『アフター・アース』 – 中学生感覚ウィル・スミスがノートに映画の設定を書いてみたら・・・ (柳下毅一郎) -3,171文字-
監督 M・ナイト・シャマラン
脚本 ゲイリー・ウィック&M・ナイト・シャマラン
撮影 ピーター・サスキツキー
音楽 ジェームズ・ニュートン・ハワード
出演 ウィル・スミス、ジェイデン・スミス
ついにやってきた!バカだクズだシャマランだとなじられつづけたM・ナイト・シャマランの新作である。全国千百六十七人(推定)のシャマラニアンたちが待ち焦がれていたシャマランの新作。悪い男ほど女にもて、弱いチームほどファンが熱狂的になるように、世間からクズだ詰まらんとけなされるほどに忠誠度が高まるシャマラニアンたちだがその信仰が試されるときがついに来たのである。きみは見に行ったか? ぼくはもちろん行ったよ!
さて、舞台は千年後の未来。二十一世紀初頭、地球温暖化と公害その他で地球は人類の住めない場所になってしまった。人類移住計画の中心となったのが国際組織“レンジャー”である。彼らの手により、人類はノヴァ星系のノヴァ・プライムに移住した。だが、そこもまた人類にとって安住の地ではなかった。そこには先住の異星人が存在したのである。彼らは人類を駆除すべく、アーサ(URSA)なる巨大な怪物を作りあげた。目を持たないが、人間の「恐怖心」を嗅ぎとるアーサから逃れる術はなく、人類はふたたび絶滅の危機に追いやられる。だが、そこにあらわれたのが伝説のレンジャー、サイファ・レイジである。恐怖を感じない男サイファはアーサに「見えない」幽霊(ゴースト)と呼ばれた。レイジを総司令官とするレンジャーたちの力で、人類はふたたび未来への希望を取り戻しつつあった……
てなことが冒頭いきなりナレーションで語られる。で、その伝説のレンジャー、サイファ(ウィル・スミス)が乗った宇宙船が吹き飛ばされて、泣き顔をしたその息子(ジェイデン・スミス)が未知の惑星に放り出されるところからはじまる。うわー設定なげー! で、その設定を作ったのが原作:ウィル・スミス。
実はこれにとどまるものでなく、ノヴァ・プライムの社会構造とかアーサを生みだした異星人とかについても細かく設定されている。で、それがまたチョロい。たとえばノヴァ・プライムの三大権力は、科学を拒絶し、スピリチュアルなつながりに礎を置く宗教的指導者「プリムス」と科学を信奉する「サヴァント」、それに人類保護のため戦う「ユナイテッド・レンジャーズ」というのだが、なんというのか、いかにも中学生が頭で考えたような……そしてこの膨大な設定、映画にはまったく関係ない! ひたすらこの設定を延々ウィル・スミスがノートに書いてたのかと思うと……この無意味な設定に凝るのがまさに中学生感覚。「黒い中学生」というとウェズリー・スナイプスなんだが、ウィル・スミスも負けてないのでは……
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tags: M・ナイト・シャマラン SF ウィル・スミス 洋画
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