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【ランダムフォーカス】PKキッカー~大黒選手と川西選手

手応えと悔しさの入り混じったC大阪戦の翌日、先発組はいつものように軽めに体を動かし、練習場を後にしました。すると、引き上げていく川西選手を石﨑監督が呼び止め、なにやら話し始めます。そこへ、囲み取材を終えた松岡選手も呼び止められて合流。さらに間もなく大黒選手も参加。関西色濃いめのトリオと監督とで、しばし四者会談が行われていましたが、ふと、大黒選手のこんな一言が漏れ聞こえてきました。

「こいつ、全然蹴る気がなかったから」

後で監督に聞くと、川西選手と松岡選手にポジショニングの確認をしていたようなのですが、そこへ大黒選手が入り、C大阪戦のPKの話になったようです。ご存知のように、76分の逆転弾となったPKは川西選手がもらい、大黒選手が決めました。でも監督は、「おかしいんだよな。PKをもらった人が蹴ることになってたんじゃけどな」と笑いながら首をかしげます。

監督によると、普段ならPKキッカーを担当するディエゴ選手が出場停止だったこの試合、もしもPKになったら誰が蹴るかは事前に相談してあったのだそうです。まず、大黒選手が「俺が蹴る」と立候補。監督からは「お前、この前の練習ゲームで外したやん」とツッコミが入りましたが大黒選手は「あれは練習ですから」と意に介しません。一方、鈴木雄斗選手も「俺が」と蹴る気満々。さらに川西選手も「俺に蹴らせて」と手を挙げ、最終的に3人で話し合い「PKをもらった人が蹴ろう」と決まったようです。

ところが、ソウザ選手に倒された川西選手が起き上がった時にはすでにボールは大黒選手の手に。その「任せとけオーラ」に、川西選手も安心してキッカーを譲ったのでしょうか。プレッシャーのかかる中、GKのキム・ジンヒョン選手の読みは当たったものの、大黒選手はそれをものともしないスピードのシュートをゴール左に決めてくれました。

鈴木選手が運び、川西選手がスペースに入って受けるところで獲得したPKを大黒選手が確実にフィニッシュ。結果的には、立候補した3人それぞれのいい仕事が、あのPKによる1点を完成させたと言えるのかもしれません。

文:頼野亜唯子

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