柳下毅一郎の皆殺し映画通信

『コドモ警察』 こいつら、オレのためにこの映画作ってるのか??? (柳下毅一郎)

 

コドモ警察』(東宝映像、電通 2013)

監督・脚本 福田雄一
撮影 早坂伸、工藤哲也
音楽 瀬川英史
出演 鈴木福、勝地涼、マリウス葉(SexyZone)、北乃きい、宍戸開、吉瀬美智子

 

いやーこういう映画って、いったい誰が見ると思って作るんですかねえ。本当、謎なんだけど。これ、もともとは人気子役の鈴木福(『妖怪人間ベム』のベロ役)くんが主演の深夜枠刑事ドラマ。謎の秘密組織「レッド・ヴィーナス」を追い詰めた敏腕刑事の特捜隊。だがあわやというところで幼児化するガスを嗅がされ、全員子供になってしまった。知力は大人なみだが身体は子供というスーパー刑事軍団。つまり人気アニメ名探偵コナンをパク……いやオマージュを捧げて刑事物の、というか『太陽にほえろ』のパロディをやるという一発ネタなのである。で、深夜枠でどんな志の低いドラマをやろうと知ったことではないのだが、それを映画にするとか……いったい誰が見ると思って作ってるんだよ! 鈴木福と同年配の小学生か? SexyZoneとやらのファンか? それともオレか? オレなのか?? こいつら、オレのためにこの映画作ってるのか???

さて、そういうわけでデカ長(鈴木福)、以下ブル(ジーパン風)、エナメル(イケメン)、スマート(パソコン通)ら渾名で呼ばれる特殊捜査課は今日もレッド・ヴィーナスがらみの事件を追いつづけている。警視庁直属らしいがなぜか舞台は横浜で、ハマの風紀はコドモ警察にまかせておけ! それにしても最近は妙な事件が多すぎる。レッド・ヴィーナスの名刺つきで届けられる事件の予告状も、サラリーマンが同僚を殺そうとしたとか、某女子高に爆弾がしかけられたとか、ショボい事件ばっかり。さしものコドモ警察もおかしいのではないかと疑っている。ひょっとしてすでにレッド・ヴィーナスは壊滅しているのでは? これは彼らを騙る偽物の仕業なのでは? そもそもなんでいちいち予告状なんか届けてくるのだ? それはレッド・ヴィーナスの美学なんでしょうがない。

爆弾予告当日、スキャンダルを避けたいという学校の意向でこっそり捜査することになったコドモ警察。

「すいません……その日は学校で二時間目がお楽しみ会なんで行けません!」
「お楽しみ会!? そんなのサボっちまえばいいだろう!」(てかこいつら大人じゃなかったのかよ! 学校行ってんのかよ!)
「いやサボれないす……男子全員でAKBやるんですけど、オレ、優子のポジションなんす」
「つまりセンターってことか!」
「端の方で踊ってるんじゃないわけね!」
「しょうがない……今度からコジハルくらいにしておけ!」

書き写しててしみじみ思うわけだが、これって何か面白い? ねえ? こういうギャグ面白いと思ってるのかな?

そしていざ予告日……コドモたちが踏みこみ……カット変わると犯人がつかまっていた。

「カツ丼でも食うか」
「要りません」
「ほっともっと(R)のカツ丼だぞ! おまえが食べないならオレが食う!」

いやこれ本当におもしろいと思ってんのかと……そしてこの子役たち、せめて演技がうまいのかと思えば全然そんなことはなく、全員棒読みでセリフ噛みまくり、妙なところで息継ぎをいれる始末。じゃあ大人は大丈夫かというとSexyZoneの人も同じくらいセリフ噛んでたんで、ほぼ大人子供に差はなく人類みな平等

見ていてイライラするのは作者たちが真面目に作っていないことである。別に子役が出演する刑事ものパロディでもいい。ただ、それならきちんと刑事ものにしてくれなければ困る。「スマート」の預けられた先の夫婦(ヨーロッパ企画の本多力と上地春菜)が「スマート」を子役役者にしようとしてオーディションを受けさせるとか、テレビ・シリーズから持ち越しているギャグらしいのだが、二人のやりとりが本当に寒くて許してくれとしか言いようがない(しかもキャラクターの設定自体にもまったく筋が通ってない)。その場さえ受ければいいというバラエティのノリで二時間の映画版を作られても困るのだ。「カット変わると犯人がつかまっていた」しかできないのであれば、刑事ものなんか作らないでいただきたい!

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tags: SexyZone さあゲームの始まりです テレビドラマ マリウス葉 劇場版 勝地涼 北乃きい 吉瀬美智子 妖怪人間ベム 宍戸開 工藤哲也 早坂伸 瀬川英史 福田雄一 鈴木福

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