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【新東京書簡】第十九信『苦難のあとに来るもの』後藤(2017/05/31)

“ヨネ”に笑顔が戻ってきた。

第十九信 苦難のあとに来るもの

■味スタから病院へと直行

いやあ海江田さん、まいったよ。選手でもないのに味の素スタジアムから救急搬送されるなんてめったにない経験のおかげで、日々のレポートに穴を開けてしまった。
お医者さんにも当然「何か兆候はありましたか」と訊かれるけれど、そのときになるまでわからないもんだね。
試合はJ1第11節のFC東京vs.柏レイソル。その時点で4位の東京が5位の柏を迎える重要な一戦だったんだけど、前半20分すぎくらいから急激に体調が悪くなり、座るのがつらくなってきた。前半33分、手塚康平にスーパーなミドルシュートを叩き込まれて以降はメモがない。もうペンを動かすことができる状態じゃなかった。
ハーフタイムに記者控室へと下がってもいっこうによくならない。医務室へ運んでもらう頃には大量の汗を流して悶絶していた。スタッフの方や記者仲間にも荷物を片付けてもらったりと、迷惑をかけてしまった。あとで聞いたところではみんな「やばい」と思っていたようだ。
きっとすごい顔をしていたんじゃないかな。味スタのお医者さんは「いくらでも悪いことは考えられる」と言うし、そのときも平熱を下回っていた体温は、救急病棟に担ぎ込まれたときには35.7℃にまで下がっていた。
早いところ痛み止めを射ってくれないかと思うんだけど、たぶんはっきりとした診断を下すまではできないんだろうね。薬をもらったのは1時間以上激痛に耐えてからだった。それでかろうじて歩けるようにはなったけれど、まだ痛いんだよ。それでも「入院の必要なし」ということで1時間近くかけて徒歩と電車で帰り、夜、もう一度薬を服用して寝た。それで翌日、近隣の町医者で治療方針を決め、約一週間の投薬でどうにか治った――という次第。まだちょっと違和感はあるんだけど、健康のありがたさをあらためて感じたね。食生活もがらっと変えて、しばらく酒は呑まないようにしている。

さんざんお医者さんに驚かされて思ったのは、では仮に最悪の事態だと考えて思い残すことがあるかというと、じつはあまりなかったんだよね。そっちのほうが驚きだった。仕事も娯楽もある程度やりきって人生に満足してしまっているのかどうかはわからないんだけど。
今後ライター業を営んでいくうえで無欲な状態がいいとは言えない気がするから、自分で自分に火を点ける必要があるかなとも感じてはいるよ。

■選手を励ます力

翻って自分が取材している選手たちは、

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