「ザ・ヨコハマ・エクスプレス」藤井雅彦責任編集:ヨコハマ・フットボール・マガジン

この日の先発メンバーからリーグ戦のメンバー入りに昇格する選手は何人いるだろう [天皇杯ホンダロック戦レビュー] (藤井雅彦)

 

 

この日のマリノスには違いを生み出せる選手がいなかった。

とはいえ、そんな選手はリーグ全体を見渡してもそうそういない。何か特筆した能力がなければ、相手との間で差を出せない。ダントツに足が速ければ、それだけでゴールできて、勝てるかもしれない。高さもそうだし、技術もそうだ。特異な選手と言えばいいだろうか。マリノスで当てはまるのは、せいぜい中村俊輔の左足と齋藤学のドリブルだけである。

いわゆるBチームで試合に臨んだのだから、中村も齋藤も不在だ。違いを生み出せないメンバー編成で少々苦戦するのは自明の理である。もちろん技術的にはマリノスが上で、ボール回しで優位に立つのは当たり前。ただ、それが肝心要のゴールにつながらないのでは意味がない。

 
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4-2-3-1 前半からホンダロックSCを攻め立てたが、これといった決定機はなかった。前半終了間際に兵藤慎剛がゴールしなければ、試合結果は分からなかっただろう。試合を優位に進めていたのは間違いないが、圧倒したわけではない。悲しいかな、それが現実なのかもしれない。このメンバー編成では、前半終了間際にやっとゴールを奪っての1-0で折り返すのが精一杯なのである。

後半に入ってからは端戸仁のヘディングシュート、さらにプロデビュー戦となった天野純のゴールが決まり、終わってみれば3-0だった。前後半で1本ずつシュートを許したのみで、被決定機はなかった。「危なげない勝利」(栗原勇蔵)ではあるが、攻撃面で物足りなさが残ったことも事実。果たして、この日の先発メンバーからリーグ戦のメンバー入りに昇格する選手は何人いるだろうか。

 

 

 【短評】

GK 30 六反 勇治

被シュートはわずかに2本。これといった仕事はなかったが、アマチュア相手にきっちり時間を消費させるあたりは憎らしい。レギュラーGKと遜色ない実力を持つ選手が控えにいるのは本当に幸せなことである。

 

DF 24 奈良輪 雄太

正確なクロスで兵藤の先制ゴールをアシスト。しかし、それ以外のクロスは明後日の方向へ。特に後半に入ってからのクロス精度はいただけない。小林よりも攻撃性をウリにするならば、この日の出来ではいけない。

 

DF 4 栗原 勇蔵

明らかに試運転。得意のヘディングでしっかり跳ね返せないあたりは集中力の問題か睡眠不足が原因だろう。「広島戦に向けて実戦でトレーニングできたと思えば、いいゲームだった。疲労もゼロだから(笑)」

 

DF 15 ファビオ

この日に限って言えば栗原よりもプレー精度は上だった。六反同様、質の高い選手がベンチにいるのは本当に助かる。中澤や栗原に何かが起きてしまった場合、安心してピッチに送り出せる選手だ。

 

DF 5 ドゥトラ

終了間際の切り返し&右足シュートは惜しかった。今月で引退するのがもったいないと思わせるほどの運動量と一撃必殺のタックルは健在。この試合がラストゲームにならないことを祈るばかりである。

 

MF 14 熊谷 アンドリュー

この程度の出来ならば、リーグ戦では起用できない。自分から何かを変えようという意欲がなければピッチには立てないだろう。ボールを失い、寝転んでいたり、歩いているようでは、ポジションは得られない。

 

MF 7 兵藤 慎剛

どの位置にいても彼は彼である。ただ、この試合の勝因は間違いなく前半のうちに先制できたことになる。その点で背番号7が果たして役割は大きい。あるいはそれが端戸や佐藤、天野との差かもしれない。

 

MF 29 天野 純

指揮官からの評価が急上昇している。プロデビュー戦で1ゴール1アシストなら褒めてもいい結果だが、トップレベルで通用するかは別問題。フィジカルの課題を解決しなければ、リーグ戦では難しいかもしれない。

 

MF 17 端戸 仁

ゴールは素晴らしかった。CKにヘディングで合わせる彼の姿は初めて見た。天野へのラストパスも抜群だった。とはいえ全体的に見れば消化不良の出来だろう。ポジションに関係なく、もっとできるはずだ。

 

MF 20 佐藤 優平

最大の見せ場はCKをニアサイドからのヘディングで狙った場面か。十日町キャンプでもクロスからの入り方に成長の跡が見える。だからこそ目に見える結果がほしかった。警告は不必要だったので減点材料。

 

FW 19 藤田 祥史

「腰から落ちて、気持ち悪い状態になってしまった」。試合後、藤田は肩を落としてそう言った。ラフィーニャ加入でポジション争いが熾烈なだけにゴールがほしかった試合で負傷交代とはツイていない。

 

MF 28 喜田 拓也

先制点の功績は兵藤が半分、そして喜田が半分だ。緊急登板でしっかりゴールに絡むあたり、プロ意識高くモチベーションを保っていた成果だろう。レギュラーへの道は険しいが、その一歩目はたしかに刻んだ。

 

MF 11 齋藤 学

ほぼ予定通りの出場時間か。攻撃を加速させるドリブルを何度か見せてくれたことに安心した。しかしながら左サイドからのカットインはワンパターンすぎる。局面打開にはさらなる工夫が求められる。

 

FW 9 矢島 卓郎

競馬に例えると、太め残り。明らかに良化途上で、コンディションが万全ではない。股関節痛でつい先日まで別メニューだったのだからそれも当然か。このパフォーマンスでは切り札として起用するのは厳しいだろう。

 

監督 樋口 靖洋

藤田祥史の負傷交代時に喜田拓也を選択したのは驚きだった。交代まで少し時間がかかったのは悩んだ証だろう。3日後のリーグ再開初戦を見据えたメンバー編成も当然で、この日に関しては選手の力不足が際立った。

 

 

 

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