松沢呉一のビバノン・ライフ

子どもの送迎は宮崎謙介がやれ—いまさらながら金子恵美衆議院議員の公用車問題 5-(松沢呉一) -2,728文字-

公用車廃止が世の流れじゃなかったの?—いまさらながら金子恵美衆議院議員の公用車問題 4」の続きです。

 

 

パートで働いている人も金子議員擁護に回る奇妙さ

 

vivanon_sentence金子議員を擁護した人やメディアは金子恵美が議員であることを忘れているのではなかろうか。国会議員は時給千円で働いているんじゃないんですよ。年収は二千万円以上あって、それ以外にも手当がつくし、議員宿舎だって家賃が安い。住みたくて東京のど真ん中に住んでいるんじゃないんだから、これは安くていいとも思うけれど。

たしかに政治家は出費も多いわけですけど、自家用車を買えず、タクシー代を出せないほど貧しくはない。直線距離で議員宿舎から議員会館まで1キロ程度しかありません。次回地図を出しますが、Googleマップの計測で、車だと1.4キロ。公用車なんてもんを使えず、タクシー移動か自家用車移動をする議員が多いんですから、公用車が公用に限定されて不都合だったら、それらの人たちと同じ方法をとればいい。なんで特権中の特権である公用車で送迎することにこだわるんですかね。政治家としての自覚がなかっただけでしょ。

出費で大きいのは、私設秘書ですが、こっちは私費なので、何に使ってもいいはずです。ナンボか報酬を上乗せして、子どもの送り迎えをさせる方法もとれるのではなかろうか。私設秘書は東京にはいないのかもしれないけれど、やりくり次第では、運転手を別途雇うことだって、個人で保育士を雇うことだってできましょう。

どうやったって、子どものための人を雇うことなんてできるはずがない一般庶民とは全然環境が違っていて、金子議員を自分の身に引きつけて擁護できるのは、自身、公用車に乗っている人だけね。

ちなみに、蓮舫、橋下徹、東国原英夫はそれぞれ公用車を使える立場にいたことがあるんじゃなかろうか。大臣と知事経験者ですから。その人たちがなぜ批判をしているのか考えましょう。「使える立場にあったにもかかわらず」ではなく、「使える立場にいたから」だと思います。政治家はこうあるべきなのです。

あくまで「この問題については同意できる」であって、それぞれ他の言動についてはここでは「知らん」ということで。

 

 

政治家になっても女は良き母を求められる

 

vivanon_sentenceFacebookでも擁護論をいくつか見ていて、共通しているのは母親という属性でのみ判断しているってことです。政治家としての資質より、母という属性を優先するのは、女性政治家にまで母親の望ましき行動を求めることです。その評価が政治家としての評価より上位にあります。だからルール違反も問題にされない。

たとえば女性誌に「あの金子恵美議員は、国会会期中、母親に子どもを預けて、育児放棄!」という記事が出たら、私は金子議員を擁護するでしょう。母親に預ける、夫に任せる、人を雇うという選択は当然あっていい。国会議員の中には、家族を地元に置いて単身議員宿舎で生活する人もいるし、いていいわけです。家族を顧みないで議員の仕事に専念してもいい。男でも女でも同じ。

仕事をしてもらうために税金をワタシらは払っているのですから、子どものために金を使ってタクシーを使うなり、人を雇うなりして、仕事に専念してくだせえよ。

豊田真由子の一家は子どもの面倒を夫が担当していたと報じられています。それでいい。時間の余裕がある方がやればいいし、あの調子で子どもを叱り、こづいたら確実に性格が歪みますから、夫が担当した方がいいと思います。

しかし、ルール違反をしてでも、母親が自分で送迎することをよしとする世論は、今後、同様の議員が他の方法をとることを許しにくくしました。これでルールを改正したら、「ルール改正したのに、夫に送迎をやらせる議員」として叩かれかねない。

※よき母の夫・宮崎謙介がここからの主人公です。中身を忘れている人は確認しておきましょう。上はハフィントンポスト

 

 

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