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【第5報】分析Review◆マッシモ フィッカデンティ監督と高橋秀人のキーワードで振り返る守備の成功/J1 2nd 第13節 サンフレッチェ広島vs. FC東京(2015/10/04)

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分析Review◆マッシモ フィッカデンティ監督と高橋秀人のキーワードで振り返る守備の成功/J1 2nd 第13節 サンフレッチェ広島vs. FC東京

○マッシモ フィッカデンティ監督が語ったキーワード
【柔軟に選択】
【時にはシャドーにしっかり付いて】

○高橋秀人が語ったキーワード
【自分のマークを見ながらも浮いたシャドーを牽制】
【構える守備】

ミドルサードやアタッキングサードの中央でショートパス、ヨコパスをつないで攻め上がると、それだけ自陣まで最短距離の危険なカウンターを喰らう可能性がある。サンフレッチェ広島はこうしたリスクを極端に回避しようとするチームで、ボールを廻すのは森崎和幸がディフェンスラインに下がったときの4バック上でのものがほとんどだし、中盤から前では一気にスピードアップし、サイド(ミキッチと柏好文、あるいは山岸智と清水航平)を使うか、青山敏弘からシャドー(初期配置3-4-2-1の「2」、この試合ではドウグラスと柴崎晃誠)や1トップ(佐藤寿人)まで一気に飛ばし、フィニッシュまでやりきって相手にカウンターを仕掛けさせない。

それだけに、FC東京がサンフレッチェ広島を打ち破ったこの試合には驚かされた。青山からシャドーにタテパスが入りそうなバイタルエリア(ペナルティボックスの前)の辺りで、まるで掃除機が近くの物を吸い込むかのように、「すぽっ」という吸引音が聞こえてくるかのように、次々と快調にボールを奪取していたからだ。もちろん、広島は個のクオリティが高いので、東京がどれだけ対策をしていても、ある程度ゴール前までボールを運ぶことはできるが、組織同士の対決、戦術レベルに於いては、完全に東京が広島を制していた。これまで国内の勝負ではミラーゲームで互角に持ち込む以外に解決策を見出しにくくなっていた広島に対する攻略法を、ついにマッシモ フィッカデンティ監督が見つけたのだ。いいかたちでボールを奪えば、そこからの反攻は難度が下がり、相手選手のあいだを衝いたり、大外を使って崩したりという攻撃の質も上がる。よい守備が起点となって好循環を生んでいた。

広島はもともと相手にとっては掴みにくい、やりにくい、変則的な陣形を採っている。たとえば広島の初期配置である3-4-2-1に対して、東京の4-1-3-2を当てた場合、4ラインの配列上は、東京の2トップは広島の3バックを、東京のトップ下やインサイドハーフは広島のボランチを、東京のアンカーは広島のシャドーを、東京の4バックは広島の1トップを見ることになる。しかも4ラインがきれいに水平に揃っているわけではないから、この時点で完全に対応するのは無理だ。しかも広島のフォーメーションは引いた守備の場合に5-4-1、マイボールのときには4-1-5となる。結局、マンマークで一人ひとりに張り付かないかぎり、広島から自由を奪うことができない──との判断で、ミラーゲーム的な対応になってしまうのはやむをえないところだろう。

マッシモ フィッカデンティ監督が採った戦術のポイントは、そのミラーゲーム的な発想を、あえて排したところにあった。試合後の共同記者会見冒頭、試合の総括は、戦術の解説を含むすばらしいスピーチとなっていた。以下、全文を起こす。

「非常にいい試合だったと思います。戦術レベルでも、両方ともよくオーガナイズされたチームでしたし、本物の試合だったと言えると思います。

(残り 2489文字/全文: 3888文字)

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