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【無料記事/始動コラム】「正解はない。考えてやることが大事」権田修一、優勝に向けて取り組むべき熟考について(2015/01/22)

始動コラム◆「正解はない。考えてやることが大事」権田修一、優勝に向けて取り組むべき熟考について

 

 

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毎年のようにリーグ優勝を追い求めながら果たせず、マッシモ フィッカデンティ監督を迎え、体質転換に成功しかかったかに思われた昨年も9位。また中位に終わってしまった。

優勝を狙う状態にないチーム。

クラブ発足当時に比べメジャーな存在にはなった。しかしJ1に昇格して即、優勝にこだわりを見せていたアマラオが、その齟齬もあって移籍も考えた2000年の末から、問題点は解消できていないのではないだろうか。
Jリーグヤマザキナビスコカップを制覇した2004年に「次はリーグ優勝」という意思が明確になり、翌2005年が本格的な挑戦の第一歩だったとして、そこから数えても10年間、順位上の進歩はない。

毎年のように試行錯誤を繰り返し、選手も個々に努力していることはわかる。だがそれが結果にあらわれない。
それどころか、詰められる部分はどんどん煮詰められ、もうこれ以上何をすればよいのか見えにくくなってきているのではないか。

2014年を振り返ると、マッシモ フィッカデンティ監督に指揮を委ね、勝利からの逆算でことをなす考え方の導入が、たしかに刺激にはなっている。あと一歩で上位に食い込めそうな感触もなくはない。

それでも優勝どころか、ACL出場権も獲得できていない。
何かを変えるのか、それとも加えるのか。前進するための哲学が必要なのではないだろうか。

チャンピオンチームのあり方を考えるとき、よく引き合いに出される鹿島アントラーズは、優勝争いをして当然という気風が先にあり、その厳格さのなかに高卒の選手を置いて、二~三年かけて一人前に育て上げていく。土居聖真、昌子源、植田直通、柴崎岳などがいい例だろう。

その反対にFC東京は、一人前になった選手、なりかかった選手が、どうすれば堅固な基盤を築けるかを考え、チームを前進させることに腐心している。

個を高めるだけでなく、チーム、ひいてはクラブの成長が不可欠なのではないだろうか。

念願のリーグ優勝を果たすために何が必要なのか。
誰もが探している答えの、その断片を、次期社長の大金直樹常務取締役は、始動日にファンの前で提示した。
「いま必要なのは、もっともっとやりきらないといけない精神力。そして、チームとなることだとわたしは思っております」

こまかいことを言っているのではない。全体のテーマを投げかけた。優勝するためには、チームになることだ、と。

この言葉を、権田修一はしっかりと受け止めた。FC東京の下部組織から巣立ち、心の底から優勝を希求してきた男。移籍加入の前田遼一をごく自然にエスコートするように選手たちの先頭に立ち入場してきた日本有数のゴールキーパーは、大金常務の傍で「チーム」という響きを噛み締めていた。

権田は言う。
「大金さんはいままで常務だったので、あまりみんなの前で話す立場ではありませんでしたけれども、ああやってみんなの前で話す立場になったときに、何を話すのか。すごく興味がありました」

東京ガスサッカー部でプレーヤーとして奮闘していた大金常務の考えがすべて正しいとはかぎらない。しかし関東リーグ、旧JFLを経て、FC東京としてJリーグに参戦し、大きくなっていくさまをその眼で観てきた生き証人であることにまちがいはない。数年間クラブを離れた時期があったとはいえ、クラブのいいところも悪いところも熟知している。もし、もともとの東京にあったよさが薄れているとすれば、そうした問題点も提起できるはずだ。

その大金常務が「チームワーク」という言葉を使った。
やたらと仲が悪くとも困るが、馴れ合うだけのなかよしでも、チーム状態が良好だということにはならない。何をもって「チームワーク」とするのか、はっきりとは言いがたいものだ。しかしこう言われたからには、あらためて現場の選手たちはその意味について考えないといけない。

もちろん、選手としては、チームワークを大切にしよう、同じ方向にまとまろうと心がけてきただろう。それでもさらに考えを及ぼさないといけない。どうすれば真の意味でチームになれるのか。

「大金さんはほんとうにサッカーを知っている社長です。しかもあまりチームには口を出さないようにしていると言っていたのに、そこ(「チームになること」)だけは強調して言ったということは、そこはほんとうに僕らに伝えたかったことなんだろうなと。その意味は、練習をしながら、あるいはキャンプなどでの生活を含めて、考えてやっていかないといけないと思います」

こまかく意味を絞らなかったことで、それを受け取る側の思考は活性化した。

「大金さんは“チームワーク”という漠然としたことしか言わなかったので、ぼくたちがそれを考えないといけない。大金さんが(もっと意味を絞って)こうこうこういうときにこういうチームワークが足りないと思うよ、と言ったらそれだけに気をつければいいですけれども、漠然と“チームワーク”という言葉“だけ”をぽん、と投げかけられたので。ぼくらがその意味を考えて、自分たちなりにね。
正解はないと思うんです。自分たちなりでいいと思うし、たとえばぼくと吉本でチームワークについて考えていることがまったくちがっていてもそれはいいことで、それぞれが大金さんの言ったことに対してしっかり考えて行動することが大事だと思います」

正解はない。あるいは、正解はひとつではない。
優勝するため、優勝できるチームをつくるため、方法論は幾通りもあるだろう。方法が数少なかったとしても、それを実践するコツは、やはり幾通りもあるだろう。

しかし、無数にある対処法のすべてを一度に提示することも実践することも不可能だ。
何かひとつに決めて示さないといけない。
それがことしのFC東京にとってはチームになることだと大金常務は言った。
それは方向性ではあるが、具体的な指示ではない。やるべきことはそれぞれが考えなくてはいけない。

「結局、考えることが大事なのであって。ただ言われたことをやるのではなく。大金さんにしても、阿久根(謙司代表取締役社長)さんにしてもそうですけれども、自分で考えてやる(※阿久根社長が掲げたテーマは「自立」)、というものをぼくらに植え付けてくれた。そういう部分を、ぼくらはしっかりやらないといけない。
ただ“これをしましょう““はい、やります”ではなく、いま自分たちにとっては何が必要なのかを考える作業はやらないといけないと思うし、それを考えてやらないと、たぶん、ほんとうの意味でいい方向に行かないと思うので。それはしっかりと各々が考えてやればいいんじゃないかなと思います」

一足飛びに強くなる魔法は存在しない。「チームになれ」と言われても、それを一瞬でなし遂げることはできない。
選手たちは、局面ごとに問題点を指摘し合い、よかったプレーの記憶を刻み込み、こまかな改善を重ねていく必要がある。毎日よく磨かれた歯は健康を保つが、いい加減な磨き方をつづけていれば歯周病になる。
質の高いおこないの習慣化が、気風をつくり上げるのだ。

その結果として「チームになる」のだろう。
そして「チームになる」前の段階には、「チームにしていける」状態、つまり「言い合える」状態があるはずだ。

その第一歩に向け、権田の言葉は頼もしかった。
権田修一と吉本一謙、ふたりがちょうどチーム内で中堅の世代になり、年上にも年下にもものを言えるのではないかと問うと、権田はやんわりと、次のように否定したのだ。
「試合に出ていようがいまいが、年上だろうが年下だろうが、いいと思ったことは褒めるべきだし、悪いと思ったことは言うべきだと思います。けっこうそういうことを言えないひとは多いですけれども、ぼくは別に気にしないでやるひとなので。気にしたことはないですね」

すべての選手から、いい意味で遠慮がなくなれば、風通しがよくなるのかもしれない。衝突があったとしても「雨降って地固まる」という性質のものであれば、衝突を恐れて臭いものに蓋をするよりも、前進につながるはずだ。

まだ3位以内に入ったこともない東京が保守的になるのは早すぎる。ちょっとラディカルなほうがいい。榎本達也、前田遼一といった年かさの選手も刺激になっている。
チームになるために何が必要なのか?
権田をはじめとする東京イレヴンが、それぞれどういう答えを出していくのか。興味深く見守っていきたい。

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