【有料記事/J3第28節第3報】台風一過。久保建英デビューの嵐が過ぎたあと(2016/11/06)
“お祭り”が過ぎ、ほっとしている。
われらがタケフサのプロデビュー戦に、7,653人ものお客さんが集まった。これはもちろんFC東京U-23の今シーズン最多入場者記録だ。メディアも日本代表戦のように多く、ミックスゾーンは押し合いへし合い。スタンドのFC東京ファンからは「ほかの試合にも来いよ」という意味の野次が飛んでいたが、これはもちろん久保建英を目当てに来た取材者を指したものだ。この先こういう“イベント”があるとしたら、それは久保がJ1デビューを果たすときなのだろうか。もしかしたら、J3出場の度にこの状態がつづくのかもしれない。そうなれば、興行としては楽しい反面、仕事をする身としては少々おそろしい。
私が駒沢オリンピック公園総合運動場陸上競技場に着くと、既に多くの報道陣が玄関でTVカメラとスチルカメラを構えていた。自分もカメラの放列に加わり、入場してくる両チームを撮影する。久保と目線が合う。ウオームアップのときも目が合ったが、SDカードを入れ忘れていて保存できなかった。あわててSDカードを入れ直す。
選手入場の際には、当然のようにカメラマンは総出で先発メンバーの集合写真そっちのけで久保が品田愛斗、高瀬和楠とイチャコラ? するベンチを写すことになるが、これはある程度のところでFC東京広報がきちんと区切る。広報スタッフは、いつも以上に膨れ上がった報道陣に対し、試合終了後の記者会見場とミックスゾーンでの取材、最後の撤収にいたるまで、現場の統制をとるべく、しっかり気を遣っていた。
中村忠監督によれば、事前に何分間、どういうポジションで出場させるかは決まっていなかった。2点ビハインドの状況で、セカンドハーフ開始からの起用を決断したのだ。グラウンドにいるカメラマンからは、ロッカールームを行き来する「50」の背番号が見える。通路を賭け、スタンド下からピッチに向かい姿をあらわすと、ごく自然に発生した拍手と声援が響いた。あきらかに救世主を迎える期待を含むそれらが、なんとも形容し難い空気を醸し出す。未来ある若者の門出を祝いたいという気持ちだけでなく、同点、そして逆転に導くヒーローになってくれという願いがこもっているように感じられた。
「初めてだったので、すごく緊張しました」と久保は言うが、緊張しているようには見えなかった。
「すごく技術が高く、判断がいい」
平川怜の久保評だ。これに尽きる。しかしこのよさを発揮させない要素がプロのピッチにあった。言うまでもなくフィジカルの差だ。AC長野パルセイロの屈強な選手を相手にすると、
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