松沢呉一のビバノン・ライフ

買春禁止法を制定したフランスってどんな国?—少しも役に立たないフランス・ガイド-(松沢呉一) -2,675文字-

ノーベル賞のスウェーデンはどんな国?—少しも役に立たないスウェーデン・ガイド」の続きみたいなものです。

 

 

 

エロは世界の共通語

 

vivanon_sentence言うまでもないことですが、性についての考え方は、その社会によって規定されています。CAM4を見ればわかるように、エロは世界共通。世界共通でありつつ、作法はそれぞれに違う。だから、面白い。

これだけ海外に出る機会、国内にしても海外の人たちと接することが増えているんだから、その社会ではどういうことになっているのか興味をもって聞いてみるといいと思います。

そうすると、自分が抱いている観念、感情は所詮ムラのそれだと気づけると思うのですが、そういうことを聞くことさえ道徳が邪魔をしてしまう人が多いのでしょう。バッカみたい。

もちろん、無闇矢鱈には聞けない文化圏もあるでしょうけど、たいていは日本よりオープンです。

スウェーデンのことはもう十分にわかったでしょうから、別の国を見てみましょう。

今回も適当なので、なんの参考にもしない方がいいと思います。

※買春禁止法が成立したあとの2016年5月20日、STRASSによって仏ブルターニュ地方の首府レンヌで行われたSTRASSによるリヨンでのイベントを告知するポスター。自動翻訳で辛うじてわかっただけなので、正確なところは不明ですが、1975年にあったセックスワーカーの国際会議から40周年記念イベントだったよう。

 

 

プログレの国フランス

 

vivanon_sentence私にとってのフランスはなんつってもプログレです。

フランスには好きなバンドが多かったのですけど、中でも好きだったのはHELDONです。YouTubeには一部しかアップされてないですが、アルバム「Interface」はずーっと聴いてました。懐メロが嫌いな私ですが、CD化された時にも買い直して、四半世紀に渡って聴き続けた希有な盤です。

 

 

リシャール・ピナスがその後もソロ活動を続けていることは知ってましたけど、来日時に日本のミュージシャンとやっているんですね。これもYouTubeで初めて知りました。

HELDONより日本ではMAGMAの方がよく知られているんですかね。バンドはよく知られていても、MAGMAの元マネージャーはオープンリーなゲイで、リタ・ミツコのマネージャーとして来日した時に、私に「You are cute」と色目を使い、それまでさんざんフランスのバンドについての話をしていたのに、急に私は言葉がわからないふりをしたことはあまり知られていません。あっちは全然キュートではないおっさんだったものですから。

リタ・ミツコのヴォーカルだったカトリーヌが、通訳のU君を部屋に連れ込もうとして全裸の上にガウンを着て待機していたのに失敗したこともあまり知られてません。カトリーヌはまだソロ活動を続けているみたいですが、結局、何もしてないって話なので、バラしていいでしょう。

 

 

エロにオープンな国

 

vivanon_sentence私にとってのフランスはプログレですけど、以上のように、同時にエロに開放的な国という印象です。もちろん、これは好印象ってことです。

その後もエロに開放的なイメージは維持されています。数名を基準に全部は語れないですが、「台湾の桃色・フランスのローズ」に書いたように、いきなり「エロ話をして」とフランス人女子に言われて面食らったことがあります。

この私を面食らわせるフランス人女子。「気の利いたエロ話をすぐさま二つや三つは話せるようにしておかなければ国際化に対応できない」と反省する私。

しかし、もっと具体的なお題を出してくれないと、いきなりエロ話は難しいっす。「他人の性癖を認めない日本の文化」に出てきたフランス人女子の「血まみれプレイが好き」という話の方がまだ対応ができます。

CAM4に出ているフランス人は多いですしね。知り合いが出ていたところで、とやかく言わないのだと思います。他人は他人、私は私。それが政治家であっても同じです。

こういう国はいいなあ。それに引き換え、日本では、AVに出た過去を暴き立てるバカどもがいっぱいいて、それによって仕事ができなくなったりします。

この場合、そんなことを暴くヤツらと、解雇なり、契約解除なりをした企業が悪い。少なくともそういった企業とは民事で闘えるのですから、弁護士はそのサポートをすべきですが、何を考えてか、AV業界を叩く。なんですかね。これ。

※写真は、上のリヨンでのイベントに際に行われたデモンストレーション。レインボーの旗も見えます。連帯しているセクシュアル・マイノリティの団体によるものか、セクシュアル・マイノリティのセックスワーカーたちによるものでしょう。

 

 

制度と恋愛・セックスを切り分ける文化

 

vivanon_sentenceフランスは娼婦の心情を綴った曲がいっぱいあるシャンソンの国ですし、「フェミニストたちはミソジニー表現だと指摘」に書いたように、あの国では、他者の下半身に介入しないのが国民性です。

結婚して以降も、恋やセックスを楽しむ。制度と恋愛やセックスを切り分けるのが伝統です。

こんな感じ。ヒュンダイ・フランスのコマーシャルです。

 

 

ヒュンダイもアジア諸国ではこのコマーシャルは流さないでしょう。フランス仕様です。制作しているのはフランスのプロダクションでしょうし。

 

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