「ザ・ヨコハマ・エクスプレス」藤井雅彦責任編集:ヨコハマ・フットボール・マガジン

「どんな形でも勝つことから始めないと。F・マリノスだけじゃなくて日本全体の課題かもしれない」 FW 16伊藤翔ロングインタビュー(1/3) -2,084文字-[無料]

20140624_195601   リーグ開幕戦で豪快なロングシュートを叩き込み、存在を力強くアピールした伊藤 翔。しかし、その後はチーム同様に苦しんだ印象が強い。1トップの主戦を務めたものの、なかなかゴールチャンスに恵まれず、常に数的不利な状況でのプレーをしいられた。リーグ戦と並行してACLを戦う厳しい日程の中で、今季から新たに移籍加入したストライカーは何を思い、感じたのか。新潟県十日町で行った独占インタビューの、今回は第1回をお届けする。(全3回)

インタビュアー:藤井 雅彦 カメラマン:星 智徳 インタビュー実施日:6月24日(火)

    20140624_201456――序盤戦を終えてチームの順位は暫定12位。伊藤翔自身は3ゴールという結果について、どう捉えている?

「もちろん良い結果だとは思っていません。でも、みんなのコンディションがそれなりに良いときはある程度の結果が出ていたと思います。逆にコンディションが悪くなると勝てない試合が続いた。これはACLに出場しているクラブに共通して当てはまることだと思います。分かっていたことだし、ACL出場は光栄なことでもあるんだけど、やっぱりリーグ戦とアジアを並行して戦うのはとても難しいことだなと実感しました」

――ACL出場チームはコンディションという課題とも向き合わなければいけない、と。

「たとえば中断前最後のフロンターレ戦(3-0で勝利)は、相手がACLベスト16に進んで連戦だったと思うけど、F・マリノスはグループリーグで敗退したので連戦ではなかった。だから単純にコンディションの差は大きかったと思います。これからも連戦はあるにせよ、序盤戦ほど長く続く連戦ではないだろうし、あれだけ疲労困ぱいになることもないと思います。ただ、序盤戦に関して言えばACLと並行して戦う免疫が自分たちに足りなかった。もちろん出る大会はすべて勝利と優勝を目指します。それは間違いない。では、それを達成するためにどうやって戦うか、どんなマネジメントが必要か、という意味でこの経験を今後に生かさないといけない」

――実際、伊藤選手は過密日程で疲れていた?

「振り返ってみると知らずしらずのうちに疲れていました。中2日、中3日で連戦が続いていく中で、最初のうちは特に何も感じなかったんですよ。でも4連戦、5連戦、それ以上になると少し休めば抜けるはずの疲れが抜けない。これは経験しないと分からないことでもありました。 自分の場合、移動時間が一番長いメルボルン遠征には帯同しなくて、広州恒大とのホームゲームにも出場しなかった。そのあたりは監督の配慮や思惑もあったと思います。それでも最後の勝ち点差や状況を考えると、序盤に落とした勝ち点がもったいなかった。尻に火がついてから2連勝して、最終節に勝てばグループリーグ突破できるという状況には持ち込めたけど、力を出しきれなかった。このことは選手間でもたくさん話したし、個人的にも不完全燃焼に終わった気持ちが強いです」

――初めてのアジアの舞台はあまり楽しめなかった?

20140624_195804「JリーグとACLで相手の性質が違うので、戦えるのはとても興味深かったですよ。韓国や中国、あるいはオーストラリアの戦い方はゴールに直接的でした。彼らは自分たちのスタイルを確立していて、しかも徹底する。それが勝利に一番近い方法だと信じているのだと思う。だからシンプルに長いボールを蹴って、ゴチャゴチャとした混戦を作り出 して、それを想定してセカンドボールを拾うためのポジショニングをとる。ボールをつなぐか、それとも長いボールを蹴るかは方法論でしかなくて、どちらにしてもチームとしてハッキリしていたほうが共通理解が生まれやすい」

――勝つためにどうするか、だね。

「そうです。『楽しかった?』と質問されても、残念ながら負けたから楽しくなかった。逆に勝てば大きな満足感を得られる。だからどんな形でも勝つことから始めないと。F・マリノスだけじゃなくて日本全体の課題かもしれない。もちろんリーグ戦にも当てはまること。試合内容やパフォーマンスでお客さんに満足してもらうのがプロの仕事なので追求していくけど、やっぱり試合に勝つことで一番喜んでもらえる。それにプラスして内容も楽しんでもらいたい」

――そのあたりの価値観が海外リーグとの大きな違いなのでは?

「僕自身、海外リーグでプレーした経験があるし、そのとおりだと思います。海外のサポーターはどんな得点でもいいと思っていますから。勝てば、それがオウンゴールでも喜びを爆発させる。でも負けたら内容がいくら良くても悲しむし、チームや選手は批判の的になる。それにサポーターの要求はどんどん高くなっていくもの。たとえばメッシのような大スターでも、何試合か悪いプレーが続けば批判されるかもしれない。そういったプレッシャーの中で常に戦っているからこそ良いプレーができる。欧州の国々はサッカーが文化として根付いているし、そこが日本との一番の差だと思います」(つづく

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