「ザ・ヨコハマ・エクスプレス」藤井雅彦責任編集:ヨコハマ・フットボール・マガジン

背番号25が発する言葉は力強く、頼もしい [J32節・磐田戦プレビュー] (藤井雅彦) -1,935文字-

昨日公開された天皇杯レビューでも述べたように、連戦によるコンディションが最大の懸念材料だ。水曜日のナイターゲームで延長戦を含めた120分を戦い、中2日でアウェイのジュビロ磐田戦に臨む。チームは試合前日の22日、いつもどおり軽めのメニューを消化して磐田戦に向けての準備を終えた。戦術的なトレーニングを行う余裕はなく、フィジカルコンディションを整えることで精一杯。状態については選手4-2-3-1_best個々で差があるのが正直なところだろう。

体調面に一抹の不安こそ残るが、一様に前向きな言葉を発することができるのは、優勝争いに身を置いているメリットと言える。「天皇杯の疲れがないわけではないけど、ここまできたら関係ない」(栗原勇蔵)、「残り3試合で優勝を狙える位置にいつのだから疲れたなどと言っている場合ではない」(マルキーニョス)。心が体を凌駕する。強い気持ちを持って戦うことを勝利への第一歩としたい。

では指揮官はどう考えるのか。注目は離脱していた選手の起用法だろう。天皇杯4回戦・AC長野パルセイロ戦で復帰した中村俊輔に関しては「自分でも言っていたと思うけどフィジカル的には天皇杯で上げることができたと思う」とポジティブに捉えている。ならば問題なくスタメンに名を連ねるはず。中村が先発することによる効能はのちに述べるが、大きなプラスであることは間違いない。

懸案事項は齋藤学の使い方か。名古屋グランパス戦前から左足首を負傷しており、その試合でさらに悪化させたことで日本代表の一員として参加するはずだった欧州遠征を辞退した。この中間は天皇杯前日の19日からフルメニューを消化しており、試合出場できる状態まで回復している。あとは先発か、あるいはベンチスタートで切り札として控えるかの二者択一である。樋口靖洋監督は起用法について「天皇杯で疲れがある選手との兼ね合いもある」と慎重な姿勢を崩さない。この言葉はいかようにも捉えることができ、疲労を抱えている選手が多いから齋藤をスタメン起用する、という見方が自然だろう。一方で、疲労を抱えている選手は90分フル出場が難しいので、足が止まるまで先発させて齋藤にバトンタッチする、という考え方もできなくはない。

下バナー

まずは勝ち点3がほしい試合なのは言うまでもない。ライバルチームのゲームが同時刻にキックオフするが、樋口監督は他会場の動向を気にせず戦うという。「この試合で何かが決まるわけではない。今節の結果次第で30日はそういった状況になるかもしれないけど、今回はとにかく90分間で勝ち点3を狙う」と言い切る。120分ゲームを消化してから中2日で臨んだ公式戦など、これまでない。90分間の使い方が鍵を握りそうだ。

そして期待せずにはいられないのが中村のパフォーマンスである。不在だった名古屋戦と長野戦途中までは、明らかにボールの4-4-2磐田収まりどころを失った影響が出ていた。拠り所がないチームは落ち着きを失い、攻守ともに連動性を欠いた。それが長野戦で途中出場すると、不思議とチームは好循環していく。「前にいて、ちょっとだけ動いてくれるので縦パスを出せる。ボールを取られないという安心感もある」と語ってのは富澤清太郎だ。キーワードは“安心感”か。信頼というよりも安心という表現がしっくりくる。

中村個人のプレーもそうだが、存在の有無が周囲に与える影響はとてつもなく大きい。ある程度の想像はしていたが、失って初めて気づかされた具体的な事実である。その筆頭が富澤であり、トップ下に配置転換されていた中町公祐であろう。戦術の肝である中盤のトライアングルが、正しい配置で並び、効果的に回る。するとそれが潤滑油となり、波及効果を生みながらチーム全体が前へ動き出す。

何より背番号25が発する言葉は力強く、頼もしい。「名古屋戦ではみんなに迷惑をかけてしまった。自分には名古屋戦に出られなかったことを取り返すという使命がある」。表情こそ普段どおりだが、出てくる言葉にはエネルギーがみなぎっていた。帰還を果たす主将がトリコロールを再びけん引してくれるはずだ。

« 次の記事
前の記事 »

ページ先頭へ