「ザ・ヨコハマ・エクスプレス」藤井雅彦責任編集:ヨコハマ・フットボール・マガジン

「裕二がいたら、シーズン終盤になっても相手と試合を引っかき回してくれたかな」 監督 樋口 靖洋 インタビュー【2】 -3,716文字-

最後の最後に栄冠を掴み損ねた。だが、2013シーズンのマリノスの歩みは決して間違っていなかった。Jリーグアウォーズでは優秀選手に10人を輩出し、中村俊輔と中澤佑二はベストイレブン、中村はMVPも合わせて受賞した。他チームも認めるパフォーマンスだった。

そのチームの指揮を執ったのが樋口靖洋監督だ。リーグ戦が終わり、年末に差し掛かったある日、ヨコハマ・エクスプレスの独占インタビューに応じてくれた。初回は、リーグ戦2位に終わった心境を赤裸々に語る。

監督 樋口 靖洋 インタビュー【1】からのつづき


 

――シーズン序盤は高い位置でのボール奪取が目立ち、ショートカウンターからの得点が多かったと思います。それが夏以降、少しスタイルをマイナーチェンジした印象があります。

「たしかに序盤、得点を量産していた時期はボールを奪う位置が高かったですね。その位置がだんだんと下がったのも間違いないです。これは個々の切り替えと追い出しが遅れたり、減ったしたことだけが原因ではないと思います。毎試合後、映像を見直してどんなシーンが何分にあったかをメモしているんだけど、いわゆる良かった守備の項目が後半戦になるにつれて明らかに減っていった。これは守備の出足が緩くなったというより、重心が後ろに下がったという印象が強い」

――それは対戦相手の性質や対策も関係してくるのでは?

「うん、相手がボールを奪った瞬間に早めに縦にボールを入れてきた影響もあります。特に後半戦は奪いどころを外される試合も多かったですね。2巡目の対戦になってからは『F・マリノスは奪われた瞬間の切り替えが早いから、バックパスせずに前へボールを入れろ』という指示が出ていたと思いますよ。そうするとウチとしては守備に行くタイミングで外されてしまう。それによってショートカウンターの回数が減った。今年の前半戦は去年の終盤よりもカウンターの精度が高まったと思っていた。でも後半戦になってカウンターからの得点が影を潜めてしまった。だから意識的にマイナーチェンジをしたというよりも、相手に奪いどころを作らせてもらえず、ボールを奪う位置が下がったことで前へ行くパワーをどう構築するかが問題になり、結果として得点数が減ったわけですね」

――狙いとする守備ができなくなった反面、失点数は後半戦になって減少しました。不思議な現象に感じます。

「奪いどころを外されても、いわゆるラスト3分の1の守備はだいぶ良くなっているし、ウチの強みでもあります。それが失点数の少なさに表れている。でも前からの守備ともう少し噛み合って、そこからのカウンターで3~4点取れていれば、最終的な状況はまったく違ったものになっていたでしょう。逆に言えば、そこが足りない部分と分析しています」

――夏以降はチーム全体としてボールを大事にしすぎる傾向があったと思います。監督はどう見られていましたか?

「夏以降、無駄な体力を使わないようにボールを保持する回数と時間は増えました。ただ、ゴールに向かう姿勢を失ってはいけない。それはミーティングで何度か話して、ゴールに向かうことを強調してきた。でも前線でボールを失う回数が増えて、攻撃に必要なタメを作れなくなった。前に出ても収まらないのであれば、後ろで一度ボールを回して、より確実に攻めようという意識が強くなった。難しいバランスではあるけど、前へ行くという姿勢はチームとして少し足りなかったかなと思います」

――とはいえ1年間同じサッカーは続けるのは難しいと思います。

「中心さえブレていなければ問題ない。多少の変化があったとしても、僕はそれがチームの波だと思っています。そういう点で、大きくブレることはなかった。今後は足りなかった部分を補う作業が必要になる。例えば、相手に長いボールを蹴られたらどうするか、あるいは奪ってからボールを下げずに前へ行くパワーを持つために何が必要か。キャンプのときによく話していた“推進力”をどうするか、という問題ですよね。それが(齋藤)学のドリブルしかなかった。人が走ることで推進力を出す意識付けをしてきて、だいぶ走れるようになってきた。それをさらに強調する必要がある」

――最終的に推進力が少し足りなかったということですか?

 

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