『抱きしめたい -真実の物語-』 -北川景子のベストアクト、塩田明彦復活の一本 (柳下毅一郎) -3,064文字-
監督 塩田明彦
脚本 斉藤ひろし、塩田明彦
音楽 村松崇継
撮影 喜久村徳章
出演 北川景子、錦戸亮、上地雄輔、平山あや、佐藤江梨子、國村隼、風吹ジュン
この話は実話に基づく……
昨今この手の誰かが死んじゃう系ラブストーリーだと、まあだいたい身体か頭かどっちか悪い人が出てくるわけで、車椅子に乗った「記憶喪失の花嫁」となると「そうか頭も身体も悪いのか~」みたいな印象で臨むことになったのも無理のない話である。監督は『どろろ』でいろんな意味でミソをつけたかつての名匠塩田明彦。七年ぶりの監督作品ということで、どんなもんかと手ぐすね引いて出かけたのだが……
映画は北海道は網走市の地元アマチュアバスケチーム(網走アルカトラズ!)の試合風景からはじまる。雅己(錦戸亮)がファウルを受けてもみ合いになったところに乱入してきた子供が相手にかみつく。「ダメだよ~パパが反則負けになっちゃうよ~」「そんなの言っても聞くわけないじゃん。だってつかさの子供だもん」「そうだなハハハ」とか笑ってるけどどっちかというとしつけの問題のような気がするんですが~。打ち上げの席で「ママのお話しして~」とせがまれた雅己、つかさ(北川景子)の日記を取りだして読み聞かせはじめる。それは六年前のことだった……
というわけですでにヒロインが死んでいるところからはじまるこの話。愁嘆場で泣かせようとしないだけでもかなり好印象である。ことさらに障害を強調したり障害者がスーパー善人だったりすることもなく、等身大のどこにでもいる男女のラブストーリー。ここ数年見てきたこの手の映画の中では(これは信用してほしいが、ぼくはこの手の映画にはかなり詳しいほうである)抜群によくできており、たぶん北川景子のベストアクトでもある。もちろん字幕で登場人物の内面を説明する描写、あるいは雪の中で錦戸くんが号泣するくだりなど、ちょっと勘弁してほしい場面もある。だが、テレビ局制作のジャニーズ映画では妥協しなければならない部分もあるだろう。それ以外の描写は節度を保ち、笑える描写も適度におりまぜて、塩田明彦復活の一本となった。
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