【無料記事/J1第26節Preview第3報】物理的に近く。心理的にも近く。チームになれるか、安間東京(2017/09/16)
「3-4-3」「ポゼッション」のキーワードが飛び交う、安間貴義監督新体制のFC東京。ボールを保持することは、攻撃の準備であると同時に、失点を減らすためのものでもある。ゴールを狙いはするが、闇雲に駆けて失点を招くような真似はしないのではないか。
髙萩洋次郎とボランチを組むとみられる橋本拳人は、安間サッカーの傾向を次のように語った。
「ロングボールよりもショートパスを安間さんは好むと思う。もちろん背後は狙いますけど、前に出しどころがなければ仕切り直してもいいという言葉はありました。焦れずにうしろで廻す時間は、以前より増えると思います」
そして前線、中盤、最終のスリーラインは接近する。
「うしろで持つことになると、3バックがひらいて、どこかにボランチが一枚落ちる感じになる。そして空いたスペースにフォワードが落ちる。そんなに間延びはしないと思いますし、空いたところに入ってくる繰り返しだと思うので、3枚が前に張ることはない。距離感はいいと思います」
ボランチが落ちるのは広島型3バックとの共通点だが、それはさておき、空いたスペースに選手が入ってくるという連環を選手が意識している点が興味深い。その動きがあれば11人はバラバラのままではなく、チームになれる。
東慶悟が出場する場合、3トップの一角に入る可能性があることも興味深い。ピーター ウタカ、大久保嘉人、永井謙佑が並べばスーパーだがうしろはスカスカになるとは、安間監督は何度も繰り返し言っていたことだ。2005年のヴァンフォーレ甲府で言えば、バレーと長谷川太郎がどんどん前に行く傍ら、右ウイングでは万能型の石原克哉が効いていた。今週の東京の紅白戦でも、東は右に入っていた。イメージが重なる。献身的な動き、ボール保持、守備でバランスをとる役回りだろうかと訊ねると、東は同意した。
「安間さんはぼくにバランスをとってほしいと思っていると思う。うしろと前のリンクマンじゃないですけど攻撃はそういうかたちでできたらと思うし、守備では切り換えは自分がやらないといけない。ぼくひとりでも帰ることができれば8人で守れる」
得点源のストライカーに、フィニッシュに集中してほしいのはたしかだが、しかしある程度はフィニッシュ以外のタスクもこなしてもらわないと困る。ウタカは14日にその説明を受け、安間監督と長い時間話し合っていた。その役割分担の度合について、東の見解はこうだった。
「(ウタカ)ウタはストライカーとしてゴールを決めるのが仕事。このあいだの試合も決めたのはウタでした。最低限の守備は要求しないといけないと思いますけど、ウタのいいところを見て彼のためにみんながやることも必要」
仲間同士で補い合うには、まず仲間になっていなければならないが、控えや若手の選手にもチャンスを与え、ウタカにも伝えるべきは伝える安間監督の方針には、チームをチームたらしめようとする意志を感じる。
「ベンチに座るなかでも『よし、次がんばろう』と思える気持ちになっているか否か。僅差の試合ではそういう選手の活躍によって勝負の行方が変わってくる。そういうマネジメントを安間さんはやってくれていると思う。それに応えないといけない。それが厳しくてシノさん(篠田善之前監督)も難しくなっていった印象なので、もう一回ひとつになることが大事だと思います」。
物理的にも、心理的にも選手同士の距離を近づける安間監督。もうバラバラになったチームは見たくない。11人、18人、チーム全員の気持ちを揃えることは容易ではないが、それでも東の言うように、ともに戦おうとする姿勢がなくてはいけない。
安間監督のことだから、先発メンバーは予想どおりというわけにはいかないだろう。どうまとめてくるか。絶えず変動するダイナミズムが働き始めた安間東京の時間は、小平から味スタまでつながっている。
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