女生徒たちの前で全裸に—美術モデル体験記 [3]-[ビバノン循環湯 335] (松沢呉一) -3,778文字-
「長野とフランスに注意—美術モデル体験記 [2]」の続きです。
女子美は遠かった
女子美というのは、東高円寺にあるとばかり思っていたのだが、現在、東高円寺には短大と付属高校があって、四大は相模大野。これが不便なところにありましてね。その分、キャンパスは広大で、建物も立派。
私は遠足気分だからいいようなもので、日々の仕事だと考えると移動が相当に面倒。この移動だけでも美術モデルは楽じゃないと実感した。
建物の中に入ったら、クロッキー部の告知が張られていて、「7月2日(木)女性ヌード 7月8日(水)男性ヌード(無料) 7月15日(木)学生モデル」と書いてある。
この無料男性ヌードというのは私のこと。タダでいいということで受けてもらった話なんだが、自分には何の価値もないみたいで、「無料」の文字を見ると悲しい。見た目はともかく、私の内面としてはロダンの彫刻のようなイメージでここまで来ているのに。
時間になって、十人ちょっとの生徒さんたちが集まってくる。女子美出身の知り合いはけっこういて、なんとなく親しみがあり、女子美の生徒は遊びまくりともっぱらの評判だが、クロッキー部の皆さん、なんだか真面目そうで、やりにくい。お笑いにできなそうにないですもの。
取材ということは部長には話してあったが、そんなことはどうでもよく、普段のクロッキーと同じ心構えである。 「さあ、やりましょう」ということになるが、何をどうしていいのかもわからない。
5:00〜5:20 20分×1 (5分休)
5:25〜5:45 10分×2 (5分休)
5:50〜6:10 10分×2 (15分休)
6:25〜6:45 5分×4 (5分休)
6:50〜7:10 (10分休)
7:20〜7:40 20分×1
こう書いた紙を渡されただけ。この時まで私は知らなかったが、ポースはモデルさんがつけるのである。どんなポースでもいいというので、なんとかなるだろう。
※Auguste Rodin「Pierre de Wiessant, Nude Study」
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