『群青色の、とおり道』 なんと企画が市長!群馬県太田市合併十周年記念映画 (柳下毅一郎) -2,022文字-
企画 清水聖義
監督 佐々部清
脚本 橋本剛実、佐々部清
撮影 早坂伸
出演 桐山漣、升毅、宮崎美子、杉野希妃、井上順、安田聖愛
群馬県太田市発! 太田市合併十周年記念映画なのだが、なんと企画が清水聖義太田市長ということで、市長が先頭に立って作った映画ということである。監督には『半落ち』、『夕凪の街 桜の国』の佐々部清を迎え、キャストもそれなりに揃えて地方発映画としてはお金を使っているようにも思われる。
とはいえ佐々部清、最近では鹿児島県鹿児島市を舞台にした『六月燈の三姉妹』なども撮っており、どうも地方発映画のエキスパートとなりつつある模様である。そういうわけで縁もゆかりもなさそうな群馬県太田市に行って作った映画はというと……
「東京から離れるほどに青い空が増えてゆく……」いかにも「東京には空はない」と言いたげなヨシユキ(桐山漣)は生まれ故郷の群馬県太田市に帰ってきた。ミュージシャンを目指して家を飛び出して十年、勘当されていた父親に呼び戻されて帰ってきたのである。実家は真山製作所という鉄工所だが、家をつぎたくないヨシユキは東京へ行った。だが、体調を崩した父から連絡をもらい、戻ってきたというわけである。母(宮崎美子)は驚きながらも「ヨシくん、ヨシくん」と可愛がる。十年前に飛び出したときのまま塵ひとつなく掃除されているヨシくんの部屋(壁にはBOOWYのポスターが貼ってある)。突然帰ってきたヨシくんに妹は不満顔。実はヨシくん、「大学なんてどうだっていい!」と飛び出しながら学費も出してもらって実家からの仕送りで暮らしていたのだった。いや、それいろいろ酷くないですかね? 厳しかった父だが何も言わない。だが翌日から入院すると言い出して一同びっくり。
母から注文品を小学校へ届けるよう頼まれたヨシくん。そこで教師になっていた幼なじみのユイカ(杉野希妃)と再会する。留守のあいだもときどき真山製作所に顔を出して「ヨシくんどうしてますか?」と様子を聞いていたというユイカ、28歳の今も独身恋人なしである。ちなみに同級生の男子二人はすでに結婚しており子供もいて、「倉田がおまえの見送りに行かなかった理由わかってるか?」とか謎をかけてくる。もうここまで出来上がってればあとは一発で振り込むのを待つのみ……四人は金山城跡に行って焼きまんじゅうを食べて観光コースも満喫。
ユイカは高校時代にヨシユキの弾き語りで聞かされた曲(サビだけ)を今でも覚えており、「続きを聞かせて」とお願いする。だがその願いに応えられないヨシユキ。なぜかと言えばその曲はいまだに完成しておらず、いまだに曲をひねくっているからなのだった……って十年間かけて一曲ひねくってたのかよ! それは芽が出ない、というかいいかげん諦めてアマチュアミュージシャンとして楽しく弾き語りしてた方がいいよ!
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