松沢呉一のビバノン・ライフ

浮気の方が気持ちがいい—揉めないセックスの秘訣[上]-[ビバノン循環湯 339](松沢呉一) -3,896文字-

2002年10月に四国の風俗誌「ping」に書いたもの。風俗誌の連載のため、最後に奥様風俗嬢の話を入れてます。たぶんこの既婚風俗嬢は埼玉のデリヘルで会ったのだと思います。

ちょっと前にFacebookに書きましたが、狭いコミュニティの中でくっついたり離れたりを繰り返す人たちが理解できません。男にも女にもそういうタイプがいます。そんなことをしていたら、そのうちトラブるに決まっているじゃないですか。本人たちだけじゃなく、別れる際に揉めて、同時に二人を呼べなくなったりして、周りが気を遣うことになるのもうざい。自分はいいと思っていても、Aさんと別れたあとでBさんとつきあって、AさんとBさんの関係が悪くなったり。そういうことは学生のサークルで終わらせておけ。

その点、性風俗店はケジメがあって、中でくっつくと二人とも出ていってもらうか、結婚をしてどちらかが辞めるのがしきたりです。そうしないと必ずトラブルが起きる。「身近で手を出すとロクなことにはならない—風俗店が男女関係に厳しい理由」を参考のこと。どこの世界でも同じですから、このルールを広く採用したい。あるいは、狭いコミュニティ内のルールとしては成立しえる「積極的合意」を採用したい。生活がかかっているわけではない趣味のサークル、任意の市民団体であればこういうルールも有効でしょう。

また、熟練のヤリチン・ヤリマンはケジメがあります。それがないとトラブって、長期にわたって下半身活動を続けることができません。これを私はクレバー・ヤリチン(略して「クレチン」)、クレバー・ヤリマン(略して「クレマン」)と呼んでいるわけですが、彼らのケジメに学びましょう。クレマン娘との長い会話をまとめた原稿があって、それもそのうち出します。タメになりますよ。

 

 

 

カラオケバーにて

 

vivanon_sentence二十代半ばの女友だちの佳奈ちゃんはよく私にこんなことを聞いてくる。

「なんで松沢さんは、いろんな相手と遊んでいるのにもめ事にならないの?」

彼女は「割り切ったセックス」というのがうまくできないタイプ。知り合ってすぐにセックスをすることはあるのだが、関係を継続するとすれば、その相手と恋愛関係になるし、恋愛関係になり得ない相手やセックスの相性が悪い相手だと一回でおしまい。

そんな彼女からすると、通常の恋愛関係でもないのに、セックスの関係がずっと継続するのがよくわからないらしいのである。

この間、彼女と馴染みのカラオケバーに行ったとき、そこに一人で来ていた女子を店のマスターに紹介され、あっという間に仲良くなった。

その麻衣ちゃんを含めて、三人でカラオケもせずにダベッていたんだが、このときも佳奈ちゃんはこんな質問をしてきた。

「最初は遊びで割り切っていても、何度もしているうちに恋愛感情が芽生えてきて、松沢さんのことを独占したくなってきたりしないの?」

今までにも彼女に説明しているのだが、実感として、どうしてもよく理解できないみたい。

「相手を見極めていれば大丈夫。オレが遊んでいるのはたいていダンナがいたり、一緒に住んでいる男がいたりするし、少なくとも彼氏はいるから、あっちもその関係を壊したくないじゃないか。こっちもあっちも独占しようもないってことだよ。オレが遊んでいる相手は、みんな、オレがこういう仕事をしていることを知っていて、いろんなところで遊んでいることも知っているから、互いに隠しごとはなくて、そこに幻想が生まれにくいんだな。どこまでも浮気の相手ってことよ。そういう考え方ができない相手だと、こっちもセックスにまでは至らないしさ。ものすごくわかりやすい例を出すと、オレは彼女たちにとってバイブみたいなもんだ。夫や彼氏を捨ててバイブごときに走る女はいないだろ」

我ながら悲しすぎる例だと思わないではない。しかし、恋愛的な感情がまったくないわけでもなくて、相手によっては「好き」と囁き合ったりもするわけだが、あくまで他に男がいて、なお「好き」が成立する関係なのである。

だから、私は佳奈ちゃんとはセックスしたことがないし、しようとも思わない。したらダチではいられなくなるか、いっそ独占的なつきあいをするしかないタイプだからだ。

「松沢さんは、そういうところがすごくはっきりしているよね。でも、やたらと身の回りで手を出してトラブルを起こす男の人が多すぎない? そんなにしたいんだったら、風俗に行けばいいのにさ」

その通りだ。

Meissen Manufactory「Lovers with a Birdcage」

 

 

2対1でスポーツセックス派が優勢

 

vivanon_sentenceこんな話をしていたら、麻衣ちゃんが私に同意した。

「私も単なる遊びの相手はどこまでも遊びの相手であって欲しい。本気と浮気の相手はやっぱり違うと思う。なのに、男の人でも、遊ぶ関係なのに、“つきあって欲しい”って言い出す人が多すぎますよ。セックスするという意味ではもうつきあっているのに、それ以上を求めたがる。“自分の女”みたいな態度をとってきたりして、約束が違うってカンジ。そうじゃなければずっとつきあえるのに。そうなったらもうざったくなって連絡をとらなくなるんだけど、そうすると、さらにしつこくしてきたり。なんでああなるんですか」

ああなる相手とそうなるからである。そうはならない同士がうまくやればいいのだ。事実、私はうまくやっていて、トラブルらしいトラブルはない。

 

 

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