公用車で子どもを送っていたことについて、彼女の行動を擁護する論調が多いことが気になります。ルール違反だったのか、そうではなかったのかについての総務省の立場が転々としたため、一時は判断を見誤りそうになったのですが、私は「アウト!」という立場です。

まず事実関係の確認をしておきます。「週刊新潮」の報道によると、子どもの送り迎えに頻繁に公用車を使用し、母親を東京駅に送り届けることもやっていました。この点については本人も認めているので確定です。

つまり、彼女は「幼い子どもを託児所に送迎するのはいい」「同じコースであり、無駄はないからいい」と判断していたのではなくて、「家族を乗せてもいい」「公用から外れるコースで使用してもいい」と考えていたことがわかります。となると、実際には他でも私用で使っていた可能性がありそう。公用車の記録をすべて公開すべきではなかろうか。

 

 

公用車に関するルール

 

vivanon_sentence続いて、「ルールがどうなっていたのか」を確認します。ここで論じるべきは、「ルール違反か否か」であって、「政治家の育児はどうあるのが理想か」「どうすれば国会議員は支障なく仕事ができるか」ではないので、注意のこと。

憲法無視の首相が失格であるように、政治家はルール遵守でなければなりません。公用車は税金で賄われているという点でルール厳守じゃなければならないわけですが、政治家は公務員一般よりもルールの厳守が求められます。法を作るのが国会議員の仕事であり、ルールを守れない人が法律を作っていいはずがないですから、一般の人たちの感覚で判断するのは間違いです。そのルールが不当であるなら改正をすればいいのです。それができる立場にあります。

ルールとともに倫理も政治家は問われますが、今回はそこまで至らないでしょう。

公用車のルールについて「公務に限定」というのが総務省の回答です。これ自体にはブレがない。

しかし、今回の件をどうとらえるのかについて、総務省の見解は揺れているというのが「週刊新潮」の言い分。ざっくり言うと、当初は「公務に限定されるのだから、家族の送迎はルール違反」ということだったのが、「好ましくはないにしても、ルールに反していない」という解釈になっていきます。公務に関係のない家族を乗せていいとなれば、もはや誰を乗せてもいいということになって、ルールはなきに等しい。

「公務のみでの使用を、周知していきたい」とも総務省は言っているわけですから、子どもや母親の送迎は好ましくないことは認識しており、それでもルール違反ではないとの擁護をしています。無理があります。

「公務のみ」である以上は、仮にコース上の無駄や時間の無駄がないのだとしても、家族を送り届けるのは公務外。受け取れなかった私的な宅急便を配送所に取りに行くのも、誰かのうちに誕生日プレゼントを届けるのも、コンビニで晩飯用の買い物をするのも公務外。託児所に送り届けるのと、これらは同じ意味です。個別に明文化されていないだけで、すべてアウト。「公務のみ」とあるのだから、当然そうなります。

「それらと子育ては別」といくら主張しても、その線引きはどこにも存在しない。主張する人の頭の中にあるだけです。

もし子どもを託児所に送ることを例外とすべきであるなら、そのことをルール化すべきです。ただ「家族は乗せていい」なんてことにすると限界がなくなりますから、「議員が公用車を使用する場合に、議員会館内の保育所への送迎だけは例外として認める」ということになりましょう。

そういうルール変更はありだと思いますが、与党の役付国会議員なんだから、ルールをまず確認し、そこに不都合があればルールの例外を設けるように申し出ればいい。どこからどうやって、この場合のルール改正ができるのか知らないですけど、それをやってこなかった以上、現行ルールに従うしかないでしょう。

 

 

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