松沢呉一のビバノン・ライフ

良妻賢母の国・ニッポン—いまさらながら金子恵美衆議院議員の公用車問題 8(最終回)-(松沢呉一) -3,820文字-

英国の広告規制と金子恵美・宮崎謙介夫妻の役割分担—いまさらながら金子恵美衆議院議員の公用車問題 7」の続きです。

 

 

金子恵美議員の公用車の私的利用は倫理規定違反の疑いあり

 

vivanon_sentence昨日の閉会中審査での安倍首相の発言は、国家公務員倫理規程に反するのではないかと指摘されていたので、さっそく国家公務員倫理規程を見てみました。

私の読みが間違っていなければ、国家公務員法で規定された特別職の国家公務員である国会議員も、ここでの「職員」に該当しそうです。

第三条の六号・七号にこうあります。

 

(禁止行為)
第三条  職員は、次に掲げる行為を行ってはならない。

六  利害関係者から供応接待を受けること。
七  利害関係者と共に遊技又はゴルフをすること。

 

「私がごちそうすることもあるし、先方が持つ場合もある」と言ってますし、ゴルフもしています。ゴルフについてはどちらが金を出したかは問題ではなく、それ自体、やってはいけない。

その時点で、加計孝太郎は利害関係者だったのかどうか、安倍首相はそれを知っていたのかどうかが問題となります。

そこで安倍首相は、加計学園が獣医学部の新設を申請していることを「2017年1月20日まで知らなかった」と言い張っているってわけです。すでにこれに対する反証も出てきているため、絶体絶命。

というのが昨日のお話。

ついでにつらつらと国家公務員倫理規程を眺めていたのですが、厳しいっすね。当たり前ですけど。

これはもっぱら利害関係者との関係についての規程なのですが、第一条の二号にこうあります。

 

二 職員は、常に公私の別を明らかにし、いやしくもその職務や地位を自らや自らの属する組織のための私的利益のために用いてはならないこと。

 

これは国家公務員倫理法第三条と同じ条文です。あちらに則った倫理規程がこちらってわけです。

公用車の私的利用はこの規程に反していそう。批判した議員、元議員の理解が正しいのです。ここを改正して、子どもを乗せることを例外とすることはおそらくできるのでしょうけど、そうなっていない以上、現状では違法だろうと思います。違ったらごめん。

いずれにせよ、これが公務員や政治家の倫理ってものであり、庶民感覚とやらで「そのくらいいいだろ」と擁護するのは間違いです。

※図版は「朝日新聞」より

 

 

この上ない機会を潰した人々

 

vivanon_sentence金子恵美夫婦と世論は、つくづく絶好の機会を逃したと思います。こんなチャンスは二度と来ないのではないか。チャンスを逃したばかりか男女の役割分担の固定、強化を政界を舞台にやってしまったのです。

これはめったに起きることではない特殊例です。公用車の私的利用という問題がからんでます。

前回書いたように、家庭内でどちらが育児を担当するのか、どちらが子どもの送迎を担当するのかは夫婦が決定すればいいことですから、通常はその決定に第三者は介入しにくいのですが、この場合はルール違反を避ける適切な方法として介入していいでしょう。公用車は特権ですから、ルール違反がさも避けようのないことであるかのような言い訳は通用せず、「んなこと言う前に、夫にやらせれば済むだろ」と言っていい。

夫の宮崎謙介は、国会議員として育児休暇をとると宣言していた上に、現在は国会議員ではないのですから、妻の仕事が優先され、育児は夫が担当するのが筋。

金子恵美に対して「夫にやらせろ」と私は言います。宮崎謙介に「おまえが育児のすべてを担当しろ」とも言います。ついでに、宮崎謙介には「いつまでも未練がましく国会議事堂の写真をFacebookに使ってんじゃねえよ」「いつまでも未練がましくTwitterに衆議院議員と冠をつけてんじゃねえよ」とも言いたい。

 

 

next_vivanon

(残り 2506文字/全文: 4071文字)

ユーザー登録と購読手続が完了するとお読みいただけます。

ウェブマガジンのご案内

会員の方は、ログインしてください。

« 次の記事
前の記事 »

ページ先頭へ