柳下毅一郎の皆殺し映画通信

【無料記事】 [書籍発売記念!柳下vs松江哲明対談] 「2014年は『進撃の巨人』ですかね。期待作」(柳下)・「ホント健康にだけは気をつけてください」(松江) -ヒット作やベストテンからは見えない日本映画史

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書籍版『皆殺し映画通信がいよいよ発売となりました。
その書籍版では、柳下毅一郎と松江哲明さんの2013年の皆殺し映画大賞の選考の模様が収録された皆殺し映画通信特別対談が収録されています。
今回は、その対談の一部をピックアップしてWEBマガジン読者の方々に、特別にお届けです。

なお、来る3/23(日)には、高円寺バンディッドにて2013年皆殺し映画大賞 発表! ゲスト:モルモット吉田が行われますので、ぜひお越しくださいませ!

 

収録:2014年1月10日都内某所


 

柳下 キネ旬ベストテン、おめでとうございます。  ※収録は2013年キネ旬ベスト10の発表直後(編集部注)

松江 ありがとうございます。岩田さん(映画秘宝編集長)から「おめでとうざいます」とメールがありました(笑)。

柳下 なんでキネ旬じゃなくて秘宝から電話来るんだ(笑)

松江 誰よりも連絡が早かったです。さすが秘宝(笑)

FireShot Screen Capture #228 - '2013年 第87回キネマ旬報ベスト・テン|KINENOTE' - www_kinenote_com_main_kinejun_best10_2013_award編集 そのキネ旬のベストテンはコチラですが・・・。

松江 『ペコロスの母に会いに行く』っていうのがキネ旬らしい。

柳下 『舟を編む』。これもないよなあ。

松江 『さよなら渓谷』も残念でした。おっぱいはこのテーマには絶対に必要です。『八日目の蝉』も永作博美が乳首を隠すんですよ。誘拐した赤ちゃんが母乳を飲まないという大切なシーンで。あれは怒りを感じました。『さよなら渓谷』も絶妙なアングルでカメラが下りていくと、そこで脱ぎだす(笑) 真木よう子は、ちゃんと脱げる人だったんだけどな。それでも評価されて主演女優賞というのは納得いかない。

柳下 僕がベストテンに入れた中でここに入ってるのは『共喰い』と『フラッシュバックメモリー3D』。『共喰い』はよかったですね。それこそみなさんパンツをお脱ぎになって(笑)

松江 重要なところですよ。SEXの話はパンツを脱がないと。。役者がここまで脱ぐからこそ物語に説得力が増す。

柳下 今、脱ぐ脱がないって事務所が決めてるんだよね。TVのCMに出てる人はほぼ脱げない。女優だって馬鹿じゃないから、結構脱ぎオッケーの人はいるんですよ。でも本人がOKって言っても、事務所がNGだったりする。

 


柳下

柳下 いろんな映画があったなぁ。忘れるんだよ、皆殺し映画通信の連載の最初の頃のやつとか。ヒドイのがいっぱいあるんだよ。ひまわりと子犬の七日間とか(笑)

松江 はいはいはい、ありましたね。

柳下 何が一番ヒドイかって、『ひまわりと子犬の七日間』って七日間じゃないんだよ。七日間しかいられないとか言ってるんだけど、最初から3週間、21日なんだよ。それをさらに延長したりするから最終的に1ヶ月くらいいる。タイトルからして嘘(笑)

松江 最低限、嘘はつかないでほしいですね。

柳下 びっくりするからやめてほしい。きいろいゾウとか。これもヒドイんだけど、新しい靴を買わなくちゃの方がすごかったんで、そっちと比べると向井理まだまだだなって感じ(笑)向井理は弾けるかと思ったんだけど意外とこれ1本だけでしたね。一昨年の年末くらいは向井理が1番ホットだったんだよね。この手のヤバい物件として。今は誰なんだろうな。能年玲奈? じゃああれだね、『ホットロード』、あれはやばいと思う(笑)

松江 次の入江(悠)さんの『ジョーカーゲーム』は設定と規模を聞く限りは不安だけど、それを裏切ってくれるという期待を込めて。

柳下 なんで『ジョーカーゲーム』をやるのよ。

松江 入江さんは大きい物語への興味が強いんだと思います。日本映画でそこに挑戦する人もいないし。

柳下 あと俺的に2014年の期待は『進撃の巨人』ですかね。期待作(笑)。 あっ、それと『寄生獣』

 


 

柳下 オレは観たことないものを観たいていう欲望が最初にある。

松江 中毒者ですよ、その発想(笑)

柳下 これやってるとさ、行ったことない劇場とか結構行ってる。船堀シネパルとか(笑)。それは結構楽しいよ。

松江 映画よりも古本屋とか前後に食べたご飯の印象が残ったり・・・ありますね。

柳下 ヘンなとこでしかやってない映画とか観に行くのは、それはそれで楽しかった。こんな映画、観るまでもないとか言ってるけど、意外と発見はあったりする。めめめのくらげとか。村上隆ってキ○ガイだな、とか(笑)。 意外と好感を持ってしまったり。ダメはダメなりにやりたいことはあるんだな、と。そういうこともあるから、観ないと分からないこともある、これが果たしてどれだけ続くのかわからないんだけど(笑)。

松江 柳下さんのレビューを読んで、興味を持ってしまうと酷い目に合う(笑)。 文章では面白可笑しく省略してるけど、この一行の間に1時間以上もあるとは思わなかった。

柳下 嘘はついてないから(笑)

松江松江 ホント柳下さん、健康にだけは気をつけてください(笑)

皆殺し映画通信を続けると歴史とか社会性が入り込んでしまうだろうし、今は意図しなくても、記録で残っておいてよかったねっていうことがあると思うんですよ。どんなに酷い映画でも書き続けることで。その時までは柳下さん続けてもらえるとありがたいです(笑)。 将来、あっ、これが歴史の分岐点だったっていうのがいずれ分かるかもしれないじゃないですか。もし戦争始まった時に『永遠のゼロ』がきっかけだったんじゃないかとか (笑)

柳下 ありうるだけに怖い。

松江 『世界の中心で、愛をさけぶ』が今の日本映画の流れを作っていることは間違いないんですよ。当時は日本映画としては珍しいヒットの仕方だったけど、題材も宣伝の仕方も興行の展開も、2014年に新作として企画されてもおかしくないですよ。セカチュー公開時には気付かなかったことですが。

柳下 こんなことになるとは思わなかったよね。

松江 『大日本人』だって振り返れば幸福な映画でしたよ。最近の松本人志映画よりのびのびとしてて。 でもその魅力はしまださんしか気づいてなかった(笑)。 もしかしたら皆殺しのリストの中にもう、歴史の大事な記録が記されているのかもしれない。映画って良い、悪いだけで見てはいけないんですね。この連載にはヒット作やベストテンからは見えない日本映画史を期待しています。

 

→続きは書籍版『皆殺し映画通信にて!

 

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