「ザ・ヨコハマ・エクスプレス」藤井雅彦責任編集:ヨコハマ・フットボール・マガジン

ドゥシャンは飯倉について「安心してバックパスを出せるし、任せられる。11人トータルで戦えるのは大樹の存在によるところが大きい」と語る [ルヴァンカップ制覇への道 Vo.l.4]

 

 

前回からつづく

 

 カップ戦決勝に向けてお届けしている短期集中連載『ルヴァンカップ制覇への道』。Vol.4は攻撃の第一歩となる後方からのビルドアップにフォーカスする。

 今季序盤、とにかく高い位置取りで世間の話題をさらったGK飯倉大樹。守護神としてゴールを守り、広大なスペースをカバーし、さらに攻撃の起点としても重要な役割を果たす。

「オレにしかできない新しいGKスタイルだから」

 そう言って堂々と胸を張る。迎えるファイナルの舞台では、どんなパフォーマンスを見せてくれるのだろう。

 

 

シーズン序盤、飯倉大樹は前へ飛び出したことでがら空きになったゴールを狙われ、悔しい失点を喫した。

プレシーズンマッチのFC東京戦に始まり、第9節・湘南ベルマーレ戦、第12節・ジュビロ磐田戦、そして元同僚の藤本淳吾にロンググループを決められた第14節・ガンバ大阪戦など。頭上を越されてゴールネットを揺らされたのは、一度や二度ではない。

失点に関与してしまうのがGKの宿命とはいえ、前半戦の飯倉大樹は功罪両方の観点から多くの注目を集めるプレーヤーになっていた。ただ、そんなことはまったく意に介さない。良くも悪くも唯一無二。必要以上も気落ちもなかった。

「オレは新しいGKのスタイルを開拓している」

 こうして他の誰にもマネできないプレースタイルを確立していく。

 

 

公式戦を重ねていくことで少しずつ落ち着いたポジショニングになっていったが、それでも他チームのGKと比較すればプレーエリアの広さは歴然としており、根本的な考え方は変わっていない。守っては自陣ゴールだけでなく最終ラインの背後のスペースをカバーし、攻めては持ち前の足技を駆使して攻撃の起点に。チームで唯一、リーグ戦フルタイム出場を続けているという事実が飯倉の価値を物語っている。

シーズン途中にはドゥシャンとチアゴ・マルチンスという外国人センターバックが続けて加入。新たなコンビネーションや信頼関係を築く作業も求められた。二人の背後のスペースをカバーしつつ、バックパスを受けるための選択肢にもならなければいけない。迷っている猶予はなく、瞬時に判断してポジションを取っていく。

ドゥシャンは飯倉に全幅の信頼を寄せている。

 

 

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「できるだけ前方向にボールを出して、受けた選手が次に選択肢を持てる状況にしたい。でもそれが難しい時は後ろにいる大樹に安心してバックパスを出せるし、任せられる。これはチームのやり方だ。11人トータルで戦えるのは大樹の存在によるところが大きい」

 飯倉も同調する。

「センターバックに出し所がなければ、自分のところに戻して作り直す。その引き出しになる役目もある」

 ルヴァンカップ準決勝・鹿島アントラーズ戦の第2戦では飯倉が天野純に出したパスをカットされ、そのまま失点した。さらに直近のリーグ第30節・ガンバ大阪戦でも最終ラインの山中亮輔が自陣で犯したパスミスをきっかけに失点。相手が高い位置からプレッシャーをかけてきたことで、ミスが失点に直結するゲームが続いている。

迎える決勝戦、マリノスは自分たちの信念の強さを試される。ミスを恐れずパスをつなぐのか、敵のプレッシャーに怯えて他の道に逃げるのか。

「リスクがあってもつなぐのが今のサッカー。今のウチにとっては、大きく蹴るほうがリスク。ルヴァンカップ鹿島戦では自分のミスから失点したけど、試合の振り返りミーティングで監督は自分のミスのせいにしていない。チームとしてどうすればこのシーンでもボールをつなげたのか、そういった観点で話をしていた。だから次の試合でも、とことんつなぐ」

 まさしく首尾一貫。迷いなどないことを飯倉が体現する。今年のマリノスはGKを起点に、ボールをつないで、つないで、つなぎ倒す。

 

(Vo.l.5へ続く)

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