松沢呉一のビバノン・ライフ

公用車廃止が世の流れじゃなかったの?—いまさらながら金子恵美衆議院議員の公用車問題 4-(松沢呉一) -2,195文字-

公用車の乱用に寛大な人々—いまさらながら金子恵美衆議院議員の公用車問題 3」の続きです。

 

 

金子議員は公用車の拡大を目論む

 

vivanon_sentence金子議員のインタビューを読むと、ルール整備をして、「働く女のための基礎づくりをしました」との手柄を得るつもりでしょう。「災い転じて福となす」作戦。なんも考えずにそう言っている可能性も高いけれど。

ここではっきりしているのは、自分がルール整備をできる立場、少なくともその議論をできる立場にいるとわかっているってことです。あとからごまかすなら先にやっとけ。それが政治家の職務でしょうに。

すでに述べたようにそういうルール改正はあってもいいとは思いますが、順序がおかしい。ルール違反をやった人物のごまかしのためのルール改正はなしでしょ。もちろん、母親を乗せるのをよしとする改正も不適切。遠回りをすることをよしとする改正も不適切。限界がなくなります。

今回は「週刊新潮」が情報を聞きつけて取材をしたため、数日分は金子議員がルール違反の疑いが強い使用をやらかしていたことが確定しましたが、公用車の運用はチェックが難しい。インチキしていてもわからない。今だって、金子議員の公用車利用のすべてがチェックされたわけでもない。

だから今回のようなことがあったら厳しく処して、さらに精査するしかなかったはずなのです。まんまと金子議員を擁護し、その機会を潰した人たちがいて、メディアもそれに加担しました。

広く親族の送迎までを認めたら、なんでもありになりますから、さすがにこんな改正は通らないでしょう。となると、やっぱり東京駅まで母親を送ったことはアウトだったということになります。どうせアホな国民は忘れると踏んでいるんだと思います。

 

 

公用車廃止に反対する人々

 

vivanon_sentence現にたいていの人は忘れますわね。本人が認めているのに、今だって母親のことに触れないまま擁護しているくらいで。

時代に逆行しているのは金子議員と総務省の作戦にまんまと乗った人たちです。毎日新聞もそのひとつ。

この人たちは、他の選択肢がいくらでもある政治家が公用車という特権を使って子どもの送り迎えや遠回りして親を駅まで送ることを肯定したのですから、公用車廃止の流れに反対ってことなのだと推察できます。現状維持どころか、拡大までを主張している

もし金子議員レベルの公用車使用を廃止したら、夫が自家用車を使うか、タクシーやハイヤーを使うか、人を雇うかすることになりますが、今現在でも、金子議員はそれができるにもかかわらず、それでは納得しない人たちです。

どうしてそうなるのか不明ですが、タクシーを使うと子どもの健全な生育になんか悪い影響があったり、公用車で駅まで行かないと親の体調が悪化したりするんじゃないですか。

となると、子どものいる政治家にとって公用車は絶対条件です。今のところ、議員会館内の保育所を利用している議員は金子議員だけのようですが(親が議員であることに限定した保育所ではありません)、今後、利用する議員がいたら、要職についてなくても公用車を使うことまで要求するのだし、子どもがいて、議員会館に住んでいない議員は今すぐにでも公用車が必要です。親が存命の議員にもすべて必要です。

 

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