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【無料記事】大久保嘉人「勝ちたいね、マジで」闘気をまとう新生青赤軍団、東北東に進路を取れ(2017/02/24)

非公開練習を終えたFC東京は2月24日午後、遠征地の茨城県鹿嶋市に向けて出発した。恒例のファンとのふれあいはお休み。選手が取材に応じる姿にも厳粛な空気が漂う。大久保嘉人は、勝負に徹する者の形相になっていた。

ことしの元日には川崎フロンターレの一員として鹿島アントラーズを相手に苦杯を嘗めている大久保だが、リベンジという気持ちはさらさらない。
「やり方がちがえば感じ方も変わるんですよね。新しいチームでメンバーも変わって、開幕戦で絶対に勝ちたいという気持ちしかない」
あるのは、FC東京の一員として鹿島に勝ちたいという思いだけだ。

大久保の献身性に、篠田善之監督も目を細める。
「トレーニングで献身的に動くし、ゴールに向かう姿勢をいつも見せている。それはわれわれにとってはプラス材料で、それに引っ張られてそういうところ(同じ境地)に行けばいい。今後は嘉人の出来不出来を見極め、(出場が)スタートかあとかということもあるかもしれないが、彼の存在が大きいことはまちがいない」

始動から1カ月半。まだ発展途上であり完成しているとは言い難く、既に公式戦を二試合消化している鹿島とは経験値の点でも差がある。しかし大久保はそうした事情をまったく意に介さず、開幕の不安や緊張は微塵も感じさせなかった。
「やってみないとわからない。練習試合しかしていないから。こっちはフレッシュで、ぶつかっていくだけ。おれは全然心配していない。守るときはしっかり守って。いつかチャンスは絶対に来るから、そのチャンスの数を一回、二回じゃなくて、増やしていければ問題ないと思う。
勝ちたいね、マジで」

例年通りのゴール数を記録するとするなら、2試合に1点のペースで大久保は決定機をものにするだろう。そしてそのゴールをアシストする可能性が高いのは太田宏介だ。
「おととしは5試合くらい出ていない(※欠場が4試合、半分出場が2試合)なかで13アシストの数字を残したから、それ以上はマストだと思います。特に、優勝に導くにはもっともっと得点にかかわらないといけないと思うし、(昨年は)セットプレーからの得点が少なかったぶん、ことしはセットプレーで怖いチームになりたい。きょうのフィーリングも抜群でした」
仮に15アシストなら、ほぼ2試合に1アシストのペースだ。過日、渋谷で開催されたトークイベントで、大久保が稼ぐゴールの半分をアシストしたいと言った、あの言葉が重なる。

太田はディフェンダーとしての自覚ものぞかせた。
「相手に関係なくFC東京はまず守備からというところがある。失点をゼロに抑えることはもちろん、鹿島は個の力を持った選手が多いのでそこをケアしながらチームとして守れればと思います」
個々に強くとも、それだけでは守れない。昨年もゴール前に守備の人数が揃っているのに失点を喫してしまう場面があった。この点を危惧してさかんに「ユニットをつくる」と言い、守備組織の整備に努めてきた林彰洋は、同様の言葉を繰り返した。
「しっかりユニットを組めれば強固な守備は形成できるんじゃないかと思います。バラけるときほどチームは弱くなる。どれだけ統一できるか」
ディフェンス陣だけの問題ではない。たとえば、前はプレッシャーをかけにいきたい、うしろはブロックを組みたいという分裂でも、組織的な守備は崩れうる。いかに全体の意思統一を図るかは重要な問題だ。
篠田善之監督は「まとまりが出てきて、いい状態で開幕の準備ができた」と言う。その言葉を信じたい。

リーグ優勝を宣言する豪胆さの底には、昨年の反省がある。上位に立ち向かっていく立場だからこそ、下を向かず、強気を身にまとうのだ。
「自分たちはあくまでも挑戦者。アウエーで叩いていいスタートを切りたいと思うし、インパクトの残るゲームをしたい」
太田はこう言った。鬼門でありつづけてきたカシマで、いかに気概を見せられるか。王者を前にした開幕戦でのふるまいが、新生青赤軍団の今後を左右する。

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