松沢呉一のビバノン・ライフ

軽度は説教し、重度は放置が賢明—依存する女たち・男たち 2- (松沢呉一) -3,546文字-

強度の依存的性格は医療の領域—依存する女たち・男たち 1」の続きです。

 

 

 

自身で脱することもあるので、言うだけ言っておいた方がいい

 

vivanon_sentence自分の原稿を読み直して思い出したのですが、ホストクラブに入り浸りで借金を抱えているヘルス嬢と会って、「こいつは救いようがないな」と思いつつも説教をしまして、それ以降も電話がかかってくるたびに説教を続けていたら、借金を返して実家に帰りました。

実家に帰ったのは、店が潰れたためなんですけど、店を移る選択もあったわけで、「このままではまずい」と彼女は判断したのだと思います。その判断において、私の説教がどれだけ影響したのかは不明ですけど、私の説教が効果を発したのだとしても、彼女は軽度だったから、自分自身でそこから抜け出たのだろうと思います。若気のいたりってもんだったのでしょう。

しかし、重度の場合は中途半端に関わると面倒です。なんでかというと、依存体質だからです。うまくいったらいったで、こっちに依存してきます。

このため、専門家じゃなくても、ひとつだけ効果的な対策がとることができます。依存の対象を自分に転換させるのです。「前につきあっていたホストとは別れたよ。今は別のホスト」みたいな話です。あるいはメサドンでヘロイン中毒から脱するみたいな話。

金をむしりとられていることや暴力をふるわれていることが問題なのですから、それのない相手に依存をすればいい。宗教団体であれば神に依存させる。

その依存の快を決定する基準が暴力や金なので、この方法はうまくいくとは限らないですけどね。

Egon Schiele「Seated Woman, Back View」

 

 

依存対象を自分に向ける手法

 

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実のところ、私はその体験をしたこともあります。長く生きているので、いろんなことを体験してます。

彼女は男への依存ではなく、母親との共依存状態になっていて、それが原因で摂食障害になってました。そのことがはっきりしていたので、「家を出ろ」と説得をしたのですが、その話をするとパニくる。それでもある時、家を出て、それ以降はずいぶん安定しました。

この場合は解決が比較的簡単だったし、いくらかおかしな行動はありつつも、過度に私に依存することもなかったのですけど、それにしても自分に依存させる覚悟がないとできない。

その時は流れでそうなりましたが、私は依存性の強いタイプが好きではありません。ちゃんと自分の足で立って、自分で判断し、自分の意見を言えるようなタイプが好きなので、依存タイプはそっち方面が好きな人たちに任せたい。

私の好きなタイプはこんな感じです。

 

 

「私が女王」って曲です。M女より女王様タイプが好き。昨年の曲ですが、ゲリー・ニコルではこの曲が一番気に入ってます。他の曲でも彼女は金属バットを持ちながら「I’m The Queen」と歌ってます。

アイドルやカラオケ用の曲も聴きつつ、相変わらずバルカンものを聴いているのですが、このタイプが増えてます(ゲリー・ニコルはブルガリア)。カッコ良くて、ケバくて、エロい。歌い方も強い。

ロシアほどではないにしても、ブルガリアも正教が強くて、保守層から反発されているみたいですけど、ものともしないのがいよいよステキ。

余談でした。

 

 

ある実例

 

vivanon_sentence「こいつの人生は自分が引き受ける」という覚悟ができる相手にはこの方法が有効ですけど、そこまで覚悟できないのであればやめた方がいい。無駄なだけでなく、迷惑をかけられますので、言うだけ言って、あとは放置が賢明。

 

 

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