松沢呉一のビバノン・ライフ

なぜ女子大は「女らしさ」に執着するのか—日本の女性議員率 12-(松沢呉一) -3,533文字-

女子大と銭湯は生き残れるのか?–日本の女性議員率 11」の続きです。

 

 

 

女性議員率は今後も上がり続ける

 

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私が「無理に女性政治家を増やそうとしなくても、今後はなだらかに女性率が上がっていく」と判断しているのは、前回出したような数字の裏付けがあります。

今現在、政治家をやっている世代は、上は1960年代、下は2000年前後に大学生をやっていた世代でしょう。では、前回のグラフから、1980年代に大学生をやっていた世代における社会科学系学生の男女比を見てみましょう。1980年で92対8くらい。もちろん、それ以前はもっと差が広がる。これが現在2対1にまでなってきています。

この数字がきれいに女性政治家率と重なるわけではなくて、とくに「政治家になりやすい大学の政治家になりやすい学部」(具体的には東大法学部)について言うと男女比はここまで縮まってませんけど、相関関係にあることは間違いがない。「何を専攻するのか」には社会全体の意識が確実に反映されていますから。

現在の学生たちの世代が政界に出ていき、それが中心層になる頃には、女性政治家率は今より確実に増える可能性が高いと私は見ていて、SEALDsに参加している女子が多かったこともこれに関わっているのでしょう。

彼女たちの誰もが政治学や法学を専攻しているとは限らないですが、そういう空気が確実に醸成されてきている。空気だけでなく、広く政治に関心と知識を持ち、それを裏付けにした異議申し立てができるのが増えているということだろうと思います。

※共学では学べないテーマを学べるのは女子大の意義ではありましょう。図版は武庫川女子大学のサイトより。健康・スポーツ科学部というのがあって、ダンスにも力を入れているよう。ダンス理論を学べる大学は少ないでしょうから、これは女子大の意義のひとつかも。”About Barnard“にも、ダンス・レッスン風景が出てきます。対して政治学、法学はどこでも学べるにせよ、女子大がやることに意義があると思います。なんで武庫川女子大のサイトを見ていたかというと、ここが日本でもっとも学生数の多い女子大だからです。女子大を代表して、「女子大調査研究」なんてこともやっているのですね。東京では馴染みがなくて、私も今回初めてそのことを知りました。

 

 

どうしたって時間はかかるにせよ

 

vivanon_sentence過去にも主婦層が中心となって展開されてきた市民運動はさまざま存在します。とくに食や命に関わるものについては敏感です。その中から地方議員になるのも出たでしょうけど、もっと若いうちから関心を抱くのが増えてくれば、なおかつ学校で培うものがそこに加わり、政治家になる条件を満たすのが増えてくれば、率はさらに高まるはずです。

私が「時間がかかる」と繰り返しているのはこういうことです。すぐさま女性政治家率を改善できると思っている人たちは、おそらく「政治の世界は男が牛耳っているため、女が不当に扱われており、男たちの考えさえ変われば数値が上がる」とでも思っているのではなかろうか。女たちの意識、社会全体の意識を変える必要があるのだから、そんな簡単じゃないってば。

以上のことから、また、以降、説明していくことから、ほっといても自然増が期待できます。なんとなく大学に行って、なんとなくここまで生きてきた私としては、「なんとなく数字は増えていくんだから、このまま待てばいいんでねえの」と思っているわけですが、それが待てない人たちがいるようなので、「どのみち時間はかかるにしても、少しでもそれを早めるために、改善できるところは改善していきましょう」というのがこのシリーズで私の言っていることです。

※武庫川女子大のサイトを見るとたしかに大きい。イラストは中央キャンパスで、他にも浜甲子園キャンパス、上甲子園キャンパスなどがあります。生徒数は、大学院、短大を除いて、2017年5月1日現在8,445人。

 

 

東大の奮闘

 

vivanon_sentence女性議員率を上げるために改善可能な対象のひとつとして私が目をつけたのは女子大です。なぜ共学校ではなく、女子大かと言えば、共学については大きく改善できるところがなさそうだからです。男女等しく受験をして合格したのが学生になっているんだから、それ以上、できることは少なく、その少ない対策はすでに実施されています。

 

 

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