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【無料記事】【新東京書簡】第一信『しばらくぶりです』(2016/04/12)

書類棚を探してみたらあったよ。『エルゴラッソ』2005年10月24・25日号。11年前かあ。

書類棚を探してみたらあったよ。『エルゴラッソ』2005年10月24・25日号。11年前かあ。

■どうもご無沙汰しております。緑者のライター海江田です。

初回だから、『トーキョーワッショイ!プレミアム』、『スタンド・バイ・グリーン』両方の読者に一応説明しておこう。後藤さんとおれ、ずいぶんと昔、サッカー専門新聞『エルゴラッソ』で『東京書簡』という連載コラムをやってたんですよ。文字どおり、往復書簡のスタイルで。

何年くらい続けたかな。東京ダービーに負けて、おれが坊主にさせられたこともあった。ちくしょう、ササ・セルサードめ。編集部に証拠写真を送ったら、もっと柔和な表情でとリクエストがあった。誰がニッコリ笑えるかっつうの。連載の最後のほうは担当編集から放っておかれ、自然消滅。なんと最終回を書いてない。商業媒体でそんな尻切れトンボ、珍しいよね。

で、こっちが今年からWEBマガジンを始めたから、それならまた一緒にやろうよ、ということになりました。おれらは『東京書簡』を愛着をもってやっていたから、タイトルは継続。構わないでしょ。あちらは雑に捨てた連載なんだし。では、読者の皆さま、どうぞよろしくお願いします。以上!

■アグー豚を焼きながら

後藤さんとは1月のニューイヤーカップ沖縄ラウンドで、東京ダービーがひっそりと実現したときに会ったね。教えてもらった那覇のフットボールカフェ『カンプノウ』、ほんといいお店だった。

そのときさ、東京から知り合いのヴェルディサポーターが応援にやって来たんだ。沖縄観光を兼ね、家族連れで。せっかくだから一緒に晩ごはんを食べようとなって、焼肉屋に行った。牛カルビやらアグー豚をじゃんじゃん焼きながら、「美味しいね。この豚、マジやらかいね」と楽しくやってたの。したら、その人がぐびぐび飲んでいたビールジョッキをテーブルにゴンと置き、言ったんだ。

「おれ、ヴェルディがJ2だと思ってないスから」

てっきり冗談かと思った。違ったよ。顔は笑ってるけど、眼は真剣なの。おれは視線のやり場に困って、奥さんに抱っこされてミルクを飲んでる赤ちゃんの顔をまじまじと見ちゃった。あんたの父ちゃん、イカれてるぜ。

「いや、どうしてもJ2のクラブとは思えないんスよ」

えっ、だったらどこにいるの? 宇宙? 四次元空間? 何を言っても「おれのなかではトップだから。日本一のクラブだから」の一点張り。それでいて、ちょっと照れてるんだ。

「こんなことを言うのは、自分でもヘンだってわかってるけど」

意固地でいじらしい態度が可笑しくて、おれはその人のことがより好きになった。だいたい、発言の根拠がむちゃくちゃなうえ、照れてる理由がさっぱりわからない。長年、サッカーを好んで観てきたけど、自分は特定のクラブのサポーターだった期間が一切ないから、羨望のまなざしを向けた。

■ヴェルディの現在地は

一方、おれらの商売はそれ一辺倒では困るよね。いまの東京ヴェルディが世界地図、日本地図のなかでどこにいるのか。現在地は常に意識したい。年々、置いてきぼりにされているのは実感としてある。FC東京はACLの舞台で戦い、FC町田ゼルビアはJ2に復帰して快進撃を見せている。JFLの横河武蔵野FCは今季から東京武蔵野シティFCと名称をあらため、いよいよ本腰を入れてきた。

そもそも東京Vは内政に重きを置き、現実の直視から始まる継続的な取り組み、身を切る総括、アナウンスが苦手なクラブだ。一昨年なんて、シーズン中にトップの強化部長が退任したんだけど、リリースすらなかったんだよ。理由がどうあれ、そんなやり方聞いたことがない。不思議なもので、経営陣が刷新されても体質は引き継いでいる。余計なお世話と煙たがられようが、外野がやるしかない。

それに、東京の枠組みを超えて大きな問題が持ち上がったとき、このコラムは便利に使える。原稿のオファーや強い興味があれば取材して書くが、わざわざ首を突っ込むことはないかと多くは通り過ぎてきた。相手がいれば話が広がり、書く甲斐があるってもんだ。

手始めに、河野広貴、中島翔哉、阿部拓馬の状況を聞かせてほしい。緑者はそれなりに気になっていると思うんだ。すでに重要な戦力になっている阿部とメンバーには入っている河野はともかく、翔哉はこのままリオ五輪に突入しちゃうのかい?

『スタンド・バイ・グリーン』海江田哲朗
[了]

 

 

 

 

 

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「クラブ経営から監督目線の戦術論、ピッチレベルで起こる試合の描写までフットボールの醍醐味を余すことなく盛り込んだ近未来フットボール・フィクション。サイドストーリーとしての群青叶の恋の展開もお楽しみ」
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