「ザ・ヨコハマ・エクスプレス」藤井雅彦責任編集:ヨコハマ・フットボール・マガジン

主力選手の約半数を欠いた樋口マリノス [J27節鳥栖戦プレビュー] 藤井雅彦 -1,970文字-

ここへきて樋口靖洋監督の悩みの種は尽きない。なにせ監督就任3年目が経過しようとしている現在、これまでなかった負傷者続出という難しい問題が降りかかっているのだ。

4-3-2-1_負傷者続出 中町公祐、ラフィーニャに続いて、前節のヴァンフォーレ甲府戦で小椋祥平が右ひざ内側側副じん帯損傷で全治4週間見込みのけがを負った。その翌日の中央大との練習試合では齋藤学が右太もも裏肉離れ。こちらは全治2週間程度と診断されている。さらには、今週に入って1日の練習中に栗原勇蔵が右太もも前に違和感を訴え、試合2日前の紅白戦に参加したものの、その最中に再び同じ箇所を痛めた。

「これだけけが人がまとまって発生したのは、自分が監督になってからの3年間で初めて。いまはけが人が5人以上いるし、そのうちのほとんどが試合に絡む主力クラスだから」と樋口監督。

しかし、こんな苦しい台所状況にもかかわらず、大きな決断を下した。甲府戦を体調不良で欠場した中村俊輔は今週に入ってからほぼ予定通りのトレーニングを消化しているが、まだまだ本調子には程遠い。それだけに起用法に注目が集まった中、指揮官の結論は『メンバー外での調整』だった。もちろん記者陣に対して明言したわけではない。ただ、鳥栖戦に向けた遠征メンバー18人に中村の名前はない。

 

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「チームとしてアグレッシブにやる中に彼が入ることが大事。だからこそアグレッシブにプレーできるコンディションかどうかを見極めなければいけない。プレーはできるけど、100%の状態ではないので、そこをどう判断するか」

これが現在の中村の状態に関する樋口監督のコメントである。

今シーズンはACLを含めた連戦を想定し、各ポジションの層を厚くして臨んだ。序盤戦こそ必要以上にメンバーを入れ替えた感が強いとはいえ、いまは間違いなくその成果を試されている。コーチなしで紅白戦を行うことができない台所事情とはいえ、プレーできる選手はそれなりに揃っている。

鳥栖4-2-3-1中村不在の2列目には佐藤優平、さらには藤本淳吾が名を連ねるだろう。甲府戦は2トップを採用し、2列目にはランニングプレーヤーの佐藤優平を先発起用した。今節は[4-2-3-1]で臨む可能性が高い。甲府戦で2トップが機能しなかったことが大きな要因である。紅白戦を見る限りではトップ下に佐藤が入り、左右のMFは左に兵藤慎剛、右に藤本淳吾が入る模様だ。

中村と佐藤ではタイプが大きく異なる。前者が入れば、ボールが自然と集まり、ポジショニングが低いことから攻撃は遅攻が増える。佐藤の場合、最前線に近い位置でランニングを繰り返すため、後方の選手は積極的にボールを縦に入れるだろう。その効能は結果こそ出なかったが甲府戦で実証済みで、前々節のサンフレッチェ広島戦の後半はある一定の成果をもたらした。

けが人続出の状況でも指揮官は「だからこそチームとしてのコンセプトを示さないといけない」と語気を強めた。最近のキーワードである“アグレッシブ”をいかに体現できるか。ハードワークを信条としているサガン鳥栖を相手に、主力選手の約半数を欠いた樋口マリノスは真っ向勝負を挑む。

 

【この試合のキーマン】
MF 27 富澤 清太郎

 今シーズンここまでのパフォーマンスについて、誰よりも納得していないのは富澤清太郎自身ではないか。昨シーズンのような安定感がなく、特に守備面での貢献度が下がっている。開幕当初は不動のファーストボランチだったのが、最近は3番手、4番手に成り下がっていた。
今節の先発にしても、ボランチに負傷者が続いたからという見方がおそらく正しい。中町公祐、小椋祥平が相次いで離脱したことが原因で、どうやら三門雄大とコンビを組む。中町と小椋はしばらく戦線離脱することが確定的なため、富澤はやってもらわなければ困る選手なのだ。
そうでなくても、高さと戦闘能力に優れるサガン鳥栖戦ではキーマンとして名前を挙げたい選手であった。昨年のアウェイ鳥栖戦では、中村俊輔のFKを頭で合わせてその試合唯一のゴールをもたらした。CBとともに豊田陽平を封じ、隙あらばセットプレーからゴールも狙う。
存在感を見せるには、ある意味で最高のシチュエーションだろう。

 

 

 

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