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【無料記事】「安間さんのために戦う」大久保嘉人、ラスト9に向け安間監督と歩む覚悟を決める(2017/09/14)

「安間さんのために戦う」。大久保嘉人は言葉を絞り出した。

「安間(貴義監督)さんは9試合で終わりやろ? そうでしょ? そんなこと言われたら──オレたちも燃えますよね。安間さんのためにやりますよ」

FC東京が最悪の状態で、かつ今シーズンがあと9試合しかなく、当初は立石敬之GMが自ら指揮を執るという話まであった状況で、急遽、仕事を引き受けた安間貴義監督のために戦うと、大久保嘉人が言葉を絞り出した。

「やりますよ。攻撃のための守備をする、そういうサッカーで、前のほうにタレントが揃っているし、前(の機能性)がよければうしろもいい。そこに向かっていますからね、みんながね。いいモチベーションでみんなやれている」

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ヨシトが「安間さんのために戦う」と言っていたことを伝えると安間監督は「嘘でしょ(笑)」という反応を返してきた。
「いや、ここの選手がそんなことを言うはずがない。(や、でもさっき言ってましたよ)え? ほんとに? ──────そうですか。ありがたいですね」

「あらためて確認しますが、9試合に全力を尽くすんですか」と訊ねると、安間監督の顔が引き締まった。
「ぼくはどこに行っても全力でやってきた。だからこうして仕事をもらっている。たぶん彼らはぼくがマッシモ(フィッカデンティ)のときの第三、第四コーチのときも全力でやっている姿を見ているから、そうやってぼくが先頭に立ったときに反応してくれているんだろうと思います。急にはみんな動いてくれないと思いますよ。ぼくは常にサポーターのみなさんに対して、サッカーに全力の姿勢を見せてきたし、いまも見せようとしているから、反応してくれている。だけど気持ちだけじゃ勝てないのがプロだから、こうしていこうというものを明確に示しながら、つくり上げていこうというものをつくっているから、みんなが反応してくれているんだと思います」

“安間流”が明確にあらわれているのは練習時間だ。前日もその前の日も練習時間は短かったが、きょう14日もミーティングを終えてからの全体練習の時間は1本のゲームを含めて1時間弱と短かった。これについて、安間監督は「じつは負荷はかかっているんですよ」と言う。

「試合ばかりじゃないですか。ボール廻しをやって、ゲームをやっているから。昨日も午前中に20分やって、午後に20分と15分。この(暑い)時期にゲームを(絶えず)ぽん、ぽんとやっている。だから中身は濃いと思います。順番待ちしている時間もないわけだし、最初から最後までずっと動きっぱなしで終わっている。量はある。やっていることが多く、同じ方向を向いているから、ぼくが指示しようとしたときに選手のみんなから話が出て、ぼくが話す時間がなかった。昔のJ3みたいになってきていますね。みんなでひとしきり話し合ったところで、ぼくのほうから確認するところ、トライするところを提示している」

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まだ一試合も公式戦を戦っていない現在、彼らがほんとうにまとまっているのか、モチベーションが高まっているのかはわからない。ピッチ上にもまだ劇的と言えるほどの変化はない。しかし変わろうとしていることだけはわかる。

フォワードの観点からは、3-4-3を採用した戦い方は好ましいものであるようだ。大久保は言う。
「試合をやってみないとわからないけど、すぐ前に預けてくれるし、そうなればスムーズになるしバランスがとれる。うしろが全部やろうとしなくても、うしろはすぐ預けてサポート、そうしてディフェンスを拡げて空いたところに(ボールを)つけていく。みんなが止まっていたらサッカーはできない。もともと止まっているチーム、それを安間さんはなくそうとしている。動かないと何も始まらない。引きつけられないし、みんなが1対1のままでは崩せない。ことしの前の面子(めんつ)を見ればそうなるし、うしろの選手も前向きにやっている。いい方向に進めばいいですね」

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足許でボールを止めてから動くのは静止画のサッカーだろう。しかしある瞬間の前後何フレーム、数秒間を一連の動きで捉えなければいけないのがサッカーだ。いままで不足していた個人戦術を補完、時間と空間を把握し、予測して優位に立てるようにしなければならない。おそらく安間監督のサッカーはその方向を向いている。

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その動きが身についてきているのか、大久保に訊いた。答えはこうだった。
「すぐにはできない。いままで止まっていたのに、急に考えて動けと言われても難しいとは思う。サッカーは考えて動かないといけない。ただ13km(一試合辺りの走行距離)を走るということはできるんですよ。みんな走れる。でも一瞬、一瞬、大事なところに走る。質にこだわる。そういうところが大事になってくる。安間さんはそういうサッカーをしようとしているから、みんなが前向きに取り組んだほうがいいと思うし、実際に前向きに取り組んでいる。たぶん、サッカー寿命も長くなると思います」

変わろうとしたから変身でき、ベガルタ仙台に勝てるだろうと思うのは、さすがに楽観的すぎる考えだ。しかし次の試合で勝てなかったとしても、その次には必ず勝つと言えるような芽を示すことだけは、最低限やるべきだ。クラブの根本を変えられなくとも、現場にできるかぎりの努力はしてほしい。「安間監督のために」。その気持ちを失わず、シーズンの最後まで走りきりたい。

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◎後藤勝(ごとう・まさる)
東京都出身のライター兼編集者。FC東京を中心に日本サッカーの現在を追う。サカつくとリアルサッカーの雑誌だった『サッカルチョ』そして半田雄一さん編集長時代の『サッカー批評』でサッカーライターとしてのキャリアを始め、現在はさまざまな媒体に寄稿。著書に、2004年までのFC東京をファンと記者双方の視点で追った観戦記ルポ『トーキョーワッショイ!プレミアム』(双葉社)、佐川急便東京SCなどの東京社会人サッカー的なホームタウン分割を意識した近未来SFエンタテインメント小説『エンダーズ・デッドリードライヴ』(カンゼン)がある。2011年にメールマガジンとして『トーキョーワッショイ!MM』を開始したのち、2012年秋にタグマへ移行し『トーキョーワッショイ!プレミアム』に装いをあらためウェブマガジンとして再スタートを切った。

 

■J論でのインタビュー
「ライターと編集者。”二足の草鞋”を履くことになった動機とは?」後藤勝/前編【オレたちのライター道】

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