「ザ・ヨコハマ・エクスプレス」藤井雅彦責任編集:ヨコハマ・フットボール・マガジン

7選手を入れ替えたメンバーが同じ力量のはずがない [ACL3節メルボルン戦レビュー] (藤井雅彦) -1,400文字-

戦前の予想と異なっていたのは1トップに矢島卓郎を起用し、トップ下に端戸仁を配した采配だ。とはいえ映像を観るかぎりでは今シーズン初めて2トップを採用したかに思われた。これは勘違いではなく、端戸が最前線を孤立させないためのポジショニングをとった結果であろう。中村俊輔がトップ下を務めた際とは明らかに違う陣形だった。これは善し悪しではなく、性質の異なる選手が入れば当然、全体のバランスも変化する。端戸をトップ下で起用するということは、比較的高い位置取りで1.5列目のようなプレーをするというわけだ。

4-2-3-1_ACL2 それ自体に大きな問題はないのだが、ではチームとしてどこに、あるいは誰に落ち着きどころを託すのか。中村抜きのチームを演じなければならない。矢島はお世辞にも運動量豊富とは言えないだけに、やはり中盤の誰かがどの役割を担う必要がある。齋藤学あたりはそういった展開を意識していたようで、序盤は左サイドに張りすぎることなく幅広く動いていた。だが、時間経過とともに、特にビハインドになってからは個で“違い”を生み出すために左サイドでのプレーに偏った。佐藤優平は運動量豊富に動き回り、試合後にはこの日のベストプレーヤーに選ばれたが、いかんせん非力すぎる。2列目の一角として決定的な仕事をするためには筋力アップが欠かせない。

ダブルボランチの役割や関係性も現時点では不明瞭だった感が否めない。だが、これは仕方のない部分もある。これまで小椋祥平と三門雄大がコンビを組むケースは皆無に等しく、お互いの特徴を把握しきれていない部分が大きかった。時間と試合を重ねることで関係が向上していくことも考えられるが、今後このコンビがお目見えする日が来るかどうか。ぶっつけ本番というリスクはこのあたりにはらんでいるのだろう。

 

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マリノスの内容が極端に悪かったとは思わない。起用された選手はそれなりの特徴を出し、その結果が力負けだった。オーストラリア特有の深い芝がボールコントロールの自由を奪い、もちろん直距離移動といったエクスキューズも存在したが、それらが試合結果を大きく左右したわけではない。中盤での迂闊なボールロストから淡白なカウンターを許し、失点する。それはマリノスの悪癖である。したがって力負けとでも言うべき敗戦だった。

そもそもリーグ戦から7選手を入れ替えたメンバーが同じ力量のはずがない。それができてこその本当のターンオーバーであり、現実的に力は劣っていた。いまのJクラブに7選手入れ替えて力を維持できるクラブはおそらくない。1.5軍から2軍に近いにメンバー構成でアウェイで勝ち点をもらえるほどACLは甘くない。9年ぶりにようやく出場する権利を得た舞台だというのに、自らの手でそれを放棄してはもったいない。数年後を見据えた采配など、この舞台ですべきではない。

勝つために何をすべきか。それを考えさせられる残念な敗戦とともにマリノスのACLは終焉を迎えようとしている。

 

 

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