松沢呉一のビバノン・ライフ

引用まで許諾がいると主張する東北芸術工科大学—続・著作権切れの著作物-(松沢呉一) -2,416文字-

メトロポリタン美術館と日本の美術館—著作権切れの著作物 上」「メトロポリタン美術館に続くのが賢明—著作権切れの著作物 下」の続編みたいなもんです。

なお、東北文化研究センターは2018年2月、活動休止を発表しています。そのため、アーカイブへのリンクは切れています。

 

 

 

 

まだこんなことをやっている大学がある

 

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エレベーター・ガールとエスカレーター・ガール—女言葉の一世紀 85」で、「東北芸術工科大学東北文化研究センター アーカイブス」が公開している絵葉書を無断で転載しました。以降も無断で転載していく予定です。今回も「毛から世界を見る」シリーズに、関連したものをバンバン無断転載しておきました。なんの問題もなし。

しかし、同サイトの「ご利用について」ではこう説明されています。

 

 

 

 

 

なんでこんな高飛車に根拠のないことを書けるかな。

まずこの部分。

 

 

当Webサイトへのリンクは自由です。ただし、当Webサイトを誹謗中傷する内容を含むサイトや違法なコンテンツを掲載するサイトからのリンクは固くお断りします。

 

 

リンクは許諾を得る必要はなく、断ることもできません。もちろん、私のこの文章は誹謗中傷ではなく、法と常識に基づいた批判ですから、そもそもあちらの断りたい対象でもありません。断ればリンクされないとでも思っているんですかね。

続いてここ。

 

 

当Webサイトに含まれている情報(収録された画像、テキストなど)および当Webサイトで使用されているすべてのソフトウェアは、東北芸術工科大学東北文化研究センターまたは情報提供者、ソフトウェア提供者の財産です。これらのすべては日本の著作権法および著作権に関する国際法によって保護されています。法律で認められた場合を除き、当研究センターの許諾なしに、その全部または一部をいかなる手段によっても使用(表示あるいは掲示)・複製・引用・改変・再配布・販売することはできません。

 

 

時代遅れも甚だしい。検索してみても、批判している人、呆れている人が見当たらないので、私がやっておくとします。

 

 

ブツの所有者が著作権者であるかのように装うことの是非

 

vivanon_sentenceこれについては「メトロポリタン美術館と日本の美術館—著作権切れの著作物 上」「メトロポリタン美術館に続くのが賢明—著作権切れの著作物 下」に書いた通り。メトロポリタン美術館になれない日本の美術館について書いたことの繰り返しにしかならないですが、「まだこんなことをやっている恥ずかしい大学(の研究機関)がある」という例として取り上げておきます。

この文章だと、「東北芸術工科大学東北文化研究センターまたは情報提供者、ソフトウェア提供者の財産」が著作権を所有していて、その利用は無断ではできないように読んでしまう人たちがいるでしょう。

東北芸術工科大学東北文化研究センターまたは情報提供者、ソフトウェア提供者の財産」というのは所有権のことです。ブツを所有しているってだけ。

著作権法や著作権条約で保護されるのは言うまでもなく著作権であり、著作権が切れていないものがあったとしても、ただブツを所有している人たちには無関係であり、著作権は著作権者が所有しています。当たり前。

「古い絵葉書に見せているが、本当は先月自分が撮ったものだ」と主張するのなら別として(それを古い記録に見せかけていることは当然批判されましょうけど)、ただ所有しているだけの人物や団体には著作権の主張ができる資格などあろうはずがありません。著作権の利用について、ただブツを所有している個人や団体が許諾する資格もありません。

※東北芸術工科大学東北文化研究センター アーカイブスより「若狭雪浜海水浴」。横縞で下は長いながら、肩が出ているのが見えますので、大正期のものだろうと思います。

 

 

引用まで許諾が必要と思っているらしい

 

vivanon_sentence著作権が生きていたとしても、無断、無料で引用できることは法律で定められている通り。

当研究センターの許諾なしに、その全部または一部をいかなる手段によっても使用(表示あるいは掲示)・複製・引用・改変・再配布・販売することはできません」の「引用」の部分は法を無視した明らかな間違いですので、即座に訂正すべきです。大学の研究機関がやっていいことではない。しかも、この大学は芸術という表現を教えているわけですよね。生徒たちに「いかなる手段でも、引用するには許諾が必要」と教えているのでありましょうか。

 

 

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