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【無料記事】レポート◆「アニ×サカ!!」第4戦を前に第2戦と第3戦を振り返る(2015/07/07)

レポート◆「アニ×サカ!!」第4戦を前に第2戦と第3戦を振り返る

J2の3クラブがそれぞれのホームタウンを舞台とするご当地アニメとコラボした「アニ×サカ!!」は、7月8日の明治安田生命J2リーグ 第22節FC岐阜対東京ヴェルディ戦で第4戦を迎える。そこで、このコラボ企画の復習として、直近の2試合、第2戦(4月11日、J2第7節)と第3戦(5月31日、J2第16節)をあらためてレポートする。

◯「アニ×サカ!!」第2戦(明治安田生命J2リーグ 第7節)東京ヴェルディ対FC岐阜/味の素スタジアム

 

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『のうりん』10巻を手に、白鳥士郎先生

『のうりん』10巻を手に、白鳥士郎先生

第1戦よりも盛りが大きくなり、よりアニメに近づいたと評判だったあんぽむ(橘杏)さん

第1戦よりも盛りが大きくなり、よりアニメに近づいたと評判だったあんぽむ(橘杏)さん

北から順に水戸ホーリーホック、東京ヴェルディ、FC岐阜によって争われる「アニ×サカ!!」。北関東ダービーやバトルオブ九州などに類似したダービー企画と定義することができるが、そのくくりが「アニメとコラボをしているチーム」である点が独特だ。各チームのホームに他の2チームを招く恰好となり、全6試合が「アニ×サカ!!」として開催される。

地域、アニメ、Jクラブの協力でJ2を盛り上げることが目的だが、中心となるコンテンツが試合である以上、やはりサッカーの内容も結果も大切だ。
ヴェルディは初戦のホームゲームで水戸に勝利し、アニメ好きとして知られる井林章が自らの得点と攻守でマン・オブ・ザ・マッチ級の活躍。サッカーとアニメ、ふたつの世界をまたぐ親善大使となり、イベントとしても上々の滑り出しだった。

4月11日の第2戦は再びヴェルディのホーム、味の素スタジアム。対戦相手は岐阜だ。岐阜県から駆けつけたファン、サポーターのなかに、FC岐阜とコラボするアニメ『のうりん』の原作者、ライトノベル作家の白鳥士郎先生がいた。
岐阜のいちサポーターであり、『のうりん』の作者という立場もあって、両者のコラボを成功させるため、まさに架け橋となって働いている白鳥先生に、「アニ×サカ!!」の意義についてうかがったところ、次のような答えが返ってきた。

「サッカーには体育会系のイメージがあり、ではオタクはどうかというと、文系──というかインドア派なんですね。そういったひとたちとサポーターの方とがなかよく、いっしょに応援できるようにしたい。
やはり、勝つと気持ちがいいですし、アットホームな雰囲気に浸ることができる。オタクの方も、イベントに行って友だちをつくることがありますが、それはサッカーも同じなんです。サッカーのサポーターの場合も、お互いに名前は知らないけれども(笑)、スタジアムに来るといっしょに応援する、ということが起こります。
仕組みが同じで、来るところだけがちがう。うまくいけばサポーターになってくれるかもしれません。その取り組みを、ぜひ『アニ×サカ!!』でやっていけたらと思います」

アニメとのコラボグッズを売り買いするだけで終わるのではなく、地域振興を果たしつつ、地元のアニメと地元のサッカーの両方を楽しめる状態をつくりたい、ということのようだ。準備期間が短かった味スタの2試合でさえ、キックオフ前のコンコースには、観客動員数ではあらわしにくい多幸感が醸しだされていた。
岐阜に行けば、この度合いはさらに高くなるのかもしれない。

試合は前半、ビジターチームの岐阜が0-3と大きくリードした。序盤戦の岐阜は不振を極めており、修正中の状態だったが、カウンターとサイド攻撃を徹底してヴェルディ守備陣を混乱に陥れ、決定力の高い難波宏明がハットトリックを達成。誰もが岐阜の勝利を予感した。
しかし、ハーフタイムにあったこのやりとりが、奇跡の端緒となった。

MC「本日の試合はFC岐阜との一戦ということで『アニ×サカ!!』として開催しています。そこで本日はアニメ『甘城ブリリアントパーク』から、可児江西也役の内山昂輝さん、ラティファ・フルーランザ役の藤井ゆきよさんにお越しいただいております。前半戦が終了したわけですが、ここまでご覧になっていかがでしょうか、内山さん」
内山さん「はい。そうですね、厳しい展開ですが、後半にいっぱい点を獲ってもらって、逆転してもらいたいと思います」
MC「はい、藤井さんはいかがでしょうか」
藤井さん「はい。『甘ブリ』も絶体絶命のピンチから力を合わせて乗り越えたというお話なので、まだまだ後半にかけましょう!」

0-3のままスコアは動かず、迎えた終盤。速攻の状態で、途中出場の永井秀樹が異常なまでにすばやいドリブルを仕掛け、どんぴしゃのスルーパス。これに抜け出したアラン ピニェイロの撃ったこぼれ球を平本一樹が押し込み、1-3。この84分のゴールが反撃の幕開けだった。その4分後には中後雅喜が芸術的な直接フリーキックを決めて2-3の1点差。さらにアディショナルタイム、平本が競ったボールがブルーノ コウチーニョからアラン ピニェイロへと渡り、ダイレクトでクロスを上げると、これを平本がスルーして飛び込んできた杉本竜士がヘディング。相手守備陣のマークを完全に外す複雑な攻撃で、ついに3-3の同点に追いついた。こうなると勢いは止まらない。試合終了間際、最後のプレーで、クロスを福井諒司がすらし、ゴール前に転がったボールを平本が蹴り込み、とうとう逆転。4-3の勝利でヴェルディが「アニ×サカ!!」2連勝を飾った。

アニメに惹かれて集まったファンの前で「筋書きのないドラマ」を見せた両チーム。サッカーの醍醐味を味わえる、エンタテインメントとしては最上の展開となり、『アニ×サカ!!』としてはよい結果だったが、やはり選手や監督からは反省の声が聞かれた。
ヴェルディの中後雅喜は「たとえばこれが決勝なら“よかったね”で終わりますけれども、まだまだ30何試合もありますし、これじゃいけない、というのが先に来ますね」。冨樫剛一監督も「自分たちはこういうゲームをやりたかったわけではない」と、自らに厳しかった。

敗れたラモス瑠偉監督も、状態がよくなってきたことは認めつつも、それを活かせなかったことに、もったいなさそうな表情を見せた。
「3-0で勝っていてもう少しボール廻しをすればよかった、勝っているときにするべきサッカーをすればよかったのに、それを実践する勇気が足りなかった。1点2点獲られてもいい、もう1点獲りに行く、という姿勢を見せないと。最後の15分間、1点を獲られる前に、2、3回チャンスがあった。もう少しそこで丁寧にやればよかったと思う。ウラに行くまでのパスもつながらなかった。早く試合が終わらないかなという、プレッシャー、緊張感。そういう気持ちのときには視野が狭くなるし、ミスが多くなる。(失点場面では)ひとがいるはずのところにいない。マークがずれていた。こういうことが、負ける癖をつけているチームには起こる」

負け癖。それは次回の「アニ×サカ!!」にも影を落としていた。

◯「アニ×サカ!!」第3戦(明治安田生命J2リーグ 第16節)FC岐阜対水戸ホーリーホック/岐阜メモリアルセンター長良川競技場

 

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カレンダーのいたずらか、東京ヴェルディホームで2試合、FC岐阜ホームで2試合、水戸ホーリーホックホームで2試合と、順繰りに開催地を変えていく日程となった「アニ×サカ!!」。第3戦と第4戦は岐阜メモリアルセンター長良川競技場でおこなわれ、5月31日の第3戦では、岐阜が水戸を迎え撃った。

飛騨牛の碁盤乗り、枝豆すくい、実物大軍用車両&水ロケットなど、盛りだくさんのイベントが功を奏し、好天に恵まれた日曜日の午後ということもあり、岐阜メモリアルセンターはおおぜいの観客で賑わっていた。
第2戦でお逢いした『のうりん』の作者、白鳥士郎先生に案内していただけることになり、『のうりん』の黒澤典弘プロデューサーにお話をうかがうことはできた。
アニメがサッカーに益をもたらす側面が大きな「アニ×サカ!!」だが、黒澤プロデューサーの言葉からは、アニメ側にもメリットがあることを確認できた。
「(「アニ×サカ!!」より前の)『のうりん』とFC岐阜さんのコラボはそれぞれのファンのなかでの交流だったと思うんですけれども、他作品さんともコラボをすることで、より大きな拡がりになる。アニメコラボの試合の、楽しみ方の新しいかたちを提案できました。「アニ×サカ!!に加わることによって『のうりん』というアニメのコンテンツ自体がずっと“熱”を持ったまま(活動)できているのは、ありがたいお話です。じつは、Twitterのフォロワー数はいまが最高点なんですよ。アニメ放映終了後も応援しつづけてくださるファンの方が多くて」

アニメの放映終了後も生きたコンテンツになっているのは、原作小説が継続中だからでもあるが、コラボイベントによって活性化しているからでもあるのだ。

こうした連環のなかに、地域独自の何かを見つけ出し、イベントを組み立てていくのがFC岐阜の手法だ。
この日の目玉と言ってよい出し物が「飛騨牛の碁盤乗り」。体重500kgを超える巨大な牛を飼育する過程で施す調教のなかでも「高等調教」に分類される難しい技術だ。牛の手綱を引いて碁盤の周囲を歩き、ちょうどよい角度とタイミングで進入して碁盤の上に乗らせる。言葉にすると簡単だが、牛の歩く速度が早すぎれば碁盤を通りすぎてしまい、角度が合わなければ、やはり碁盤の外側へと膨らんでしまう。からだが大きいだけに制御も難しい。手綱を引く操手(「ハンドラー」と呼ばれる)にとっても、引かれる牛にとっても、容易ではないことなのだ。

加茂農林高校畜産調教部はこの伝統の技術を持つ数少ない高校生の集まりだ。フィールドの設営から競技の実施まで、すべてを自分たちだけでおこなう。四隅に控えるボールパースンならぬ脱糞パースンも、ハンドラーも、司会進行も、基本的におとなの手は借りない。ときおり、熱血監督の風格が漂う古関敬先生から指示の声が飛ぶが、それもみだりにかけるものではない。

MCの実況はプロはだしの堂にいったものだった。
「はるみ号はひとが大好きで、このように大きな会場、大勢の前で披露することが大好きです。けっこう上手に乗ってくれます」
「きよら号はいつもおっとりしているのですが、このような大きい会場などでは、緊張してしまってあまりうまく乗れないことがあります。あたたかく見守ってあげてください」

ごほうびにはヘイキューブ(成形乾草)をあげるのだ、と豆知識。牛もおやつをもらってうれしそうだ。畜産を手がけるからには、部員たちは四六時中、牛の健康に気を遣うことになる。そうして築かれた信頼関係がなければ、高度な調教はできないのだろう。
「高校で碁盤乗りができるのは岡山県の新見高校とここ岐阜県加茂農林のこの牛二頭です」とMC。
日本でもっとも牛をよく知る高校生の一方が加茂農林高校。牛については熟知しているようだ。

一頭だけでも難しい碁盤乗りを、加茂農林高校畜産部では、二頭同時におこなう。一回めは比較的早く成功したが、乗る碁盤を交替しての二回めが難航した。タイミングも進入角度も合わず、いい距離感で碁盤に近づくことができない。心なしか牛も苛立っているように見える。すかさずMCが解説を入れた。
「わたしたちが練習しているときでも、このようなスランプがあるのですが、根気強くやっています」
「暑くなってくると、牛たちもぼーっとするようです」
ここでハンドラーが交替した。その甲斐もあり、何度めかのトライの末に、ついに二頭が同時に碁盤の上に乗ることができた。
すると、0-0のスコアを延長後半で打ち破る120分めのゴールが決まったかのような、ひときわ大きな拍手が起きた。
MCが「いかがでしたでしょうか」と言えば、また拍手。驚いたのはそのあとだ。拍手がわかったのか、間髪入れずに、牛が「うもー」と声を上げたのだ。

ファイナルマッチのごとき大団円。伝統の調教技術と言いながら、体操やフィギュアスケートのような緊張感が漂うこの実演について、加茂農林高校の古関敬先生に語っていただいた。
──こういう柔らかなイベントで実演することについてどう思われますか?
「ひょんなことから始めることになったんですけれども、これによって畜産に携わる者にとり、馴染み深いもの(伝統)を守ることができます。いろいろな方に見せる機会を持たないといけないと思っています」
――生徒への指導が厳格なようですが?
「やはり、そんなに甘くないですから。びしっとやるべきところではやらないと、牛が言うことをきかなくなりますし、下手をすると生徒がけがをします。厳しい心構えで取り組まないとつづかないんですね」
――きょうの評価はいかがですか? MCの生徒さんもよく臨機応変に対応していたようですが。
「よくやっていると思います(※第1部終了後で、このあとに第2部も控えていた)。二、三日前に当日の流れや話す内容を打ち合わせた程度なので、進行についてはアドリブ、本品の力に負うところが多いと思います。
彼女はハンドラー(操手)もやっている。今回の場合は2週間前くらいからこの設定で練習をしているので、自分たちでも動きがわかっている点がよかったのではないかと思います。どこでどうなる、という想定もして話している。自分がやってきたことが活きています」
──そうとう苦戦していたようですが、なんとかやり遂げました。その奮闘に感動もしましたし、本気の競技性を感じました。
「実際、乗らないときもあります。乗らないときは乗らないときで、それは仕方がないのですが、ハンドラーの子たちは悔し泣きをします。ふだんできていたものがなぜできないのはどうしてなのかを考えるのも彼女、彼らにとっては大事なこと。失敗は失敗でいいのかなとは思います。でも、確実にできるので。思ったとおり、場所が替わってもできたという自信になってくれればいいです」

敗戦から学ぶこともあるとは、どこかの名将のような言葉である。碁盤とピッチでは何からなにまで異なるが、サッカーと共通する要素は多分にあるのではないかという気にさせられた。

加茂農林高校が2週間の準備をして臨んだ“ビッグマッチ”のあとは、いよいよサッカーの試合である。
ところがこの時期の岐阜と水戸は互いに不調を引きずり、いいプレーもできるのに、どこか自信なさげな試合運びで、決定打を欠いた。
コーナーキックから岐阜の難波宏明が決めれば、直接フリーキックを水戸の船谷圭祐が決める。セットプレーの応酬で1-1としたあとは、ロングボールの応酬。
後半も距離感やパスの精度、受ける側のポジショニングなどに問題を抱え、両チームとも相手の守備網を崩すことができずに、そのままのスコアで引き分けた。
試合後、岐阜のラモス瑠偉監督は「ポジショニングがよくなかった」と嘆いた。根本には自信のなさがあるが、立てなおそうにも過密日程もあり無理をさせられない。修正に時間がかかる、という大意を語るのに、数十分を要した。

試合前の盛況ぶりに比べ、それにふさわしいカタルシスをもたらすことができなかった両チーム。しかしこれもまたサッカーだ。第4戦はこれ以上の盛り上がりを示さないといけないだろう。

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