柳下毅一郎の皆殺し映画通信

『一週間フレンズ。』 非日常的な障害によってすれ違いが生まれて恋と冒険の学園生活がはじまる・・・そういう映画を「青空地獄」と称している (柳下毅一郎)

 

一週間フレンズ。

監督 村上正典
原作 葉月抹茶
脚本 泉澤陽子
撮影 藤本信成
音楽 やまだ豊
主題歌 スキマスイッチ
出演 川口春奈、山崎賢人、松尾太陽、上杉柊平、高橋春織、古畑星夏、甲本雅裕、国生さゆり

 

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「すごーい、きみはすぐもの忘れする頭が不自由なフレンズなんだねー!」というわけでコミック原作の難病青春恋愛映画。おお、もう……なんつーか、今の若者が何を求めているのか調べるフィールドワークをしているかのような気にさえなってくる。今の若者はそんなにファンタジックな恋愛に憧れているのだろうか。たぶん世界のどこかに「理想の高校生活」みたいなところがあって、そこでは非日常的な障害によってすれ違いが生まれてそこからわくわくするような恋と冒険の学園生活がはじまるのだ! まあ、そういう映画が「青空地獄」とぼくが称しているところのものである。現代のすれ違いメロドラマだ。

 

 

さて、本作の場合、すれ違い要素はヒロイン(川口春奈)が一週間しか記憶のつづかない奇病をわずらっているせいで月曜日ごとに主人公(山崎賢人)がいちから関係を作り直さなければならないというところ。一週間しか記憶がもたなくて学校生活とかできるのか? と大いに疑問になったのだが、実は覚えていられないのは学校での友達の顔とか名前とか交友関係とかだけで、勉強なんかは普通にできるのだという。そんな都合のいい記憶障害があるか! おまえ、絶対わざとやってるだろ! あと、そんなんだったら別に学校来なくても通信制とか大検とかあるだろが! ま、そういう都合のいい障害が二人をはばむのが現代恋愛映画なのだということで。ちなみに劇場は満員で、若者たちは鼻をグスグスいわせながら見入っていた。

 

図書室で分厚い本を借りた高校二年の長谷くん(山﨑賢人)、床に落ちていた貸出カードを拾いあげる。「藤宮香織」という名前にときめき、「いい香りがする~」と貸出カードを思いっきりクンカクンカしていると、戻ってきた香織本人(川口春奈)から蛆虫を見るような冷たい目線を向けられる。あちゃ~と帰宅の電車に乗ったところ、うつらうつらして本を忘れて降りてしまう。そこにたまたま乗り合わせていた香織嬢、いちはやく気づいて本をひっつかみ、閉まるドア越しに本を長谷くんに投げる。ナイスキャッチ!

てか本を投げるなよ!!

そのときの笑顔にすっかりやられた長谷くん、彼女が同級生だと知って、「友だちになってください!」と申し込む。だが、彼女は顔をこわばらせて「……無理!」と言うばかり。その後も友だちになろうといろいろウザくちょっかいを出す。見かねた教師、長谷を呼び出して。

「どうしてちょっかい出すんだ。かわいいからか」
「(図星)いや~」
「ま、おまえには話しておいたほうがいいかもな」

 というわけで同級生には秘密になっていた「一週間しか記憶がない病」のことを教える。そのせいでやたらつっけんどんで冷たい人間だという印象を与えてしまっている香織なのだった。やたらとくりだす「無理!」は能力的に不可能という意味なのである……ってそれはだいぶ無理があるがね。ヘビーな事実を知って凹んだ長谷くんではあるが、古文の授業で紀貫之『土佐日記』の話を聞いて「そうだ!」と思いつく。

「交換日記してください! 一週間のできごとを書けば忘れても覚えておけるでしょ?」

 

 

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