『カノジョは嘘を愛しすぎてる』 -少女漫画の映画化にしてはびっくりするほど高級感がない下町人情話 (柳下毅一郎) -3,440文字-
監督 小泉徳宏
原作 青木琴美
脚本 吉田智子、小泉徳宏
撮影 柳田裕男
音楽 岩崎太整
出演 佐藤健、大原櫻子、窪田正孝、谷村美月、相武紗季、反町隆史
「あのころのぼくはいつも不機嫌だったね……あのころ、ぼくは少しもきみのことが好きじゃなかった。ぜんぶ、嘘だった」
と佐藤健のモノローグではじまるこの映画。佐藤健演じるAKIは大人気のスーパーイケメンロックバンド、Crude Playのサウンドメーカー。もともとAKIは「クリプレ」のオリジナルメンバーだったのだが、メジャーデビュー直前に脱退、その後は裏方にまわって作詞・作曲を一手に手がけている影の男だ。どうでもいいがCrude Playは「クリュード・プレイ」と発音し、それでみんなクリプレクリプレいうのだが、それだったら(発音は [krúːd]ではないのかというのはさておいて)「クリュプレ」と呼んでくれないとどうも不安でならないのだがそれがゆとり世代の日本語なのか? ともかくそんなスーパーな男なので打ち上げにもヘリでお迎えされるくらいなのだが(冒頭、いきなりヘリが降りてくる場面ではじまるのだが、この場面の意味、原作コミック読むまでわからなかった)、普段は深川近辺の隅田川のほとりでラジコンを飛ばす毎日。今日も鼻歌を歌いながらのんびりラジコンを飛ばしていたら、果物を抱えた少女がどしんとぶつかり、周囲にレモンが転がる……
つい少女の腕をつかんで「きみ、一目惚れって信じる?」と言うと
「信じます! わたし、あなたに惚れました!」
と飛びついてくる少女。小枝理子(大原櫻子)は月島の八百屋の娘であった。
スーパーな男は変名を名乗り、さっそく幼なじみで親友のSHUN(ボーカル)に電話。
「うーん。キノコみたいな……マッシュルームみたいな感じの」と髪型でしか表現できないAKI。さすがに不安になったSHUNが大丈夫かと訊ねると
「オレは音楽に関係ない相手と付き合いたかったんだよ。好きになるよ、カノジョのこと、きっと好きになる」
というわけで渋谷タワレコで待ち合わせるAKI。やってきた理子は制服姿……高校生だった! 当然ながら理子がクリプレの大ファンだと判明してAKI大いに凹み、そこに理子の同級生のバンド仲間がやってきてAKIにライバル心をむきだしにするので、AKIと理子は手をとって逃げて駅南の東横線下のガードまで逃げて、そこではじめて「本当に良かったのオレで?」
「あなたの鼻歌に一目惚れしちゃったんです! せつなくて、なんか大声で歌いたくなるような……」
と歌いはじめようとする理子の口を押さえたAKI
「歌う女は嫌いなんだ……オレは音楽が嫌いだ……憎んでるって言ってもいいくらいに」
「泣かないで」
「え、泣いてなんかないよ?」
「でもこれから泣くんでしょ」
その言葉に釣られたかのように涙が……
理子、AKIを抱きしめて
「わたしが守ってあげる……すべてのものから」
ユーミンかよ!とAKIが突っ込むと。
「え、教科書に載ってた人だよ。ええと、松なんとか……」
これだからゆとりは!
えー、原作は「僕は妹に恋をする」「僕の初恋をキミに捧ぐ」の青木琴美による同名人気コミック。まあ人気なのだろうがぼくはまったく知りません。
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