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【山形vs湘南】レポート:システムのマッチアップを優位に導けず。序盤の2失点が響き、今季ホームで初黒星。(2292文字)

■2015明治安田生命J1リーグ 1stステージ第4節
4月4日(土)山形 1-2 湘南(14:00KICK OFF/NDスタ/7,321人)
9′ 高山薫(湘南)、25′ 藤田征也(湘南)、45+2′ ロメロ フランク(山形)
公式記録はモンテディオ山形公式サイトをご覧ください
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「システムが一緒だからよ。強い方が強いんだよ。システムの違うところをどう突いていくかというのが戦術。同じシステムだったら強いほうが勝つ」

昨年、J2での対戦成績はモンテディオの2戦2敗。ただし、それは昨年開幕からの4-2-3-1で戦っていたときのこと。2度目の対戦直後、第30節・水戸戦から導入した3-4-2-1で湘南に相対するのは今回が初めてだった。その点について聞かれた石﨑信弘監督の答えが冒頭のものその一方で、こうも話していた。「ただ、内容としては2試合ともウチのほうが良かったからね」

4月最初のNDスタは、掲揚台のフラッグが激しく翻るほどの風が、2つのチームをはっきりと「風上」「風下」に分けていたが、それはそのまま「優勢」「劣勢」の状況と一致していく。局面で人がハマる状態をつくり、ボールにプレッシャーをかけたいモンテディオと、マイボールにした直後からシンプルにボールを動かし、ボールにも人にもプレッシャーがかかる前に攻めきりたい湘南。序盤のせめぎ合いは、風上の湘南が。その最初のケースが3分の場面。ボールを収め前を向いた菊地俊介がドリブルで中央を持ち運び、外の遠藤航からニアの藤田征也がシュート。このとき、藤田はペナルティーエリア内でマークが付いていない状態だった。

前線では連動したプレッシャーがかからず、セカンドボールの奪取率でも上回られ、前線からのプレスバックも遅れがち。ボールに気を取られて人の動きへの対応が遅れる場面も各所で見られた。人数をかけ、次々にフリーの選手にボールをつなぐ湘南の攻撃にモンテディオはバックラインを下げての対応が多かった。「立ち上がりは球際や1対1の出足の速さ。全てにおいて相手が上回っていたと思います」と話したのはボランチの松岡亮輔。川西翔太の負傷欠場により、ロメロ フランクが自身J1初のピッチを踏んでいたが、ボールを操る時間よりも自陣方向へ走らされる時間が圧倒的に多かった。

それでもゴール前では体を張ってしのいでいたが、9分、思わぬプレーから失点する。湘南のキーバーが自陣から蹴ったフリーキックが風に乗り、大きく一つバウンドして石川竜也のもとへ。石川はここでGK山岸範宏へのバックパスを選択するが、このパスがズレ、チェイスしてきた高山薫に決められた。相手のプレッシャーがあることは認識していたが、ペナルティーエリア内でのキャッチや場合によってはクリアなど自ら処理することを視野にボールへ近づいた山岸と、高山に先に触られるリスクを感じ、山岸がクリアしやすいスペースへボールを供給した石川。その齟齬が突かれた形だった。

この湘南の先制点から16分後、流れを覆せないまま、今度は2失点目を喫する。ボールを持った右ウィングバックの藤田に対し、アルセウが対応したが、中央へくさびを入れたあと、そのままボールサイドに絡んでいった藤田をケアする選手はいなかった。

「もっと自分たちもシンプルに裏に行っても良かったんじゃないかなと思います。相手の戻りも早かったですし、それに対して足元足元ってなってしまった部分もあると思います」と前半の攻撃を振り返ったのは舩津徹也。バックラインを押し上げた湘南の裏には広大なスペースが見えていたが、裏への動き出しを持ち味とする山﨑雅人を擁しながらそれを突けずにいた要因もあった。西河翔吾は「ザキさん(山﨑)とかも、もっとクリアを大きくしていいよと言うんですけど、クリアを大きくしているつもりでも戻されました」と風の影響に言及している。

そうした状況のなかでも、2失点後に松岡や舩津がマークを外した状態でシュート態勢に入るシーンもあったが、いずれも枠を外れている。それでも、アディショナルタイムに入り、コーナーキックのクリアボールを拾ったロメロ フランクが左に回り込み、角度のない位置から放ったシュートがようやくゴールマウスをとらえた。「とりあえずセンタリング気味に上げようと思ったんですけど、相手にうまく当たったので良かったと思います」(ロメロ フランク)

1点差に戻して臨んだ後半は風上に立った。ポジションの修正を図り、林陵平選手の投入で収まりどころが増えたことで、形勢は逆転。「後半は風上に立ったこともあって、非常に全体が前へ前へという、チャレンジする姿勢を持って試合に入れたと思います」(山岸)とシュート数も増やしたが、キム ボムヨンのクロスに林が合わせた77分のシーンや、投入直後、やはりキムのクロスにヘッドで合わせた中島裕希の86分のシーンでも決めきれず、ビハインドからスコアを動かすことができないまま、試合終了となった。

「もうちょっと、状況に応じて判断を変えていかなければならない。特に相手が前からかかってくる場合に、バックパスばかりしていると相手の思う壺になってしまう。そういうところの判断を、特に立ち上がりは意識していかなければいけなかったと思います」。結果として取り返せなかった序盤を、石﨑監督が振り返った。開幕から2試合は終盤まで無失点の状態を保ち、3試合目の川崎F戦ではクリーンシート。守備では一定のラインをクリアしていたチームが、この試合では立ち上がりに乱調し、序盤で2点のビハインドを背負った。1週間前のヤマザキナビスコカップでも、水が撒かれた滑るピッチへの順応の遅れもあり、前半に先制点を奪われている。

「自分たちのようにJ2から上がったチームが先に失点してしまうとかなり苦しくなる」(石﨑監督)。試合日程が混んでくる時期は抱えた課題がクリアできないまま、ズルズルと他のチームに水を空けられやすい。簡単に失点しない体質を作るため、いまが踏ん張りどきだ。

(文=佐藤 円)

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