『牙狼-GARO- 蒼哭ノ魔竜』 ヤンキーとオタクの価値観は通じるという定理 (柳下毅一郎)
原作・脚本・監督 雨宮慶太
出演 小西遼生、久保田悠来、蒼あんな、松坂慶子
『牙狼』シリーズを延々追い続けている人はどのくらいいるのだろうか。2005年、テレビ東京系の深夜枠で放映された特撮テレビドラマがそもそものはじまりである。
雨宮慶太の原作・監督で作られたのが30分ものの特撮スーツチャンバラドラマ。この世の闇に住む魔物〈ホラー〉を狩るために、黄金の鎧を身にまとって魔戒剣をふるう魔戒剣士、冴島鋼牙(小西遼生(大樹))の活躍を描く大人向け特撮ドラマは、残念ながらそれほど話題にもならず終わってしまった。理由はいろいろあろうが、要するに「いつもの雨宮慶太だった」「深夜枠で萌えないフィギュアは売れない」ということに尽きるかもしれない。金色の狼仮面はあたかもフルCGのタイガージョーというところで、そいつが見得を切って刀を振りまわすのを格好いいと思えるどうかで、雨宮慶太の中二感覚についていけるかどうかが決まるわけである。
そのまま埋もれてしまうかに思われた『牙狼』の運命が変わったのは2008年、この無名特撮ドラマがなぜかパチンコ化され『CR牙狼』として第二の生を受けたときである。イマイチだったドラマがなぜかパチンコでは大ヒット、続篇も次々に作られることになった。もちろんパチンコ自体の出来も良かったのだろうが、何よりも画数多い漢字が乱舞し、キラキラしたCGキャラが斬り合う世界観がパチンコにマッチしたのだろう。ヤンキーとオタクの価値観は通じる、という定理はここでもまた証明されたのであった。
さて、パチンコ「CR牙狼」シリーズのヒットにより、テレビドラマもまた新たな生命を得た。2011年にはテレビ東京系で『牙狼』シリーズ第二弾が放映。ついには映画版『牙狼-GARO- RED REQUIEM』(2010)まで作られてしまった。パチンコから新たな命を得たという意味では『エヴァンゲリオン』にも通じるものがある。
さてその劇場版第二弾が『牙狼-GARO- 蒼哭ノ魔竜』。本作をもって最初のテレビシリーズから延々主役を演じつづけてきた小西遼生は卒業ということで一区切りつくらしい(シリーズ自体はまだ続くということで、パチンコ人気は健在です)。
映画がはじまるといきなり木人(ジャッキー・チェンが戦っていたアレ)登場。子供たちが木人相手に剣の修行をしているのを尻目に、ロングコートにブーツという格好の元シリーズの登場人物たちが「勝負しようじゃないか」と談笑するシリーズ・ファンへのサービス・シーン。
「鋼牙がいればなあ」
そのころ、鋼牙(小西遼生)は契約により異世界に飛ばされていた。地上で魔物を狩るためのエネルギーが枯渇してきたため、なんだかわからないが「嘆きの牙」というものを手に入れるよう命じられたのだ。なんだかわからないままイヌカレー空間よろしく漢字や歯車が乱舞する中をくぐり抜けてたどりついた、『アバター』風の風景が広がるフルCGの異世界。たまたま出くわした機械仕掛けの兵隊をぶちのめして、運んでいた全裸のアバター少女(全身青塗り)を救いだす。キャピキャピの少女は鋼牙を見て「あれ? 人間なの?」と驚く。ここは人間に想像されたモノたちの国なのだった。少女メル(蒼あんな)ももちろんモノ。彼女は「きれいなモノ」が大好きな「緑ノ城」の女王ジュダム(松坂慶子)にコレクトされて運ばれるところだったのだ。メルに「嘆きの牙」について聞いてみると
「うーん、メルは知らないけど『知恵の祠』に行けばわかるかも~?」
あああRPG展開か!
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