松沢呉一のビバノン・ライフ

女子大は政治家になる上で意味がほとんどない—日本の女性議員率 14-(松沢呉一) -2,601文字-

政治家にとっての学歴—日本の女性議員率 13」の続きです。

 

 

政治家になる上で女子大は意味があるか

 

vivanon_sentence前回見たように政治家になるには学歴が大事。いざ当選して以降は、実力、実績が重要であり、学歴はさして意味を持たなくなりますけど、そこに至るまでに学校と専攻は大きな意味を持つことは数字が物語ります。

それがいいことか悪いことかは知りません。あくまでここでは「女性議員率はどうやったら高められるか」がテーマであり、そのためには大学と専攻の男女差を減らすしかないって話。

前回の国会議員の卒業大学リストで女子大を探すと、30位に聖心女子大学が入っています。3名の議員wがいて、故・中川昭一議員の妻である中川郁子、父親が埼玉県知事であり、かつメディアで名前と顔を売った土屋品子、メディアで名前と顔を売った山谷えり子の3名。いずれもたまたま聖心だったってことであり、学生時代から政治家を目指していたわけではなさそうなので、卒業大学には意味がないでしょう。

以下は各1名で、フェリス女学院(木村弥生)、神戸女学院大学(上西小百合)、京都女子大学(高木佳保里)、東京女子医大(薬師寺みちよ)、京都市立看護短期大学(倉林明子)、宮城学院女子大学(あべ俊子)、金城学院大学(伊藤孝恵)、共立女子大(上野通子)。

この8名のうちの2名は親族に政治家がいます。フェリスと合わせて11名中4人が親族に政治家がいて、票田を引き継いだとは限らなくても、そういう環境が大きいのだろうと思います。

大卒の国会議員688名のうち女性議員は83名。うち11名が女子大出身です。1.6パーセント。女性議員のうちの13パーセント。日本全国で四大に通う女子大学生のうちの16パーセントが女子大の学生なので、それよりも少ない。

これは母数が少ないため、あんまり意味のある数字ではないですが、女子大の共学化や縮小、消滅を経ての数字であり、以前はもっと女子大の学生が多く、共学の女子生徒は少なかったのですから、単純に数で見た時に、女子大を出ることは政治家になる上ではメリットはほとんどないと言えます。

同窓会がバックアップするなんてことがあるかもしれないけれど、それは中学だって、高校だって、町内会だってあり得ること。

なお、高木佳保里参議院議員は京都女子大出身ですが、まだ法学部がなかった時代で、家政学部卒。経歴を見ても、どこだってよかったのでしょう。

おそらく韓国では「梨花大卒」は政治家にならんとする人たちにとって意味がありそうです。米国では「バーナード・カレッジ卒」は意味がありそう。しかし、日本では女子大卒が意味を持たない。

 

 

学生の時の環境は大きい

 

vivanon_sentence前回の数字から計算すると、衆参の議員全体の約19パーセント、大卒(中退含む)のうちの20パーセントが東大です。旧帝大卒で約27パーセント。これに早慶を入れると、46パーセントに達します。半数近くが8つの大学に集中している。

有権者が「偏差値の高い大学だったら安心できる」といったように、学歴への信頼で投票することも少しはありつつ、それ以外の要素の方が大きい。

これは「官僚→政治家」というパターンが強いことにも関わっていそうです。官僚経験があると、省庁との折衝がスムーズですから、これ自体、自然なことかと思います。

すべてカウントするのは大変なので、今現在の国会議員の東大出身者(退学者を含む)の学部を調べてみました。一回カウントしただけなので間違いがあるかもしれないですが、法学部が86名。経済学部が20名。あとはすべて一桁です。6割以上が法学部で、経済学部を入れると8割近くに達します。

つまり、大学だけでなく、専攻も政治家になる上では意味がありそうです。官僚に進む率が高いとともに、政治に関心を抱き、将来政治に関わるという意思を強固にできる環境にあるのかどうかは重要です。

 

 

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