山梨フットボール

「イェ~イ」【無料記事 2017明治安田生命J1第20節 甲府vsG大阪 レビュー】

【2017明治安田生命J1第20節 甲府vsG大阪 レビュー】

◇2017年8月5日(土曜日) 甲府1-0G大阪(18:03KICK OFF/山梨中銀スタジアム/11,275人/晴/気温30.6゜C、湿度62%)

得点者:88´ウイルソン(甲府)

◇◇◇

ァンフォーレが勝つと機嫌よく過ごせることをすっかり忘れていました。試合後に出会う人みんながご機嫌で、「勝利っていいなぁ」と改めて感じたG大阪戦。これまでは、”今は耐え時”なんて物分りのいい感じでいたけれど、やっぱりちょくちょく勝てれば全てが丸く収まるというか上手くいく。勝利至上主義が廃れないのはよくわかる…。

ただ、吉田達磨監督の記者会はなかなかの赤裸々内容だった。その一つはココ。

えば横パス1本入れただけで前半20分過ぎから(スタンドから)溜息がもれますし、G大阪相手に攻撃が一瞬で終わる怖さを選手に伝えました。それでも早く攻めてほしいスタンドと(ボールポゼッションを)回復させないといけないことが頭で分かっている選手たちの(スタンドとの)プレッシャーの戦いが前半のおおよそだったのではないかと思います」

田監督の会見は、主語を抜いて話したり、体言止めが多かったり、接続詞を使って長くなったりで、文字に起こす時に切り貼りしたり、カッコで捕捉することが少なくないので、吉田監督の気持ちを正確に文字に起こせている自信はないけれど、ここの部分はスタンドに対する要求でもある。それも、主にメインスタンドとバックスタンドへの要求。最近はメインスタンドの溜息は少なくなっているように感じるけれど、対面のバックスタンドはメインよりも少し大きく感じる。吉田監督が気になっているのは、正しいチーム戦術に則って横パスやバックパスを使ったときにもスタンドから溜息が出ること。戦術的にサイドを替えてやり直すなど、必要な時もあるので、横パスやバックパスを目の敵にするような溜息やヤジはやめてほしいということだと思う。チーム戦術で横パスをしたのに溜息が降ってきたら選手はやり切れない…。もっとも見る側からすれば、チーム戦術と弱気の消極的パスの違いが全部わかるわけない…ということにもなるけれど、”疑わしきは溜息せず”で、お願いできればピッチとスタンドの関係は良好。

ッチの選手は何百、何千人の人が一斉に「ハァ~」や「あ~っ」って声を出せばしっかりと聞こえるし、気分のいいものではない。思わず出るもので誰も悪気があって溜息をついているわけではないけれど、ピッチの中の選手がサッカーを変えようと頑張っているのだから、中銀名物となっているスタンドからの溜息についても考えてもらえれば、もっといいエンターテインメント空間になるはず。せっかくの応援、サポートする気持ちが選手の心を挫くことに繋がっているなんてのは切ない。

う一つは「サポーターのリーダーの方と少しお話をする機会があって~」というくだり。少しきつく受け取ることもできる内容だったけれど、吉田監督と話をしたサポーターの人たちからすれば、「そういう言い方はしてない」というニュアンスの違いがある可能性は十分にあると少しは割り引いて聞いた。ただ、記者会見で話したことなので全文掲載した。鹿島戦の翌日のJ3長野とのトレーニングマッチ(7月30日)の日のことだと思うが、吉田監督の会見通りであれば、ちょっと厳しすぎる言い方。

11試合も勝っていないことは事実だし、6試合無得点で、リーダー格の人たちがヴァンフォーレ原理主義者の右派から左派までいるゴール裏をポジティブにまとめることは難しい状況だったということは想像がつく。ひとこと言わないと済まない状況だったのかもしれない。引っかかる言い回しもあるかもしれないが、この話し合いの後の試合で勝ったことで、お互いネガティブな部分は水に流して一丸になれればいいと…願うだけ。

田達磨という監督は甲府のクラブ規模や背景を考えてもそうそう出会える監督ではない。ちょっと踏み込むけれど、いろいろ気にしすぎるところはあるようには感じる。批判するつもりなく聞いたことが、「批判されたと聞こえたのか…」という感じの答えが返ってきたことは何度かあった。でも、そんなことは大した問題ではない。サッカーを見る目や現実的に戦術を落とし込む感覚や手法は相当に高い指導者。この監督を、ピッチ外のネガティブな要素をできるだけ排除して、サッカーに思い切り取り組めるようにサポートすれば2~3年後は凄いことになっていると思う。それがJ1の優勝争いなのか、残留争いに関係ない順位なのかは分からないけれど、手放せば絶対に後悔する質の高い監督。新しい家の蛇口は柏のように捻ればすぐにお湯が出る様な最新式ではないけれど、そういうことも問題なく受け入れてくれている。選手交代でも柏の監督時代はまず3枚使うことはなかったし――選手構成が違うので単純比較はできないけれど――先発を長く引っ張り過ぎる傾向もあったと感じていたけれど、甲府では柔軟にカードを切っている。新しい家でできることを受け入れて、新しい家があることを喜んでくれていると思う。

っと勝てるでしょ」という気持ちを持ちたくなる感じは分かるけれど、そういう時はクラブの立ち位置を再確認してほしい。どんなにファン・サポーターが応援してくれていてもクラブが舵取りを間違っていれば、何年も前からJ1に縁のないJ2の中位あたりでウロウロするクラブになっていた可能性は十分にあった。そういう立ち位置のクラブが、J1残留だけでなく、サッカーの質・内容のところを変えることまで託せるような監督にはまぁ出会えない。踏み込み過ぎた言い方になるけれど、吉田監督が柏か新潟で成功していれば甲府との結婚はなかった。与えられた材料で勝つことを考え・工夫することが上手い監督はそこそこいるかもしれないが、与えられた材料を磨いてより質の高い材料に変えながら料理を形にしていける監督はそうはない。でも、甲府はそういう監督と結婚することができた。これは僥倖だし、なんだかんだ言っても招聘した佐久間悟GMは運を持っている。運がなければ今頃、吉田監督はまだ新潟で指揮を執っているはず。ともかく、勝てないことやゴールがないことに対しての要求・批判をするにしても、試合内容の変化や進化を認めた上での要求・批判でないと切ない。G大阪戦後の記者会見を聞いて少し切ない気持ちになったので長々と講釈を垂れてしまいました…。

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