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【無料記事/J3第22節第1報】ナオの復帰が劇的勝利を呼んだ! U-23初の味スタ開催「一体感」で間瀬秋田を撃破(2016/09/19)

「FC東京の一体感に上回られた」と述べた秋田の間瀬秀一監督。彼が2シーズンをかけて磨き上げてきた戦うチームを、味スタの結束力が凌駕した。

「FC東京の一体感に上回られた」と述べた秋田の間瀬秀一監督。彼が2シーズンをかけて磨き上げてきた戦うチームを、味スタの結束力が凌駕した。

中村忠U-23監督と佐藤一樹U-18監督の双頭ベンチも良好なチームワークの象徴か。

中村忠U-23監督と佐藤一樹U-18監督の双頭ベンチも良好なチームワークの象徴か。

高校生からOAまでの幅広い年齢層で構成されたFC東京U-23。ここに35歳の石川直宏が加わった。

高校生からOAまでの幅広い年齢層で構成されたFC東京U-23。ここに35歳の石川直宏が加わった。

この男が結束を促した。

この男の存在が結束を促した。

9月19日、FC東京U-23は初の味の素スタジアム開催となったJ3第22節に於いてブラウブリッツ秋田を1-0で破り、勝点を22に伸ばした。激しく戦うスタイルのチーム同士とあり、0-0で拮抗する時間が長くつづいたが、石川直宏が投入されたあとの後半42分、波状攻撃ののちにこぼれたボールへ右から水沼宏太が飛び込み、先制。マリノスと東京にドリブラーとしての足跡を残す偉大な先輩の復帰戦を飾るゴールが、青赤軍団の勝利を決めた。

敗軍の将となったブラウブリッツ秋田の間瀬秀一監督は、FC東京U-23の一体感に自分たちが凌駕されたという認識から、試合後の共同記者会見を始めた。
「J3リーグの試合でありながら初めて味スタでおこなわれたこと、そしてそのほかにも、石川選手の復帰の試合であったり、スタメン、ベンチにいたユースの選手の一体感だとか、戦う気持ちだとか、サポーターの応援だとか、そういったものの一体感がものすごくて、そういうところで自分たちはまちがいなく相手に上回られた。それがまず率直な感想です」

具体的なサッカーの内容については、雨で濡れたピッチを気にしてボールを動かすことに対してうしろ向きになってしまった部分があった――と指摘した。タイムアップの笛が鳴るまで走ることをやめず、果敢に攻めるのが秋田本来の姿であるはずだ。なぜ第3節で東京を圧倒したときのように押し込めなかったのかと問うと、間瀬監督は冒頭に語ったことがいちばんの原因だと思うと答えた。
「あまり深いところまでは話したくなかったですけど……いまのFC東京は、J1のほうのトップチームも含めて、球際だとかプレスだとか、戦えるチームに変貌しているんじゃないかと思いますよ。浦和レッズとの試合も結果的にはね、すべての面に於いて最終的には保たなかったのかもしれないですけど、それでも途中までは、ほんとうに浦和レッズを苦しめていた、まずはあそこから始まっていたと思うんですよね。われわれの分析もそこから始まっていますし。ほんとうにFC東京が一体感をもって、みんな(トップ、J3、特別指定選手とU-18の一部が全員)で練習しているクラブですから、新しい体制が立てた新しい監督の許、ベテランとユースの選手も含めて、ものすごく一体感がある、と。そのなかで、いろいろな条件、天候やスタジアムが重なったなかで、いちばんは相手に苦しめられたというのが、私の率直な意見です」

前回の対戦では秋田の闘志に屈した東京が今回はホームで勝てたその理由を、対戦相手の指揮官はチームの成長を含めたクラブ力に見出したことになる。

この日の入場者は3,236人。1階と2階中央のみを開放したメインスタンドは、秋田のファン、サポーター数百名を含め、ほぼ満席になっていた。秋田ファンの応援力も試合を盛り上げていたが、東京ファンの一体感が間瀬監督の心に響くほどのものであったこともまた確かだ。
試合前、ハーフタイム、そして途中出場と、すべてのタイミングで石川を迎え、励ます声が充ちていた。選手交替を告げるスタジアムDJの声も、石川の名を呼ぶときは、ひときわ感情がこもり、高いトーンになっていた。
水沼が貴重なゴールを決めたとは、すべての選手が石川にゴールを獲らせようと、好パスの配球をつづけていた。

試合後のヒーローインタビューでは水沼宏太、石川直宏の順番に話した。

「偉大な先輩の復帰戦ということで勝って終われてよかった」
「雨のなか、応援ありがとうございました。きょう、これだけ集まってくださったのは、ナオさんがこれまで築き上げてきたものだと思うので、みんなでナオさんのお祝いを、スタートのお祝いを、したいと思います」
この水沼の言葉を受けて、石川が話し始める。
ヒーローインタビューにしては長めの答え。実際には、すべての東京ファン、サポーター、クラブメンバーに向けた熱いメッセージだった。
「いやー、ほんと気持ちいいですね。この日を待ち望んで、日々積み重ねていたので。ぼくの気持ちもそうですけど、(水沼)宏太のふだんの積み上げが、結果となってあらわれたんじゃないかと思います」
「これまで何試合か出場予定の試合があったんですけど、ちょっとしたアクシデントだったり、先に延びちゃいましたけど、こうやってたくさんの方にお集まりいただいて、どうしても結果が欲しかった。ぼくの復帰戦ということもそうですけど、FC東京のエムブレムを付けている以上はやっぱりどんな試合でも結果を残してこそ自分だと思うし、FC東京のプライドだと思うので。J1もつづきますしJ3もつづきますしルヴァンも天皇杯もあるので、全員一丸となってがんばっていきたいと思います」
「(復帰ゴールは次に持ち越しということでよろしいですね?)もちろんです。ホームで決められませんでしたけど、常にそういう姿勢を見せてね、チームに勢いをもたらして、自分自身もゴールを狙っていきたいと思います」
「ここがゴールじゃない。ぼく自身はやっとスタートできたと思っています。残りのシーズン、少なくなっていますけれども、ぼくの意地とFC東京の意地と、プライド、誇りをもって、最後まで戦いたいと思うので、またスタジアムにも、遠いときにはTVでも、いつまでも最後までサポートしてほしいと思います。よろしくお願いします」

クラブ全体に結束を促す言葉。ミスターやキングと呼ばれる人物にしか言えないことなのかもしれない。少なくともこの日の味スタにかぎっては一体感があり、それが東京の勝因に、そして秋田の敗因になったことだけはまちがいない。

中村忠監督は共同記者会見でこう述べた。
「最後までウチの選手が脚を止めずに、ゴールに向かったところで点が生まれたのかな、と。プラスアルファ、ファン、サポーターの方に思ったより多く来ていただき、それが力になった。また、久々にナオが躍動してくれたので、そういった部分もピッチに立った選手にとってプラスになった試合だったと思います」

これがテンプレートには聞こえず、分析なり総括として納得できる。それだけ、ベテランと呼ばれる境地に達した18番のパーソナリティとスタンドの思いが、この日の味スタに於けるFC東京のかすがいとなっていたということなのだろう。
この秋田に対する勝利は、J3リーグのたんなる1勝ではなく、J1にも、チーム全体、クラブ全体にとっても、大きな意味を持つ特別な勝利だったのかもしれない。

 

 

 

 

 

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