『案山子とラケット~亜季と珠子の夏休み~』 日本のどこともしれぬ架空の村でソフトテニスとさだまさしが大好きな人たちが中学生少女を応援して村おこしが実現 (柳下毅一郎) -2,898文字-
監督 井上春生
脚本 村川康敏
音楽 野崎美波
出演 平祐奈、大友花恋、関めぐみ、柳葉敏郎
日本発祥のスポーツ“ソフトテニス“を通じて成長していくふたりの女子中学生と、彼女たちを見守る人々の姿を描いたハートウォーミング・ストーリー。
ソフトテニスってなんですか……?と悩んでいたんだが、いわゆる“軟式テニス”のことだった。「日本で生まれ育ったソフトテニスの誕生130周年を記念して」ヨネックスの協賛で製作されたソフトテニス振興ムービーである。なんでも映画にすればいいってもんじゃないよ!と言いたいところだが、マイナースポーツスポ根映画というのもいろいろあって、世にはカバディ映画なんてのまである。つい、みんな「映画にすればなんとかなる!」とか思っちゃうんだろうなあ。そういうわけで、ベースボールマガジン社と日本各県のソフトテニス協会が後援のソフトテニス映画。原作はなぜかさだまさしの『案山子』である。なぜなんだ!
東京の中学から島へ転校してきた美少女亜季(平祐奈)はクラスメートの注目を浴びる。実は彼女の父は輸入食品の販売業をするエリート会社員だったが、ある日リストラ。発作的に退職金をつぎこんで島の田圃を買い、無農薬の米作りをはじめたのだった。「お父さんは、農業に十分に勝算があると思ってる」と言い張るのだが、素人の米作りに不安を抱いた妻からは三行半をつきつけられる。一人で米作りを続けていた父親のところに娘がやってきたのだった。
さっそく亜季に興味をしめす同級生珠子(大友花恋)。「ねえ、強豪校でソフトテニス部だったんだって?」と説明的なセリフでソフトテニスへの関心を表明する。「あたしにもソフトテニスを教えて!」実は珠子の母はかつてソフトテニスの選手だったのだ。この映画、ソフトテニス原理主義なので登場人物はみなテニスではなくソフトテニスにのみ興味を示すのである。理由はいっさい明らかにされない。だが学校にはソフトテニス部はないので、二人は近くの廃校になった小学校で練習することにする。
だが行ってみると校庭は雑草に覆われ、ヨットが放置されている。いやいくら離島だからって、誰が山奥の小学校の校庭にヨットを捨てていくというのか。ともかく二人は校庭の雑草を抜くことからはじめ、ド素人の珠子は体育館で素振り。練習が終わると、二人は原っぱに座りこんで唐突にさだまさしの歌「案山子」の話をはじめる。
♪元気でいるか~街にはなれたか~
「わかるわ~それ」
「案山子」の話が出るのはここだけ! なぜ「案山子とラケット」というタイトルになるのかも全然わからない。さだまさし、実はソフトテニス界に絶大な貢献をしているのか、単にヨネックスの社長がさだまさし好きなのか、そこら辺はまったくわからない!
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