【無料記事/天皇杯2回戦第4報】コラム◆気になる「停滞感」(2017/06/22)
攻撃も守備もあらゆるものが表裏一体で連動しているサッカーだからこそ、直接の原因以外に、あれが影響したのではないかと気になることがある。
なぜFC東京はAC長野パルセイロに敗れたのか。辿っていくと何が見えてくるのか。
篠田善之監督は天皇杯2回戦後の共同記者会見で「得点を挙げられなかったこと、あるいは前半始めの停滞感はいただけなかった」と問題点を挙げたが、その停滞感を生んだ要因について訊ねると、次のような答えが返ってきた。
「ボールへのアプローチが引いてから出ていくタイミングがうしろと前とで合っていなかった。後ろは『行くな』と言い、前は行こうとするけれど止めると言う。開いたセンターバックにワイドの選手がアプローチに行くタイミングが遅いために引かざるをえなくなった。そこで押し出すこと、またはスライドしていくことを、チーム全体としてトレーニングでやってきましたが、それが出せなかった。そこにひとつの原因があるのかと思っています。自分たちがボールを握っていれば、今度は逆に長野さんを押し込んで狭いスペースを突いていきましたけれども、こじ開けることができなかったと思っています」
つまり、ボールを支配して攻め込むことができず、長野に先手を取られ、攻め込まれて、ボールを奪い返すところからスタートしたことで停滞し、攻撃にも悪影響が出たということになる。
押し込まれる時間帯はファーストハーフだけでなくセカンドハーフの冒頭にもあったが、それによってエンジンのかかりが遅くなり、先制点を獲る時間帯も遅くなり、終了間際に同点に追いつかれ、延長戦へともつれ込むことを許したのだとすると、やはり、いわゆる試合の“入り”の失敗が、最終的な結果に影響したのではないだろうか。
長野の浅野哲也監督は、延長後半に入る前に、守備的な布陣で守りきることを優先し、得点できずPK戦に入った場合のことも想定していた。第3報までをお読みいただければわかるように、長野にはそのための備えがあり、自信もあった。延長戦に持ち込まれた時点で、東京が3回戦に進出する可能性はかなり下がっていた。
正直なところ、どちらがJ1かわからないような前半30分までの戦いぶりを観て不安をおぼえていた。その時間帯に1点、2点を獲っていれば話はまったくちがっていたが、最初に決定的なシュートを撃ったのは長野の塩沢勝吾だった。
リーグ戦の会見でも聞いたことのあるキーワード「停滞感」。今後を考えるなら、この現象は解消していかないといけない。
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「クラブ経営から監督目線の戦術論、ピッチレベルで起こる試合の描写までフットボールの醍醐味を余すことなく盛り込んだ近未来フットボール・フィクション。サイドストーリとしての群青叶の恋の展開もお楽しみ」
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