「ザ・ヨコハマ・エクスプレス」藤井雅彦責任編集:ヨコハマ・フットボール・マガジン

「暑いね。でもオレは夏に強い子だから」 おそらく、背番号10はやってくれる  [J12節(延期試合)広島戦プレビュー] (藤井雅彦) -1,908文字-

 

約2ヵ月ぶりに再開するリーグ戦の日が迫っている。チームはその間に3週間半のオフを挟み、新潟県十日町で9日間に渡るフィジカルキャンプを行った。再開直前に富澤清太郎と三門雄大が負傷離脱したのは誤算だったが、そのほかは概ね順調に調整が進んだ。たとえば胆のう摘出手術を受けた中村俊輔は、今年に入って最も良い状態で試合に臨めるだろう。サンフレッチェ広島戦前日、練習後に一人でランニングしながら自発的に報道陣に声をかけてきた。

4-3-2-1_後半戦「暑いね。でもオレは夏に強い子だから。そのほうが相手のマークが緩くなるしね」

 ニヤリと笑い、再び真剣な目でランニングに戻っていった。余裕すら感じる振る舞いに、彼本来の姿を見た。日替わりのコンディションというストレス材料を抱えながら戦っていた序盤戦とは明らかに違う。おそらく、背番号10はやってくれる。いや、やってもらわなければ困る。

とはいえ、ポジティブに語れる材料はほかにあまり見当たらないのが実情でもある。良くも悪くも、マリノスは序盤戦から大きく変わっていない。システムは[4-2-3-1]のままで、試合に出場するメンバーもアクシデントの起きたボランチを除いて不動だ。そのボランチにしても、先発出場するのが中町公祐と小椋祥平なのだから、大きな変化とは言い難い。彼らは序盤戦も試合に出ていた。

変化すれば勝てる確率が上がるというわけでもないが、変えようというアクションが指揮官からあまり感じられなかったのは気がかりでもある。小林祐三は「マイナーチェンジはできる」と語るが、それがどれほどのもので、実際のゲームで見て取れるほどかどうか。天皇杯2回戦のメンバーはまったく参考にならないため、この広島戦が今後に向けた試金石という見方が正しいだろう。
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3-4-2-1広島 一方で明らかに変化が起きているのがサブメンバーである。中断期間と天皇杯2回戦を経て、選手の序列は少なからず変わってきている。広島戦のサブには天野純、そして喜田拓也がそれぞれ今シーズン初めて入る模様だ。彼らはホンダロックSC戦で一定以上の活躍を見せた選手たちで、ここへきて指揮官からの評価が上がっている。アクシデントがないかぎり長時間の出番は考え難いが、二人にとっては貴重なチャンスの場であることもまた間違いない。

本日発売のサッカー専門新聞『EL GOLAZO』にも書いたが、広島戦は今シーズンの分水嶺となる試合だ。勝てば上位争いに取り付けるが、負ければ残留争いに巻き込まれる可能性がグンと高まる。まぁ、残留争いはちょっと大げさかもしれないが、優勝争いに加わる可能性はかなり低くなるだろう。つまりは、今シーズンの残りを楽しめるかどうかの境ということだ。

勝たなければ道は拓けないのである。

 

 

【今節のキーマン】
MF 8 中町 公祐

キーマンにはこの人を指名したい。キャンプではやや遅れをとり、練習試合でのパフォーマンスも決して高くなかった。序列としては富澤、三門、小椋に次ぐ4番手あたりで、調子だけならば熊谷アンドリューにも劣っていた。それでも富澤と三門の負傷離脱によって出番が巡ってくるあたりが、彼の生命力の高さであり、指揮官からの信頼の表れと言える。

持っている能力に不安はない。だが、相方や対戦相手との相性については疑問が残る。中町が最も能力を発揮するシチュエーションは前に中村俊輔、後ろに富澤がいるときだろう。それが今節は小椋を後方に残してのプレーとなる。しかも対戦相手は2シャドーがバイタルエリアを活用してくるため、無闇に飛び出せば相手の思うツボ。脇を締めつつ、攻守ともに機を見て飛び出さなければいけない。

そして中村の能力を最大限引き出すには、中町の存在が欠かせない。両者のオートマチックなポジションチェンジによって攻撃に流動性が生まれ、リズムメイクができる。昨シーズンのアウェイ広島戦ではゴールを決めており、ゲンの良い場所でもある。マリノスの反攻は、中町の反攻とともに実現する。

 

 

 

 

 

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