【無料記事/J3第21節第1報】ジャキットJ3デビューも実らず、エクスキューズが山ほどある東京五輪世代only版FC東京「U-20」の大敗(2017/09/02)
9月2日、FC東京U-23は愛鷹広域公園多目的競技場でJ3第21節に臨み、アスルクラロ沼津と対戦、5-0で敗れた。開始7分にスローインからの流れで青木翔大にヘディングでの先制ゴールを許し、1-0とリードされた東京だったが、沼津の圧力に慣れ始めた前半20分の品田愛斗の左コーナーキック以降は持ち前のテクニックでボールを支配。しかしこの時間帯にゴールを奪えなかったことが敗戦の布石になった。
前線中央でボールを収めるため、セカンドハーフの開始から東京はリッピ ヴェローゾに替えて長身の原大智を投入。さらに3-1-4-2から前線のかたちを変え3トップを形成して同点に追いつこうと、この試合がJ3デビューとなるジャキットをスタンバイさせていたときに右コーナーキックから失点。その直後にジャキットを送り込み、原、久保建英との3トップに移行するが、失点が尾を引く状態での布陣変更も影響したのか、正常化には程遠い崩壊状態となり、結局後半17分の2失点めから15分間で立てつづけに4失点。前半は技術を見せていた久保も後半は完全に抑え込まれて見せ場は後半29分のシュートのみ。原も持ち味を活かせず、無得点のまま敗れ去った。
なぜこれほどの大敗を喫したのか。原因を紐解いていけば、同情できる理由がいくらでも挙がる。育成向け臨時編成チームの難しさが一挙に噴出した試合だった。たしかによくない内容であり、選手個々の実力が不足していたことも確かで、彼らの精神面を責めることもできようが、おそらく選手だけの責任ではない。
ユース同士であれば非常に連携のいいFC東京U-23は4バックでも十分に戦えるチームだが、トップチームに選手を送り込むためにはトップと戦い方を揃えなければならない。そうして3-1-4-2を初めて採用した第19節ではカターレ富山に1点ビハインドから2点を獲っての逆転勝利を収めた。この試合には山田将之、小川諒也、柳貴博がいた。単独で戦える山田、パワフルなウイングバックの小川と柳が効いていた。しかしこの第21節にはその3人がいない。先発平均年齢は17.91歳で、最高齢はジャキットとリッピ ヴェローゾの20歳。全員が東京オリンピックの出場資格を持つ世代だった。この日のFC東京U-23は実質的にFC東京U-20だったのだ。
高い技術を有していてもスピードとパワーで沼津に劣っては1対1に勝つことは難しく、3バックには不向きな編成が一種の足かせとなっていた。
トップチームでも頭の痛い問題となっているウイングバックは、前節、左で守っていた岡庭愁人を本職のサイドに持ってくることで右に関しては解決したが、左がいなかった。そこで白羽の矢が立ったのが品田愛斗だったが、これが「生まれて初めて」というウイングバックを満足にこなせるはずがなく、ウラをとられてサイド攻撃を許す展開がつづき、ウイークポイントとなってしまった。
その品田に替わって送り込まれたジャキットが機能しなかった。2シャドーを組む久保と左右を入れ替えたり、中村忠監督が「ゴール前!」と、ゴール前中央に入っていきフィニッシュに関わるよう指示するが、ベンチが意図したとおりの動きができず、戸惑いながらプレーしている様子が傍目にもあきらかだった。
小平での練習を見るかぎり、足許にボールが入ったときの技術は優れている。しかしその技をいつ、どこで、どのように使うかがわからなければ有効なプレーはできない。真面目な性格ゆえ、プレスバックなどに積極的で、チームへの献身に疑いはないものの、コミュニケーションの難しさから戦術理解が行き届いていない。
前日練習もなく岡崎慎の両隣をFC東京U-18の長谷川光基と草住晃之介が守る3バックにいたっては、無失点で終えろと過剰な期待を寄せるのも酷なほどの即席ぶりだった。
臨時の選抜メンバーで戦うかぎり、戦術的に突き詰められない領域がどうしても残る。それを承知で戦うチームがFC東京U-23だが、現在彼らが置かれた状況は自助努力でなんとかなる範囲を超えている。
それでも、興行としておこなわれる公式戦である以上、言い訳はできない。この敗戦をむだにしないためには、上のカテゴリーとの対戦で通用しなかったプレーを選手個々が反省し、向上に努めていくほかはない。
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◆書評
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「近未来の東京を舞台にしたサッカー小説・・・ですが、かなり意欲的なSF作品としても鑑賞に耐える作品です」
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「クラブ経営から監督目線の戦術論、ピッチレベルで起こる試合の描写までフットボールの醍醐味を余すことなく盛り込んだ近未来フットボール・フィクション。サイドストーリーとしての群青叶の恋の展開もお楽しみ」
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