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【月初特別無料記事】11月までのJ3ラスト7、そして天皇杯の12月を見据え、ミニラ東京の新たなる旅立ち「ユースとかトップとかに関係なく、一人ひとりが躍動感を持って100パーセントの力を出す」(2016/10/01)

FC東京U-18の佐藤一樹監督が苦笑している。あす10月2日(日)に新潟聖籠スポーツセンター アルビレッジで開催される「高円宮杯U-18サッカーリーグ 2016プレミアリーグEAST」第15節、vs.アルビレックス新潟U-18戦に向けたメンバーが不足しているからだ。帰国したばかりのU-16日本代表、平川怜と久保建英を先発させるわけにもいくまい。大学受験に備えて参加できない選手もいれば、同じ2日(日)にFC東京U-23としてJ3に出場する選手もいる。18人を揃えることが難しく、首位の青森山田高校を勝点3差で追うFC東京U-18にとっては苦しい状況だが、育成を大事にするクラブの方針として選手個々の事情を考慮すれば、ここが忍耐のしどころということになる。

http://www.jfa.jp/match/prince_takamado_trophy_u18_2016/premier_2016/east/standings/

(JFAのプレミアリーグ順位表)

トップチームは本日10月1日(土)にエディオンスタジアム広島でJ1、中三日で迎える5日(水)にルヴァンカップ準決勝第1戦を戦う。そのあとは再び中三日で準決勝第2戦。ルヴァンカップに関しては日本代表に招集された森重真人と丸山祐市を欠きながらの連戦で、2日(日)のJ3に出場するU-23に割ける人数が少なくなる。つまりFC東京U-23はU-18の選手を加えないと成り立たない。もともとU-18の選手が参加することが前提とはいえ、今節はいつも以上にその重要度が高い。トップとU-23とU-18、このやりくりが非常に難しいタイミングに、FC東京は遭遇している。

このような状況で、FC東京U-23はあす2日、味の素フィールド西が丘にY.S.C.C.横浜を迎えてJ3リーグ第24節を戦う。この試合に始まるJ3リーグ残り7試合をどう戦い、天皇杯を含む残りのシーズンに向けてどのような目標を掲げるのか。“ミニラ東京”を率いる中村忠トップチームコーチ兼U-23監督に訊いた。

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「まだ(久保)建英は出ないですよ」
中学三年生ながらFC東京U-18でプレーし、U-16日本代表でも主軸となっている久保が2種登録を果たすと、日本中が沸騰した。いつJ3の試合に出るのかと、問い合わせも多いのだろう。中村U-23監督が顔をほころばせながら機先を制してきた。
「(帰国後の日程から、どこかというタイミングもあるが、U-23は)あくまでもトップの選手がメインなので。ユースの選手はプラスアルファということです」

しかしトップの選手だから必ずU-23の試合に出られるというわけではない。石川直宏の復帰戦となった9月19日のJ3第22節vs.ブラウブリッツ秋田戦では、ベンチスタートの平岡翼が出場する機会はなかった。

――平岡(翼)選手が出られないケースもありますが、これはチームが勝負に厳しくなってきたことで、競争原理が働いたものですか?
中村忠トップチームコーチ兼U-23監督 それと、ポジションですね。前回(9月25日のvs.鹿児島ユナイテッドFC戦)は先発で出場したんですけれども、それまでは(ネイサン)バーンズが入ってきたり、林(容平)や水沼宏太など前の選手が多くなってしまって。ポジションが重なると出られなくなる可能性もある、と。(ユ)インスも来たりとか。
サイドバックで、という考えもあるんですけど、でも基本的には、ある程度本来のポジションで出させたい。彼(平岡)も、前回出たときにも一所懸命に走ってくれましたし、今週はモチベーション高く練習をやっていた。
ただ、U-23で試合に出て経験を積まないといけない、しかしいつも競争がなく試合に出られる状態だということも、これからの課題になってくると思います。

――出れちゃうのも問題、と。
中村忠U-23監督 出れちゃう。いまは正直、プロ選手だったら基本“出れちゃう”じゃないですか。J1で出られなかったら、ほぼ無条件でJ3の試合に出ることができている。それも課題のひとつになってくるのかな、と。
プロ選手の契約人数、ユースから上がってくる選手、あるいは高校一年生とか二年生のなかでも東京の将来を担うような選手の場合にどういう位置づけにするか、競争させるかが、これからの課題だと思うんです。
U-23でみんなが試合に出られる、経験を積めるのは非常にいいことだとはっきりわかったし、ユースの選手がU-23でどんどんたくましくなってくる姿を見ることもできました。ベテランの選手が一試合を通した真剣勝負でコンディションを維持してJ1に帰ってくるという効果もありましたし。そのようにいい部分が見えた反面、競争が薄くなっているのも事実だと思います。
やっと、ここに来て、いい部分と問題点の両方があるということが浮かび上がってきたんじゃないでしょうか。

――味スタのときは交替カードが二枚だけでした(小林真鷹→生地慶充/59分、内田宅哉→石川直宏/66分)。試合の流れで勝つことを考えればそういう起用もあると示したと思うんですけど。
中村忠U-23監督 はい。競争の原理で、先発の選手が全員しっかりと90分戦えれば、当然サブの選手を出しにくくなります。石川(直宏)選手みたいに復帰戦ということで出場できる時間がかぎられてしまうこともありますし、状況に応じて選手ありきで考えますから、そこにどうゲームを使うか。
でも、リーグ戦ですし、ファン、サポーターが観に来てくれているし、選手一人ひとりにも勝ちにこだわってほしい。そこは、最終的にはぼくが判断しなくちゃいけないところで。あの試合では疲れてきた選手、ちょっと落ちてきた選手をすぱっと替えて。で、石川選手を投入することで、彼にとっては30分試合に出られる、チームにとっては活性化できて、ファン、サポーターの応援がすごく盛り上がるという効果があった(※ブラウブリッツ秋田を率いる間瀬秀一監督の言葉を額面どおりに受け止めれば、この一体感は東京の勝利に影響したことになる)。いろいろなことを考えなくちゃいけない。出した結論が、交替がふたりだった、というだけで。状況によってぼくが決断することだから、味スタのときはそれがまちがっていたとは思わないし、逆に、鹿児島のときはいろいろな意味で決断に甘い部分があったかな、と。

――U-23の監督は難しいですね。トップチームのコーチとしては平岡選手や柳選手に熱心に指導しているわけですけど、U-23の監督としては起用に際してシビアにならざるをえない。立場がふたつあって大変だなと思います。
中村忠U-23監督 まあでも、それがトップのコーチ兼U-23の監督でことし与えられた立場というか、クラブチームとしてそういうやり方を採った、ということなので。そこは承知しています。

――U-23の選手がどんどんトップに上がっていくとU-18の比率が高まりますね。
中村忠U-23監督 けが人の部分もあるし、必然的に。もともとプロ選手だけで(J1とJ3の)両方を戦えるかと言ったら現状無理じゃないですか。さいわい、ユースからトップに上がる選手も決まったわけですし、クラブの方針として、来年のことを考えて二年生の選手を2種登録してU-23に参加させることになっている。
ただJ3に出ている以上は、そうしたなかでも勝たなくちゃいけない。もっと結果を出す、勝ち負けのところにもこだわらないといけないと思っているし、でももっと個々のところにアプローチしなきゃいけないとも思っているし。
プロ選手の優先順位が高いんですけど、ユースのなかでも可能性がある選手との逆転現象が起きてもいいな、と思いながら。

――鍛えながら勝つというのがおもしろいところなのかな、と。
中村忠U-23監督 そうですね。(常時各所からの選抜で)チームとして難しい部分があるかもしれないんですけど、結局は一人ひとりが力をつけて、100パーセント力を出せれば、試合に勝てると思うし、その積み上げが成果になっていくと思うので。

――では、Y.S.C.C.との試合に向けての意気込みをお願いします。
中村忠U-23監督 多くのファン、サポーターのみなさんに、観に来ていただきたいです。そのためには試合で勝つという結果をお見せしないといけない。ユースとかトップとかに関係なく、一人ひとりが躍動感を持って100パーセントの力を出すことが必要だし、ぼくはその力を出させるように持っていかないといけないと思います。
観に来ていただいて、おもしろいゲームができれば。ホームですから、勝たなくちゃいけない。前回のホームでは勝ちましたが、前節のアウエーで負けていますからね。こういうゲームにチームとして勝つことで個人として力をつけていくうえで自信になったり手応えを感じたりするものですので。
(以上)

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他の記者をまじえて2on1となった延長戦のなかから、ふたつほど。

◯今シーズンの目標

――J1が終わったあとにJ3がつづいていると張り合いが出ますよね。
中村忠U-23監督 そうですね、J1が終わったあとにどういうふうにしていくか。そこはクラブとして天皇杯も含めて考えるところだと思います。
あと3カ月、ぼくらは元旦まで行くつもりでやっているので。ことしあと3カ月、ひとりでも多くJ3からJ1に出られるようになればいいと思うし、J3の試合で結果を出したところを喜んでくれるファン、サポーターも、J3で観た選手がJ1で出るようになればおもしろい。
ちょっと厳しくなってはきましたが、リーグ戦の目標は当初から掲げているガンバ大阪とセレッソ大阪を含めた3チームのなかでいちばん上に行くことと、ひと桁順位。そこはブレずにめざしていきたいと思います。

◯がんばれタスク!

――チュウさんはよく「行けるよ行けるよ!」などと声をかけてモチベーションを上げるような指導をしていますが、やはり刺激を与えたいという思いが強い?
中村忠U-23監督 タスク(平岡翼)がいちばんわかりやすい例で、あれだけスピードを持っていたら仕掛ければ何かが起こるのに、すぐコントロールで尻を向ける。昨日もきょうも(練習で)スペースがある1対1で、仕掛ければいけるところ、仕掛けられないボールの受け方をしたりもしていました。でも、若い選手はチャレンジしないといけないじゃないですか。チャレンジしようとしない選手になってほしくない。それは(一度チャレンジしてみて)そのあとの話だと思うんです。
がむしゃらに前、前ということではないんですけど、相手にとって怖い選手になってほしい。なんとなく巧い選手はいるけど、そこから先に行くには何か特長を持っていないといけない。ドリブルがあまりできない選手に「行け行け」とは言わないですよ。行けるのに行かない選手はもったいない。
J3やユースの年代はまだそれ(無鉄砲な挑戦)ができるんですから。

 

 

 

 

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