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松沢呉一のビバノン・ライフ

障害者専門デリヘルの存在意義と限界—スカーレットロード [6]- (松沢呉一) -2,671文字-

2017年09月14日3時26分 カテゴリ:オーストラリア連載スカーレットロードセックスワークを考える風俗産業デリヘル身体障害者


障害者専門デリヘル嬢の体験—スカーレットロード [5]」の続きです。

9月16日、第11回関西クィア映画祭で「スカーレットロード」が上映され、上映後、Skypeでレイチェルさんが質問に答えるとのこと。今回書いているような「介護かセックスワークか」について誰か質問しておいてちょ。「レイチェルさんと客の関係はニューサウスウェールズ州では一般的なのか否か」「障害者専門のセックスワーカーはいるのか否か」「その人たちはレイチェルさんと考え方やサービスにおいてどう違うのか」など。つまり、あの映画で描かれている関係は、ニューサウスウェールズ州や同類の法になっている州では当たり前のものだと考えていいのか、それともレイチェルさん固有のものなのかを知りたい。セックスワーカーと客の関係は、法、制度、場所等の外的要因に規定される部分と、個人に規定される部分があって、あの映画を観ても、どこまでがどうなのかの判断がつかないのよね。ひとつの映画を観ただけでは一般化ができない事情を私は延々書いているのはそのためです。とりあえず、今はレイチェルさん個人の生活を描いたものとしてしかとらえられないでいます。それが固有のものだとして、その固有の関係が、日本で可能なものとそうではないものがあって、不可能な部分は外的要因に確実に規定されていますから、そこは変えていった方がいい。

 

 

専門店の存在意義

 

vivanon_sentence専門デリヘルを利用する人たちは障害者の一部であり、一般のデリヘルでは断られる重度の障害者になりやすいし、彼らにとっては専門のデリヘルはありがたい。

もし私が障害者になって専門デリヘルを利用するとしたら、やはりそういう状態になった時です。いきなり障害者になった場合、その現実を受け入れるにも時間がかかるので、すぐさま利用するということにはなりにくいとは思いますが。つうか、歳が歳なので、もういいか。性欲が消えたわけではないですが、歳をとると、それに関わる時間や手間、金を乗り越える根性が失せます。障害者の中には、健常者より手間がかかることで「まっ、いいか」になる人たちもいそう。

専門デリヘルを利用する層は、それまで私が性風俗店で聞いてきた話、直接知っている知人たちの外にいる人たちが中心です。デリヘルが出てくるまで、性風俗店に行こうとも思えなかった層です。

スカーレットロード」の中で、自宅にクレーンがあって、レイチェルさんがそれを使って車椅子からベッドに移動させるシーンが出てきますが、そんなん、普通の人は使ったことがないですから、どうしていいのかわからないし、場合によっては危険です。

そこは専門デリヘルの存在意義であり、手慣れたデリヘル嬢の出番です。体をベッドに移動させたり、風呂に入れたりするために、男性スタッフが同行する店もありますが、その分、負担が大きく、そうは儲けられないのが専門のデリヘルです。

 

 

やりがいだけでは生活できない

 

vivanon_sentence障害者は天使みたいな人たちばかりではないですから、イヤな思いをすることもあるのですが、Aちゃんは、面倒なことやイヤなことがあっても、同時にやりがいも感じていました。やりがいの方がはるかに大きかったと言っていい。

しかし、これだけでは食えないので、一般のデリヘルでも働く。専門デリヘルの他の人たちは、それこそ介護のような性風俗ではない仕事を一方でやっていたり、既婚者だったりすると言っていたような。

在籍者の絶対数が少ないので、彼女が出ると他のスタッフが稼げなくなる。1日2人か3人しか出勤しておらず、出勤日数を増やせないのです。

一般のデリヘルの方で彼女は人気があって、たしか指名ナンバーワンだったはず。かわいくて、おっぱいがフワフワで(触ったわけではなくて、見た目の印象)、恋人モード、エロモードが得意だからです。これは当然障害者受けもいい。ここに専門デリヘルの問題があります。

 

 

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