柳下毅一郎の皆殺し映画通信

『パーフェクト・タイム 100億分の1の奇跡』 「信じるよ。聖書のアプリもダウンロードした」 ・・・まさかの聖書アプリ普及のためのサーファー映画!! (♪akira)

 

 

パーフェクト・タイム 100億分の1の奇跡
(2014未/南アフリカ・ニュージーランド・インドネシア)

監督 : ブルース・マクドナルド
出演 : スコット・イーストウッド、レイチェル・ヘンドリックス、シェリル・ラッド

 

 

a04118f84dfeab9445d074c8a49bfc8a2ニュージーランドに住む、イケメンで気さくな若者イアン(スコット・イーストウッド)は、朝から晩までサーフィン三昧。モテモテのリア充な日々を送っている。一方まじめな弟マイケルは敬虔なクリスチャンの両親の言うことをよく聞き、ステディな彼女と一緒に日夜教会の仕事を手伝っていた……はい! タイトルでなんとなく予想した方も多いかと思いますが、クリント・イーストウッドの実子でしかもかなりそっくりな彼の主演映画は、サーファー向けキリスト教布教ものでした!

 

 

 

模範的信者の母(シェリル・ラッド)は教会を避けるイアンを、「13歳からずっと反抗期だから仕方ないわ」と諦めてますが、今24歳だから10年以上そのまんま!? でもこれ反抗期とはまた違うんじゃ……。しかし長兄の将来に不安を感じる父(パトリック・リスター)は、労働の大切さを知ってもらうべく、知り合いの酪農家に職を世話してもらっていたのである。それを聞いた母は大喜びするが、いやそれ無理でしょう!と観客の方が明らかに状況を理解。

その夜、健全な野外レイヴを抜け出したイアンは一人、海外のパーフェクト・ウェイヴのビデオを観ていた。通りかかったサーファー仲間のグレッグ(ジャック・ハロラン)が「いいねえ、行きたいよな」と言うと、「行こうよ! 今夜計画して、明朝出発は?」と軽く決断。その前にまずはナイトサーフィンだ! パラサイトでフリーターの二人に怖いものはない。

翌朝、ボードを抱えて帰宅したイアンは、教会のバザーから帰ってきた家族に出くわす。「サーフィンもいいが少しは家のことも手伝え」という父に、「真面目に決心した。家を出る!」と高らかに宣言。唐突過ぎる展開に動揺する家族に、「離れても心はいつも一緒だよ。しばらく旅に出てサーフィンをやる」とほがらかに言ってのける長兄の輝くような笑顔!(これがまた実父クリント・イーストウッドに似すぎているのがとても哀しい)車を売って資金を作った兄ちゃんの行く末に他人事ながら不安な観客をよそに、「怒ったんじゃなくて驚いてるのよ。いつ出るつもりなの?」と優しくたずねる母。「荷造りが終わったらすぐに出る! 今行かないとダメなんだ!」ってアンタ、思いついたの昨夜じゃん! 「24歳だもの、追い出さなきゃ」と涙ぐむ母に送り出されるイアンはどう低く見積もってもただの親不孝。売り払った車も自腹で買ったとは思えないんですが。同行者が不良のグレッグだと知り両親は焦るが、誘ったのはお宅の息子さんですから! そんな息子に、パーティとドラッグとセックスに憧れるのはわかるが農場でまじめに働いてはどうかという父に、「将来より今を大事にしたい」と100%の自信と笑みで返す息子24歳。明らかに無駄な説教を聞きながし、二人は旅立った。

信心深い家庭でイアンがこんな風になったのには実は理由があった。それは今から10年前、洗礼を受けたイアンは、「神の声なんか聞こえなかったし、何も起こらなかった! こんなの嘘っぱちだ!」と母親に怒りをぶつけたのである! がっかりした彼は、それ以来教会に通わなくなったのだ……って、もう14歳だよね? どんだけピュアに育てたんだ!!

オーストラリアに到着したイアンとグレッグは、早速サーフィンに興じていた。サーファー旅人のロックラン(スコット・モーテンセン)と知り合い、可愛いギャルズにパーティに誘われたり、自由を満喫する二人。波とギャルの目的を果たしたからそろそろ次の目的地へ移ろうと、イアンの強い要望でヒッチハイクしたが、なぜか運転手のおっさんに砂漠のど真ん中で降ろされる。「前向きに考えよう」と言うイアンに「飛行機で行けばよかったんだよ!」と言うグレッグがケンカを始めたところ、天の助けかおんぼろトラック登場。「ほーら、信じれば救われるってことだよ」と自信満々のイアンだが、あなた信じてませんよね??

旅先からイアンが送るメール(小学生並みの文章)に家族は大喜び。金がなくなったら戻るだろうと父はのんきに構えているが、むしろ使うばかりで増えもしない資金はこの時点でどうなっているのか。(バイト描写とかはもちろん無い) 渡航費用の出所も謎のまま、二人はバリ島に到着する。チョイエロギャル、アナベル(レイチェル・ヘンドリックス)は海岸で犬を救ったイアンに目をつけ、ネカフェでナンパする。翌朝イアンはいそいそと待ち合わせ場所に向かうのだが、ここでとんでもないナレーションが入る。

美しい景色と貧困が隣り合っている。偶像崇拝も理解不能。

だーか-ら! いくらサーフィンが目当てとはいえ、外国に来てるんだから少しは理解しようよ! そういえば作中で知り合うギャルの全員が白人だし、現地の言葉も覚えようとしないし、ほんと腹立つんですけど!

 

 

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