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【無料記事】最後に誰が笑うのか。FC東京、逆襲の前提にある変化(2016/08/06)

FC東京は前節に勝利して年間勝点を29に伸ばし、本日6日の対戦相手であるジュビロ磐田を年間順位で追い越した。もちろん、上位チームとの対戦を多く残したこれからの日程を考えると、現状の順位をもって残留争いから抜け出たと安心することはできないだろう。しかしアビスパ福岡、柏レイソル、川崎フロンターレに3連敗したときよりもチーム状況が好転してきていることは、誰もが感じ取っている。

◯前田遼一

バロメーターのひとつは選手の表情や話しぶりだ。良化が顕著なのは、前線から相手ボールホルダーを追うことで守備のスイッチを入れ、チーム戦術上も重要なキーパーソンである前田遼一。以前とはうって変わって、かなり饒舌になってきている。周囲の期待、自分がこうしたいと考えていること、チーム全体について……深い洞察力が感じられる物言いが増えてきた。

高橋秀人をアンカーに置いたシステムのときは1トップで主軸となっていたが、平山相太に、あるいはムリキとネイサン バーンズにポジションを譲り、このところは途中出場がつづいていたが、いまはチームの背骨を負う役回り。スプリント能力、高い守備意識がポジション獲得の鍵になった。
走り、戦える選手。後半戦に求められる条件を、前田は備えていた。

◯高橋秀人と田邉草民

ハ デソンが移籍、米本拓司と橋本拳人が負傷したボランチ陣。しかし篠田善之監督に焦りの表情はない。「いる選手を組み合わせていく」と、まったく動じないところを見せている。現有戦力への信頼ゆえか。
J1セカンドステージ第6節では橋本拳人が負傷で退いたことにより、高橋秀人と田邉草民のドイスボランチが実現した。一見、即席のコンビに見えるが、J3で出場経験を積み、練習でもボランチをこなしてきた田邉は、堅実にプレーし、組織を破綻させることがなかった。

この組み合わせは感慨深い。
トップとU-23がはっきりと色分けされたリーグ戦開幕前の時期におこなわれた、実質U-23の国内組(2月23日のACL対全北現代モータース戦に出場するメンバーが韓国遠征中で不在)が2月21日に横河武蔵野FCと戦った練習試合で“オーバーエイジ”のフィールドプレーヤーは高橋と田邉だけだった。ふたりを蘇生させたのは、腐らずにJ3でサッカーに打ち込み、己を磨くメンタリティ。負傷離脱が相次ぐなか、けがなく戦ってきた彼らがボランチでプレーする姿は、競争の激しい篠田東京にあって象徴的だ。

◯5バック

主にボール支配力を増す意図でFC東京U-23がシーズン半ばから3バックを駆使し、結果を残してきている。しかしトップチームはずっと4バックベース。4バックのままアンカーを置いたときは守備が安定したが、4-4-2では好調と不調の波があった。
そこへ来て、前節の対アルビレックス新潟戦では、終盤に吉本一謙を投入して5-3-2の導入に踏み切り、1点を守りきったから、衝撃は大きかった。

5バックまたは3バックについては、城福浩前監督も使いたかったことだろう。ヴァンフォーレ甲府時代に5バックで守りが堅く安定した試合運びをするチームをつくったことがあるから、周囲もいつそのフォーメーションを採用するのかと見守っていた。しかし結局、5バックまたは3バックがオプションに据えられることはなかった。
やはり、ACLラウンド16第2戦、後半40分に、森重真人+吉本一謙のコンビに丸山祐市を加えてセンターを3枚にしながら守りきれず失点、大会からの敗退を余儀なくされたことが、重くのしかかったのではないか。

それでも、守りきる狙いをはっきりさせるために、篠田監督は吉本を投入した。戦術的にも、森重と丸山を励ます意味でも、この起用は奏功。チームに連敗脱出をもたらした。

「何か変わったところを見せないといけない」と篠田監督は言った。そのとおり、目に見えてはっきりとわかるほどに、あちらこちらに変化が生じている。監督交替後初めての試合で新しいチーム像を提示し、めざす方向を定めたことで、さらに変化が生じてくるだろう。第2ラウンドとなる磐田との戦いで、その一端が垣間見えるはずだ。

 

 

 

 

 

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