国によってできることは違う—スカーレットロード [2]- (松沢呉一) -2,616文字-
「あるオーストラリアのセッスクワーカーを捉えたドキュメンタリー—スカーレットロード-[1]」の続きです。以下、障害者の話が続きますが、障害者とセックスワーカーの関係を論じたいのではなくて、「国によって法が違う。業態が違う。文化的背景が違う」ということを論じたいので、誤解なきよう。「スカーレットロード」自体、広くセックスワーカーと障害者の問題をとらえたものというよりも、あるセックスワーカーとその客の関係をとらえたものです。
日本で同じ方法はとれない
映画「スカーレットロード」に出てきたように、障害者の状態やリクエストを聞いて、それに対応できるセックスワーカーを紹介する方法は理想的ですが、地域によって、国によっては違法です。
オーストラリアでも、できる州とできない州があるはずです。できる州でも、非営利だと合法で、営利だと違法といった制限がつきそう。あの方式で紹介料をとると、管理売春とみなされる可能性がありますから。
おそらくあの団体は寄付や行政の援助によって運営されていて、紹介自体では金を得ていないはずです。ヨーロッパでもオーストラリアでも台湾でも、なにかにつけ寄付が集まりやすいんですよね。ここがまた日本との違いだったりします。
日本でも、売防法を避けて、合法領域で、合法の方法でやる余地はあると思いますが、法に抵触しなくても難しい点があります。以下、その辺を説明していきます。
まだ障害者専用のデリヘルなんてもんがなかった頃に、よく店の人や女の子らと障害者の客について話すことがありました。障害者を受け入れる店、受け入れる個人がいるのだから、それを広く打ち出せばいいと当初私は思っていたのですが、店が一律に「障害者歓迎」とすることは難しいのです。障害次第、店の従業員次第、女の子次第になるので。
これは外国人の客に対する店の対応と同じです。
性風俗分野で外国人歓迎なのはストリップ劇場です。外国人が多く居住する地域や外国人観光客の多い地域では、外国人の客で支えられている劇場も多いはず。入口に英語や中国語の説明書きがあって、それを見て金を払って中に入って裸を見て終り。ここでは「外国人歓迎」と打ち出せますし、実際、英語や中国語、ポルトガル語等で劇場入口にそう貼り出している劇場はありそうです。ポルトガル語はブラジル人が多い地域の話。
服屋さんだったら、客が勝手に現物を見て、時に試着して、買って終り。メシ屋だったら、メニューの写真を見て指差して、料理を食って、金を払ったら終り。
しかし、カメラや電子機器を扱う店となると、言葉が通じないと対応しきれない。だから、ヨドバシにもビックカメラにも各国語の説明が出ていて、各国語ができる店員を用意しています。
この場合は、店が説明ができなければ、客がよその店に行くだけですから、そんなに問題はないですが、性風俗では現実にトラブるのです。
※「Decriminalise Sex Work, New South Wales」より
(残り 1416文字/全文: 2672文字)
この記事の続きは会員限定です。入会をご検討の方は「ウェブマガジンのご案内」をクリックして内容をご確認ください。
ユーザー登録と購読手続が完了するとお読みいただけます。
会員の方は、ログインしてください。
外部サービスアカウントでログイン
Twitterログイン機能終了のお知らせ
Facebookログイン機能終了のお知らせ